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026 カッパっぱっぱっぱっぱ、逃ーげるんだよおおぉぉぉおっ!!

Twitterにラクリマとスカウトバットのラフを上げてるんですが、こっちの挿絵として放り込んでもいいですかね? あ、今回のあとがきに読者参加型企画について書いているのでよかったらそちらもご覧ください。

<ハルマゲドンエイジへ進入しました>

<サポートAIの《アンサイクロペディア》で《項目:ハルマゲドンエイジ》が開放されました>


 丘を越えて、海岸方面とは別の森へ入ったところでアナウンスが入る。

 チャットを見るにこれは全体じゃなくて個別みたいだ。


「へぇ、各エイジに入ると詳細が分かるようになるんだ」

「そうみたいですね。説明しますか?」

「とりあえず簡単によろしく。あ、必要だったら機能は好きに使っていいよ」

「了解です。ウィンドウ機能も使っていきますね」


 クルーアが虚空に向けて手を振ると、ぶおんっとSF的なSEと共に半透明の青白いウィンドウが現れる。


「ハルマゲドンエイジはプレイヤー同士の戦い、特に集団戦をメインに据えたエリアです。プレイヤーは五つの陣営の何れかに所属し、恩恵を得ることができます。初期は無所属ですが、無所属によるメリットはありません」


 他陣営のプレイヤー、及びNPCを倒す、或いは他陣営の拠点を占領することで貢献度を得られるらしい。貢献度はpt(ポイント)表記で10ptとか、100ptとかだそうな。


 以下の五つがプレイヤーの所属する陣営。

 名前は虹の五色に対応したギリシャ語らしい。その由来は運営の担当がかっこいいと思ったから。

 繰り返す、ただ担当者がかっこいいと思ったからで、ゲーム的な要素はない。やっぱりだめだここの運営、早くなんとかしないと。でもそんなノリが大好きだ。


《エリュトロン帝国》

 この土地へ侵攻してきた巨大な帝国。

 もっとも技術がある反面、魔法や魔物などへの知識は乏しい。

 貢献度に応じて物理系のスキルやアイテムが手に入る。


 備考:騎士団長はショタ。細。


《クサントン盗賊団》

 逃亡兵などが集まって生まれた巨大盗賊団。

 基本的に正面からは戦わない。また帝国と王国からは見つかり次第攻撃される。

 貢献度に応じた報酬はないがハルマゲドンエイジで倒したMobやプレイヤーからのドロップ率が上昇する。


 備考:親分は頼れるアニキ。筋。


《クローロンの民》

 自然と共に生きることを選んだ民族。

 ハルマゲドンエイジの動物系Mobと友好関係にあり、手を出さなければ攻撃されない。

 貢献度は動物系Mobを他陣営から守った場合にも取得でき、調教や召喚系スキルやアイテムが手に入る。


  備考:巫女が白髪カリスマロリBBA。無。


《キュアノエイデス王国》

 元々この土地で栄えていた魔法王国。

 魔法の知識がすさまじい反面他の技術は並。

 貢献度に応じて魔法系のスキルやアイテムが手に入る。稀に魔法生物を下賜される。


  備考:姫が金髪清楚系美少女。巨。


《ポイニークーン暗黒神殿》

 どこからか現れた邪教集団。

 全ての生き物は神へ捧げる贄としか認識しておらず、他の全ての陣営と敵対している。

 所属したプレイヤーが所属NPCを倒すことでも貢献度が増え、邪法のスキルやアイテムが手に入る。


  備考:大司祭が黒髪目隠れヤンデレ美少女。並。


「最後の備考って……」

「はぁ、なんでも大事な事なので絶対にプレイヤーに教えるようにってことらしいですね」

「たしかに大事は大事だけど」

「あとはプレイヤーが特定陣営に偏らないようにするためらしいです」


 そりゃこの情報があれば偏らない。偏るにしても特定の陣営にしか集まらないってことはないだろう。

 備考の最後にある漢字はあれか、アレのサイズか。男のほうも似たようなものだろう。


 なるほど、前作と比べるのもおこがましいほどグラフィックがよくなったPEVRだからこそ出来ることだ。

 そして、改めてなるほど、と大事な事なので二回思う。


 これはたしかにハルマゲドンだと。

 絶対に終結しない戦争だ。だってそうだろう、相手の意見を認めることは出来ても、相手の意見に屈服することなんて出来やしない。これは、それほど大事なモノなのだ。


 中には、自分の育てているスキルを無視してまで所属を決めたプレイヤーまでいるかもしれない。

 わたしだって、本来なら一番入手手段の限られるポイニークーンを選ぶべきだと思うのに。


「く、ロリBBAが気になる! しかもあざとい系じゃなくてカリスマ系!」

「まぁ、好きな陣営にしたらいいと思いますが」


 クルーアはなんだかクールに流していた。

 この重要性がわからないとは。いや、プレイヤーの判断に口を挟まないようにしているだけだろうか?


「女性NPCのほうが気になるんですか?」

「女がみんなイケメン好きだと思ったら大間違いだよ! 世の中には美少女の太ももが大好きな女の人だっているんだから」

「そ、そうですか」


 説明を終えたところでマップを開いてみるも、現在地の周辺以外が表示されていない。

 どうやら自分の足で歩き回らないと行けないらしい。


「一応埋まった地図を買うという手もありますよ」

「うーん、いいや、歩いて探そう。そのほうが面白いし」

「マスターならそういうと思いました」


 別にそれが悪いってわけじゃないけど、幸いな事にわたしには時間がたくさんある。

 いや、ゲームをする時間しかもうない、というべきかもしれない。そんな状況でせっかくある要素をアイテムを買うことで潰してしまうのは、なんとも勿体無いと思うんだよね。


 しばらく歩くと森の中に小さな小川が見えてきた。

 最初は幅10cmもなかったその川は、辿っていく内に5mを越える立派な川となっていた。

 その川は進行方向に対して右手にあったんだけど、気がつけば左にも同じくらい大きな川がある。

 いま居るのは両側を川に挟まれた道のような場所だ。陸地の幅は10m以上あるので川に挟まれているからと言って恐怖はない。


 さらに歩くと、遠めに大きな生き物が見えてきた。

 全長8mほどの、二足歩行のトカゲのような姿。もし間近まで近づくことができたなら、わたしの身長ではアレの足の付け根、股下くらいまでしか届かないだろう。


「マスター小さいですもんね」

「仕方ないじゃん、ハーフリングなんだから」


 ハーフリングの平均身長は60~120cmほどと言われている。

 わたしは132cmあるのでかなり大きいほうだ。

 ちなみに生前、というかゲーム外でのわたしは164cmと14歳の女性にしては大きめだった。小柄で可愛い女の子への憧れからハーフリングを選んだんだけど、まさかそっちの姿が死後メインになるとは、当時は思いもしなかったよ。


 話を前方の巨大トカゲ、もとい恐竜型Mobへと戻そう。

 大型ながら、肉付きは意外とスリムで、走ったら早そうだ。

 両方の目の上にそれぞれ立派な角を備えている。


 角がある二足歩行の恐竜というとカルノタウルスが浮かぶけど、いくらなんでもあんな獰猛そうな角ではない。いや、復元図はあくまでも予想でしかないし、そもそも肉食ってことだから獰猛なのには違いなかったんだろうけど。


 名前が確認できるまで近づけたのでじーっと見つめて表示してみる。


《カルターン(強い)》


 ふむ、強いくらいならなんとかなるかな。

 あの強いとか弱いっていうのは、あくまでも戦闘系スキルだけを参照して表示されている。

 だから曲芸を使った回避やマクロの組み合わせ、プレイヤースキルにつれているペットや召喚獣の能力は加味されていない。


 現状でも十分勝ち目があるだろう。


 投擲のように攻撃を目的としたスキルはちゃんとエネミーに当てたほうが上がりやすいので、ここらで上げておきたい。ストライクシュートみたいなアクティブスキルもいい加減スキルレベルを上げたいし、丁度良い相手だろう。


 なにせ的がでかい。遠距離攻撃系にとってこんなにありがたい相手は居ない。


「サモン・スカウトバット」


 触媒を使用してコウモリを召喚する。

 わたしの手の平から直径3cmほどのガラス製の目玉が一つ燃え上がると、青白い炎が魔方陣となってその中心から大きなコウモリが飛び出してくる。


 この触媒、よく召喚に使われるもので、名前をそのままクリスタルアイという。

 ちなみに前作ではもっと生々しい目玉のアイコンだったけど、全年齢VRゲームでそのまま再現するのはさすがにまずかったらしい。ここへ来る前に町でそこそこ買っておいたのでしばらくは大丈夫だろう


 そう、このゲームの魔法は触媒が要るのでお金が掛かる。

 もっと積極的にエネミーを倒して原価くらい稼がねば。


「キキッ」

「よーし、わたしにしっかり付いてきてね」


 呼び出したスカウトバットには攻撃させたりしない。

 何故ならこの子は非常食である。マクロでも召喚から自動捕食の流れができるようにしてあるけれど、先に召喚しておけばサクリファイスハート1回で即座に回復できるからね。


「マスター、わたしはどうしますか?」

「……た、待機です」

「了解です」


 クルーアも早く育ててあげたいけれど、方向性がまだ決まらない。

 いっそ掲示板でも立てて相談してみようか。


「それじゃ、ストライクシュート!」


 試しに組んでいたマクロを使って連続投擲を試みる。

 ストライクシュートと通常の投擲を織り交ぜて、都合3回ヒットした。


「ギシャアアアァッ!!」


 こちらに気がついたカルターンが大きな口を開いて咆哮をあげる。

 インシュピータほどではないけれど、中々に迫力がある光景だ。これがゲームだと分かっていても、結構怖いかもしれない。


 しかしわたしはすでに死んだ身だ。これ以上死ぬわけが無いので普通のプレイヤーが感じる恐怖の半分も感じていないだろう。

 これはゲームだから大丈夫、という安心感に足して、仮にリアルでもすでに幽霊だから物理は効かないという無敵っぷりだ。


 近づかれる前にもっと削りたいので改めてマクロを発動。

 ストライクシュート、投擲、と順調につなげたところでカルターンが突撃してきた。

 

 うそ、早い!?


 咆哮をあげて突撃してくるカルターンの速度は以前戦ったアニムスパイソンを凌駕している。

 このままじゃ二回目のストライクシュートを打つのと同時にアレとぶつかってしまう。アバターで誤魔化しているが未だにまともな防具をつけていないわたしでは、一撃貰っただけでもかなりHPが削られる!


 アクティブスキルを発動しながらだと通常の移動がかなり遅くなってしまう。

 そこまで考えて、咄嗟にジャンプした。

 目前に迫るカルターンの角を踏み台に、更に高く跳躍し、空中からストライクシュートを発動。脊髄のあたりに直撃させる。


《曲芸が前回通知より10上昇しました》

《精密射撃が1上昇しました》


 所謂ジャンプキャンセルというゲームテクニックだけど、曲芸が無かったら角を踏み台になんてできなかっただろう。パッシブスキルに救われた形だ。空中からストライクシュートを撃てたのは普通なのか、ストライクシュートか曲芸あたりの隠し要素なのかはちょっとわからない。


 それにしても初めてレベル2になったアクティブスキルは精密射撃か。

 上がりにくいアクティブスキルがあっさり上がったってことは、空中から首に攻撃をあてるのはよほど難しく設定されていたのかな?


「ギルァ、ギシャアア」

「おっと、まだ動けるのか」


 さっきのはクリティカルヒットみたいなものだったと思うんだけど、カルターンはまだ戦えるらしい。

 結構スキルを使ってSTが心もとないな。


「よし、サクリファイスハート!」

「ギョエェェ~!?」


 わたしの横でふらふら飛んでいたコウモリをキャッチしてスキル発動。

 コウモリの口から魂のようなものが飛び出してきたのでそのままぱっくんちょと食べる。


 ぶしゃぁっと血が噴出した。おい、だからなぜここだけグロ要素を残した運営。

 そして回復するHPとMPとST。本当にコスパのいいスキルである。コウモリの尊い犠牲と触媒のクリスタルアイだけで全部回復する。


 ちなみにサモン・スカウトバットとサクリファイスハートに使用するMPよりこれで回復するMPの方が多い。永久機関である。クリスタルアイは消耗品だけど、これをドロップするエネミーと戦えば本当に永久機関になるんだよね。


 さて、仕切りなおしだ。

 そう思ったわたしの、わたしたちの両側で、大きな水しぶきが上がった。


 右手の川から、青い鎧を着た軍団が現れた。

 そう、川の中から。


 左手の川から、赤い鎧を着た軍団が現れた。

 そう、川の中から。


 あー、そういえば前作のハルマゲドンエイジでもいたなぁこんなの。前作では陣営が二つしかなかったんだけど、どっちの陣営でも必須の部隊として重用されていたプレイヤーたちがいる。

 そう、水泳スキル持ちの戦闘系プレイヤーである。


 ザバアアァァッと、ぬめぇええぇっと、這い出てくるその様は、かつての掲示板でつけられた通称を思い起こさせる。

 水中での戦闘を得意とする彼らを、人はその技巧への尊敬と、奇襲してくる悪辣さへの侮蔑を込めて、河童と呼んだ。


「ちぃっ! エリュトロンの奴らだ、ぶちのめせ!」

「キュアノエイデスの河童が偉そうに! これでも食らえ!!」

「今回の作戦を成功させれば貢献度とは別に姫様とのツーショットスクショだぞお前ら!」

「怯むな! こちらも最大戦功者には騎士団長に好きな服を着てもらう権利が与えられるぞ!」


 わーおその手の人にはたまらないご褒美がぶら下げられてるんだね、こりゃヤバイ。

 その間で突っ立ってるわたしたちはもっとヤバイ。


「ど、どうするんですかマスター!?」

「どうするって、そんなの」


 右手からも左手からも続々と、というかじゃぶじゃぶと這い出てくるプレイヤーと陣営所属Mobたち。

 こんなの、無所属の状態で相手になんてしていられない。

 ならば取るべき手段はただひとつ!


「ビーストニーリング!」

「グルァ!?」


<カルターンのテイムに成功しました>

<ドラゴンニーリングを取得しました>


 直前までHPを削っていたのがよかったのか、一か八かの賭けには勝った。

 ついでに新スキルも手に入ったしウハウハだ。


「乗ってクルーア!!」

「お供します!」


 テイムしたばかりのカルターンの背中へ飛び乗ると、クルーアの腕を掴んで引っ張り上げる。

 前作ではペットに乗れなかったけど、ペット扱いのゴーレムに乗っているプレイヤーが居たのを思い出してやってみたら出来た。


<騎乗が5上昇しました>


 普段は10上昇しないと通知しないように設定しているチャット欄だけど、新しいパッシブスキルはちゃんと教えてくれる。

 やっぱりPEVRには騎乗スキルがあるらしい。この分だとゴーレムみたいな機械系には操作スキルとかもありそうだ。

 ちなみに前作では10年以上実装すると言い続けて結局実装されなかった。たぶん実装すると言っていたスタッフは、わたしが死んだ時点ですでに運営から居なくなっていたものと思われる。


「よーし、それじゃあ」


 準備を終えたわたしは、カルターンへ向けて最初の命令を告げる。


「逃げるよーーーー!」

「ギシャーー!!」


 対人好きバトルジャンキーの大群なんて相手にできるかーい!!

【突発、読者参加型企画ー!】

次回か、もう少し後にでも掲示板でクルーアの方向性を決める回を用意したいと思います。

そこで読者の皆様で協力してやってもいいよ、という方がいらっしゃいましたら感想のその他欄に


「こんな感じでかぎかっこ内に掲示板への書き込み」という形でなにか一言でも戴けたらなぁと思っています。

絶対にその通りにするというわけではありませんが、盛り上がるかなぁと。

掲示板要の書き込み台詞は敬語などなしでOKですが、下ネタなどは禁止の方向で。幼い方ももしかしたら見ているかもしれないので(本編がアウトとか言っちゃだめ)。


剣持たせようぜ、とか魔法にしよう、とかメイド服着せようぜとか何でも構いませんので、是非お気軽にご参加ください。

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