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クラウン・フォビア~幽霊少女の死んでからはじめるVRMMO~  作者: 稲葉めと
一章 幽霊少女の死んでからはじめるVRMMO
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018 いざ次元竜! と、その前に

 むくり、と起き上がったのは渓谷の底。

 残念ながらわたしの落下耐性が上がりすぎて、このくらいではもう死ねないらしい。

 死ぬくらいの高さのほうがスキルレベルが上がりやすいんだけどなぁ。


 そしてわたしの周囲には20人くらいの死体が散乱している。

 掲示板で協力者を募ると、これだけの人数が集まってくれた。しかも実際の協力者はもっといる。ここにいるのは原初の竜の回線切断に、落下耐性を上げて対抗しようと決めた人だけで、他の手段を模索している人もいた。


 それぞれ準備が整ったら掲示板で報告することになっている。


「あ、いたいた。はじめまして幽霊さん」

「はじめましてー。エルフさんと、禍々しいローパーってことは復讐者さんかな?」

「正解! だけどひとつ訂正させてください、ひゅどらたんは可愛いです」


 渓谷へ落下、ではなくローパーに乗って降りてきたエルフさんと軽口を交わす。

 一応プレイヤーネームは見えているけれど、思考入力の掲示板でうっかり出してはまずいのであっちでの呼び名をさらに簡略化して呼び合っていた。ちなみに変人スレのロリコンはロリコンだ。彼は横で死体になっている。

 今回の計画では落下耐性だけではなく、邪法のスキルレベルも上げておきたい。だからといって毎回クルーアを犠牲にしていたら彼女からの印象が落ちてしまう。残念ながら、これは落下耐性を上げても落ちる。


 そこで彼女が持つあるスキルを利用させてもらうことになった。


「それじゃあ行きますね。口寄せ!」


 復讐者さんが使用したスキル【口寄せ】は、とてもユニークなスキルだ。

 遺品を触媒にして発動し、遺品の元所有者をアンデッドとして蘇らせる。そしてこれがプレイヤーにも使用可能だった。

 ただしNPCの場合は同じAIだけど、プレイヤーの場合は臨時のAIが入る。クルーアたちサポートAIに比べれば、思考能力は皆無に等しい。


 ちなみに遺品だが、死体そのものでも大丈夫だった。


「あ、気をつけてね」

「はい、分かってますよっと」


 さらにこの口寄せスキルだが、名前の通り呼び寄せるだけで、従えることは出来ない。

 復讐者さんによって呼び出されたアンデッド、名前をドラフティングゴーストというそれがわたしたちに襲い掛かってきた。

 もっともこのアンデッドたちのステータスは生前から半減しているのでとても弱い。これで戦闘系スキルを最大まで上げているプレイヤーでもいれば話は別だけど、こんな序盤でそこまでやっているのは、というかできる人はさすがにいなかった。


「従え!」


 そして、そんな彼らは調教スキルへの耐性を持っていない。

 何故ならプレイヤーは本来調教スキルでペットにすることなどできず、アンデッドとなった彼らはプレイヤーのステータスを半減して模しただけのNPCであるからだ。当然調教耐性などあろうはずもない。


「それでは協力者の皆さんに感謝して、いただきます」

「はい、粗茶ですが」


 いや、それは何か違う気がするよ復讐者さん。

 そうしてわたしはテイムしたドラフティングゴーストへ片っ端から【サクリファイスハート】を使用していく。

 手を突き入れて魂を抜き出し、捕食する。そういうモーションなんだけど、手を入れる部位はどこでもいいみたいなので、とりあえずお腹のあたりにしていた。


「えい、えい。モツ抜き! モツ抜き! モツ抜き!」

「ゾンビゲーでありましたねぇ、ゾンビのお腹から内臓ひっこぬくやつ」

「カメラマンが無双するやつねー。復讐者さんもやってたの?」

「ちょっとだけ。わりとホラゲは好きなんですよ。あれはコメディタッチでしたが」


 そう言ってひゅどらたんを撫でる復讐者さん。

 その光景を見て、そりゃそうでしょうよと思うが、口には出さない。

 あと、触手はホラーとは別ジャンルだとも思ったが、これも口にしない。誰も幸せにならないからだ。

 

「おーい、もう回収してもいいか?」

「ひぇっ!?」

「これは壮観ですね」


 全部のドラフティングゴーストを食べ終わったころ、わたしたちは幽霊の群れに囲まれていた。

 エネミーではなく、プレイヤーさんの幽霊だ。

 どうやらわたしのスキル上げを待ってくれていたらしい。


「おかげさまで、そこそこ邪法があがりました」

「そかそか。例のスキルまであとどんくらい?」

「んーと、この上がり具合だと、途中で上昇値が渋くなっても5回くらいかな」


 これは5回サクリファイスハートを使うという事ではなく、あと5回この流れを繰り返すという事だ。

 すなわち20人で飛び降り、全員触媒にしてアンデッドを呼び出し、テイムして、食べる。

 並べると酷い話みたいだが、全員納得済みのスキル上げである。


「それくらいなら余裕だな。俺たちの落下耐性低いから、目標まであと20回は落ちないとだし」

「ま、そうだな。つってもお前は別の理由だろ」

「え? なんかほかに利点あったっけ?」

「幽霊さんハーフリングだからなぁ」

「見た目ロリだからな」

「声も可愛いからな」

「「「よかったな、ロリコン」」」

「だから誤解だって言ってんだろおおおおお!?」


 率先してプレイヤーをまとめてくれているロリコンさんがからかわれているが、気にしないようにしよう。

 わたしは永遠の17歳なのでロリではない。ロリは小学生までだ、異論は認めない。

 え、死んでからも足したらアラサーだろうって? 五月蝿い祟るぞ、リアルで。

 まぁ実際に死んだのは14歳だし、永遠の17歳は成人しても使っていいってえらい人が言っていた。ありがとう偉い人。


 そんなロリコンさんだが種族は人間だった。

 これでドワーフだったらひげもじゃのおじさんがロリコンという壮絶な状況が出来上がったのだけど、残念だ。


 ちなみに復讐者さんもロリコンも前作組のアバター装備で、復讐者さんは全身銀鎧で、腰周りだけ露出したスカートなものだから、くっ殺感のすごいエルフがローパーに抱きついたり乗っかったりしている。絵面がヤバイ。

 ロリコンは黒装束で、両手にジャマダハルを装備している。たまにカタールと混同される、アレだ。雑な描写をすればメリケンサックの剣バージョン。

 ロリコンは暗殺者タイプだったみたい。AGIアサシン的な。このゲームステータスの代わりにスキル表記だからAGIないけど。


 他にも普通の装備らしき新規さんもいれば、前作組らしきアバターもちらほら見える。

 なんだあれ、熊の着ぐるみ? テディベアみたいなのがいる。


「幽霊さんピエロだったんだなー」

「クマとかいるぞ」

「いいよなぁアバター……」


 やっぱり新規さんからは羨ましがられてるなぁ。

 掲示板でも結構ずるいって言ってる人もいたし、運営もなにか対策すべきでは。


「やっぱり羨ましい?」

「あ、幽霊さん」

「おっす」


 新規らしき皮鎧の人間さんに話しかけてみる。

 ていうかこうしてVRでみるとでかいね人間。見上げないと顔が見えない。

 いや、ハーフリングが小さいのか。


「まぁ、羨ましいっちゃ羨ましいですけど、こっちはこっちで利点あったみたいなんで」

「およ、利点?」


 新規だけの利点、なんだろう。

 配布ポーションが多かったとかかな?


「実は新規だと隠しスキルや種族の大雑把な方向性聞いてるんですよ」

「え!? なにそれ、教えて教えて」

「ははは、そこはまぁ、秘密ってことで」

「ええー」

「あと専用のサポートAI貰ってるんですよ。見た目しょぼいですけど」


 そういって彼が取り出したのはドローンだった。超小型ヘリコプターみたいなアレだ。

 いや、運営さん、そこはファンタジー感ぶち壊しだから妖精とかにしてほしいところ。

 と思っていたら、どうやら妖精、ゴーレム、動物の中から選べたとのこと。

 妖精は光の玉に虫の羽、動物は小型哺乳類の中からランダムらしい。

 考えてみたら前作ではロボットが暴れる時代とかあったし今更か。ロボットのペットとはもう出会ってるし。


「こっちはペットテイムするまでAIいなかったのに」

「しかもインベントリに収納できます」

「うぅ、羨ましい」

「その代わり会話とかできないんですよねー。聞いた情報は表示できるものはしてくれるんですけど」

「そういう違いがあるから不満は抑えられてるわけか」


 こっちの方がよかったっていう人もいるだろうけど、そこはそれ、諦めるかキャラを作り直すかしかない。

 新規だけの利点といっても前作要素を諦められるなら手に入るわけだしね。新規で前作組のメリットが羨ましいヤツは知らん。プレイしてなかったのが悪い、というか運が無かったんだよ。


「おーい、ダメ元で聞くけど、誰かここの上までワープできたりしないかー?」

「そんな魔法この時点で持ってるわけないだろー」

「魔法って言うかスキルな。俺もないわー」

「しゃーねぇ、登るか……」

「私のローパーちゃんに乗せてあげましょうか? 断崖絶壁も難なく登れますよ?」

「「「丁重に辞退させていただきます」」」


 HPを回復しおえたロリコンたちがよっせほいせと渓谷を登っていく。

 落下耐性は高いほど、死ぬほど上がりやすくなるが、落下時のダメージによっても上昇値が変わってくる。HP満タン即死するのが一番上がりやすいのだ。

 上に行ってからHP回復すると、うっかりミスで落下死したらまた幽霊でここまで降りてこないといけないので下で回復している。


「あれ、復讐者さんは登らないの?」

「ええ、私は口寄せスキルで何とかする方法を思いつきましたので」

「へー」

「聞かないんですか?」

「興味はあるけど、当日見られるならそれまで楽しみにしておこうかなって」


 掲示板を見れば他の手段を模索しているグループも順調とのこと。

 そうして準備を整え、さらに二日後。準備を終えたわたしたちは原初の竜を倒すべく、森へとやってきた。

 総勢50名。


 いざ決戦!


 ……余談だが、邪法上げ途中に【モツ抜き】というアクティブスキルを覚えた。あのゲームやってたな開発者。

カメラマンはゾンビゲームにて最強。ただしヘリは落ちる。

ゾンビ映画のカメラマンはほぼほぼ死んじゃうんですけどね。

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