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王都オーレリア 三 王の間にて

王都オーレリア国、王城、王の間にて


「…して汝の名は…?」

オーレリア王、ウィリアム・フォン・オーレリアは、玉座に座り問いかける。

「俺の名は…いて!!」

少年、エクスはその問いに答えようとしたが、そのとなりの少女、アリシアにエクスに肘打ちをする。

「さっき言ったじゃないですか?!王の間ではちゃんとした形式で話さないといけないんです』

アリシアは小声で、エクスに耳打ちする。

王の間では、ちゃんとした形式の話さないといけないルールがある。

刑罰を受けるほどのものではないが、きちんと話さないといないタブーがある。

「あああ、さっき言ってたやつか…。めんどくせえ」

「そんなこと言わずに、お願いします」

「へいへい」

と小声で会話をするエクスとアリシア。

「えっと…我の名は、エクス。かの者アリシア・フィン・オーレリアの従者〈キューショナー〉になったため、ここに参上つかまつった」

「ふむ…」

一通りの挨拶を完了すると、ウィリアムは唸るように考え込んだ。

「かの者エクスよ。して、汝はなぜ、我が娘アリシアの従者になった?」

「え?」

ウィリアムの質問に、エクスは予想もしていなかったような顔でいた。それもそのはず、こんな質問がくるなんて聞いてなかった。

「エクスよ…今一度問う。なぜ、我が娘アリシアの従者になった?金が目的か?」

「…」

ウィリアムの問いに対して、エクスは無言でいた。

(どう答えたら良いんだよ?!)

エクスは内心、とても焦っていた。

先ほどの挨拶はアリシアが事前に、エクスに教えたものである。しかし、このような質問がくるとは思ってもいなかったのか、いきなりのことで頭の中でまだ、整理出来ていない。

助けを求めようとエクスはアリシアの方を見たが…

「…(ごめんね)」

無言で謝罪の仕草だけしていた。どうやら、アリシアにとっても予想外の質問だったらしい。

(どうする…?正直答えるのは…まずいよな…?)

エクスはこの国と対立するためにアリシアの従者にされた。そんなこと、国の王に言って…

(別に…言っても良いんじゃね?)

「エクスよ…早う応えよ。汝は…」

「この国の制度を変えるためです…オーレリア王」

ウィリアムが言い終える前にエクスが応える。それも、とんでもない形で。

「この国の制度を?」

「はい。この際申し上げます…いや…まどろっこしいからこの言い方はやめだ…」

エクスは何を思ったのか、先ほどまでは片膝をついて応えていたのに、おもむろに立ち上がり、ウィリアムに向かって指を指した。

「俺の名はエクス。アリシアの従者にして、無能力者〈ノーレスト〉だ!」

エクスは先程の話し方から一変、普通の話し方に変えたのだ。

しかも、自分が無能力者であるということも公にしてしまった。

この発言にはウィリアムとアリシアを除くその場にいた全員がざわついた。アリシアの顔は青ざめていた。

「…」

ウィリアムは眉一つ動かさず、エクスをにらんだ。

「平民以下の暮らしをしてきた俺が、こんなところにいるなんて夢にも思ってなかったよ。だから、この国のしきたりとかよくわからねえ」

エクスは笑いながら、おどけるようにそう言った。それでもなお、ウィリアムは眉一つ動かさない。

「だから、言いたいことは言うし、やりたいようにする。国のしきたりなんて知らない!俺は、俺のやりたいようにする!俺は無能力者だからな!!」

エクスの勢いは止まらない。もはや、他のものも、その勢いに押されたのか何も言わない。

「だから言わせてもうぜ!俺がアリシアの従者になったのは、この国、いや…この世界のルールがおかしいからそのルールを変えるためさ!無能力者が家畜のように扱われるこの世界を変えるため!俺は…!」

そこで、エクスの口が止まった。なぜなら、この公の場で、アリシアが無能力者であることを言ってしまっていいのかと悩んでしまったからである。

アリシアが無能力者であることは王族を含め、一握りしか知られていない秘密だそうだ。この場で知らない者の方が多いとも言っていた。

(俺が迫害を受けるのは良いが、アリシアが迫害を受けるなんて…)

流石のエクスも、内心そう思っていたが…

(いや、そもそもこいつのせいで俺は今、こうやってめんどくさいことに巻き込まれているわけで、しかもこいつは今、俺の主人〈オーダー〉だから、一連託生なわけだよな…だったら…〉

エクスは、アリシアに向かって、不適な笑みを見せた。

その笑みが示す意味、それは…

「俺は、アリシアの従者になったのさ…この無能力者の王女様のためにな!!」

と、エクスはウィリアムに向き直り、大声でそう言った。

アリシアの顔は、もはや死んでいるのではと疑うほど青ざめている。

周りの人間達のざわめきも一層こくなった。

そんな中ウィリアムだけが何一つ表情を変えず、エクスを睨んでいる。

「…で、それだけか…?」

ずっと沈黙だったウィリアムが口を開けた。

「エクスよ…そなたの要件…よくわかった…わかった上で、問おう」

ウィリアムは立ち上がった。

いや、一瞬にしてエクスの前まできた。

「それをこの場で言うというのは、どういう意味か理解しているのか?」

それは明らかな殺意であった。

その殺意に、その場にいた全員が押されていた。

しかし…

「は?わかんねえよ」

エクスだけは、その気に押されていなかった。

「俺は、家畜以下の奴隷だ!考えるのは嫌いなんだ。だから、駆け引きとか関係なく思ったこと、知っていることを正直に話しただけだ!あんたみたいに、自分の地位の事しか考えない能無しとは違うんだよ!」

エクスが叫ぶ。

自分の地位も関係なく、感情任せにウィリアムにぶつけた。しかし…

「ふむ…わかった…」

ウィリアムは動じることなく、淡々と言葉を出す。

「では、その言い分に値する力があるのか…確かめさせてもらうぞ…」

次の瞬間、エクスの体は宙にまい、床に落ちた。

「かはっ!?」

エクスは口からドス黒い液体を吐いた。

「エクス!!」

アリシアは、エクスに近づこうとする。しかし、

「ダメです、姫さま」

近づこうとするアリシアを止める一人の女騎士、グレイス。

「どいて!グレイス!!」

「いくら姫さまの願いでも、今回は出来ませぬ」

グレイスは、アリシアを赤子の如く抱きかかえる。

「どうして!?離して、グレイス!!」

「我が王の命です。察してください。姫さま」

「お…父さまが…?」

グレイスは静かに頷いた。つまり、グレイスは、ウィリアムの命令でアリシアを止めているのである。

「この無礼…のちに罰は受けます。何卒、今回はお許しを」

グレイスは、姫を守る近衛隊兼相談役である立場。それゆえアリシアの命令は絶対であった。

しかし、そんな立場のグレイスが、自身の立場の危うい行動を起こした。つまり…

「グレイス…あなた…」

「私も見たいのです。あなたが認めた男の力を。そして、無能力者の力を」

そんなことを言うグレイスの目は真剣そのものであった。

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