その9
紗由と遊んでいた聖人と真琴のところへ、奏子が走ってきた。
「紗由ちゃん!」
「はーい」
「あのね、これをまこちゃんにあげたいの。いいかなあ?」
奏子はバッグからハンカチに包まれた石を取り出した。
「どれどれ…」受け取った包みを開く紗由。
双子たちも興味深そうにのぞき込んでいる。
「なんか、おいしそうな石だねえ」紗由は石をコロコロと手のひらの上で転がす。
「紗由ねーたん、まこの石たべないで!」真琴が慌てた様子で紗由の袖を引っ張る。
「…そんなに食いしん坊じゃありません」
すました様子で紗由は言うが、誰も何も言わない。
ばつが悪そうにコホンと咳をする紗由。
「あ…でもね、おいしそうなのは当たってるかもしれない」奏子が微笑む。「だって、シシャモ仮面さんの武器だもの」
「うわあ…」満面の笑みになる真琴。
「それはいいですね!」紗由はニッコリ笑いながら、真琴の手に石を乗せる。
何度も左右の手のひらで石を行ったり来たりさせる真琴。左手で石をぎゅっと握ると、その手を心臓の辺りに添える。
真琴の様子をじっと見ている3人。
「まこが、キラキラしてきた…」聖人が目を丸くする。
「石とおともだちになったのね」ウフフと笑う奏子。
そこへ小走りにやってくる充。
「何かあったでござるか?」
「あ。ししゃもかめんさんだ!」充を見つめる真琴。
「え。いや、拙者、ししゃもはちょっと…」またシシャモになれと言われるのかと思った充が警戒する。
「まこがあぶなくなったら、この子といっしょにたたかってください」
真琴は充に石を握らせ、充の手を両手でその外側から包んだ。
「あ。もっとキラキラした!」聖人が叫ぶ。
「すごーい」紗由も、まじまじと見つめる。
その場に発したオーラに気付いた人間が、次々とこちらを見つめてくる。
「すごくいい香り…」真里菜がうっとりと視線を向ける。
「なんか、ぼく、フワフワしてきたよ」恭介も、充と真琴から目が離せなくなっている。
充はしばらくじっとしていたが、ハッとすると奏子に尋ねた。
「マドモアゼル、これは四辻の石では?」
「はい」
「よいのでござるか? それに少々…」
「うん。“この子”は、すぐに命令されちゃうの」
「敵に命令されていたのでござろう? まこちゃんに持たせるのは危ないのでは…その…さいごに裏切ったり…」うつむく充。
「充くんの言っていることは、正しいけどやさしくありません」紗由が不満げに充を見つめる。
「四辻の石で、しかも、かなり強いのですぞ。姫はこの子が敵側にまわったとき、まこちゃんを守れるのでござるか?」さらに不満げに紗由を見つめる充。
「だいじょうぶです! まだ20個以上、おともだちがいますから。いろいろできますから!」こぶしを握る奏子。
「20個!?」声をそろえる紗由と充。
「そんなにいるのでござるか…」
「おじ…えっと…先生から教わって、いろんな子とお友だちになりました」
「奏子ちゃん。先生って…」
紗由が尋ねようとしたとき、龍が戻ってきた。
「先生はね、力は強いんだけど、奏子ちゃんが友だち思いのやさしい子だってことを、ちゃんとわかってないんだ」
「龍くん!」
「充くんの心配はもっともだ。だからこそ、みんなで力を合わせて、まこと、この子を仲良しのままでいさせてあげよう」
「うん!」聖人が力強く手を上げる。「まーくん、がんばる!」
「シシャモ仮面さんはぁ?」
「まこちゃんのためなら、どんなことでも」
「よかったあ」ニコニコ顔の真琴。「じゃあ、今すぐシシャモ仮面さんになって」
「え…えっと…」
言葉に詰まる充から目を反らす、龍、紗由、奏子。
“みんなで力を合わせて拙者を救ってはくださらぬのか?”
「はやく…」充をじっと見る真琴。
前方から歩いてくる弾が、どう見てもししゃも仮面の衣装を携えているのを目にして、充は深くため息をついた。
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