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その5


 風馬は、華織に言われた通り、華音と一緒にモニタで様子をうかがっていた。

 膝の上の華音が、画面を食い入るように見ている。


「どうした、華音。あのお姉さんが気に入ったのかい?」

「うーたん……」

「ん? あれは悠斗くんじゃないだろ」華音の頭をなでる風馬。

 画面の中の桜が「あの子の力を開きたいのだと思います」と言った途端、華音が手を振り回しながら叫んだ。

「うーたん!!」


 娘の反応に思わず画面に見入る風馬。

“狙いは星也くん…?”

「そうなのか、華音?」

「うーたん」風馬の膝をぎゅっと握る華音。

「咲耶ちゃんじゃないのか、狙いは…」


 華音は、すっくと立ちあがると、紗由たちと一緒に踊っていたダンスを踊り出した。

「ははは。華音、前より上手だなあ」

「うーたん、うーたん」

 笑顔で踊り続ける華音。

「パパに大丈夫だよって言いたいのかい?」

「うーたん!!」

 飛び切りの笑顔で決めポーズをとる愛娘に、風馬の顔も思わずほころぶ。


「そうだな。もう、進むしかないんだな」


  *  *  *


 ハワイの5ツ星ホテルの一室、一条誠の父親、先代の一条の“命”央司は、昔見た夢に思いを馳せていた。


「“命”のシステムを盤石なものにしたいとは思いませんか、一条の先の宮」四辻奏人が微笑む。

「もちろんそれは思うのが当たり前でしょう、我々の立場としては」

「ですが…このままでは“命”の力を持つ人間たちが危うい目にあう可能性もあるのでは」


 ため息をつきながら答える央司。

「戦いを挑まず、守りに徹していれば、危うい目にあうことはないかと」

「いやいや、それは甘いのでは。守りに徹しても攻撃してくる相手がいれば話は終わらない」

「いや、ですから、攻撃されたら防御する。それだけのことでしょう」


「結局終わらない。そういうことですね?」したり顔で微笑む四辻奏人。

「人の欲は止めても出て来る。つまりは終わることはない。そこは否めません」


「では、決定的な勝利を見せつけるというのはどうでしょう。次の戦いをしなくなるように」四辻奏人がゆったりと微笑んだ。

「…その勝者はあなたではないのですよね」

「ええ。勝者は西園寺の“命”です。彼女が統制をはかる世界こそが美しい。私はそう思っていますので」

「彼女はそれをお望みか?」

「いえ。彼女は欲がなさすぎる…というか、きれいに欲をコントロールしている」

「望まないことを彼女にさせると?」

「国の平和のためなら」


 一条は笑い出した。

「国の平和は民があってこそ。民が望まぬことをさせて、何が国の平和なのです?」

「…ここは見解の相違ですね。未来を見て、利益の多いほうが国の平和につながると私は思っています」

「身近な人たちの幸せを犠牲にするもやむをえず、ですか」


 二人の間に沈黙が流れた。

「犠牲、の考え方次第でしょう」微笑む四辻奏人。

「それではあいにくと私はあなたにご協力いたしかねます」

「残念です」

 そう言って四辻奏人の姿は消えた。


  *  *  *


 一条の先の宮、央司は、四辻奏人との夢中での邂逅の後、娘の澪の元を訪れていた。

「お父さん、どうしたの?」

「急に迷惑だったかな」

「ううん。うれしい」満面の笑みになる澪。「忙しいのに、わざわざありがとう。…お母さんの具合はどう?」

「一緒に来てるんだ。後で来ると思うよ」

「わあ…うれしい…この子のことでね、いろいろ相談したかったっていうか…」自分のお腹を撫でまわす澪。

「そうだな。そこは母さんに教わるといい」

 央司は右手で澪のお腹を撫でまわしながら、左手で印を結んだ。


「ん…?」

 体をぐらつかせる澪の背中を支える央司。

「大丈夫か?」

「あ…うん」

「そうか。体を大切にしろよ」

「もちろん!」

 うれしそうに笑う澪の頭を、央司は優しくなでた。


  *  *  *


 その夜、部屋のカーテンを開け、月の光を見つめていた央司は、深く息を吐くと力強く声に出した。

「生まれてくる子に私の力のすべてを授けました。日本の未来を正しい形でお守りください」


  *  *  *


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