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その13

「あ!!」

 八角堂の一角では、紗由、奏子、真里菜、充、恭介、そして聖人と真琴、弾の7人が一斉に声を上げた

「姫…」

「うん…大丈夫。みんな、落ちつい…」

 紗由が言いかけた時、すでに奏子はドアに向かってダッシュしていた。


「充くん! シシャモ脱いでいいから、奏子ちゃんを止めて!」

「ラジャー!」

 充が駆け出すと、弾もその後に続き、合流した悠斗も一緒になってドアへ向かった。


  *  *  *


「星合、気を付けろ」憮然とする奏人。

「も、申しわけありません」

 汗を拭い、車を再発進させる星合。


「甘く見られたものだなあ」

 笑い出す龍。

「僕は、あの、西園寺華織の孫にして、西園寺周子の息子なんですよ?」


 龍はニヤリと笑うと、走っている車のドアを開け、飛び降りた。道路に転がる龍。

 慌てて急ブレーキを踏む星合。車を降り、龍に駆け寄ろうとするが、その星合を遮るように、猛スピードで走ってきた車が急停止した。


「龍! 大丈夫か、龍!」

 うずくまる龍に駆け寄ってきたのは、華織と躍太郎だった。

 その姿に気付いた星合は、急ぎ自分の車に戻り、発進させた。


 躍太郎が声をかけるが龍は息苦しそうにしている。

「グランパ…」

「許さない…」

 華織は車が走り去った方角を見つめ、右手をかざした。


「ちょっとやりすぎたな」後部座席に座っていた奏人がつぶやいた。「車を止めろ。降りたほうがいい」

「ですが、向こうも車です」

 星合が言い終わるか終わらないかのうちに、車内にピシッという音が響き渡った。見ると車のガラスには、すべてひびが入り、どんどんクモの巣のように広がっていく。


「…これは…?」

 星合のかすれ声をさらにかき消すかのように、ガラスが「パン!」と鳴り、一瞬で粉々に砕け落ちた。

「彼女の怒りのほんの一部だろう」

「お、お怪我は?」

「ちょっと手に刺さったかな」奏人は左手の甲のガラス片を抜き取ると、右手で覆った。「忘れてたよ。彼女は奏子よりも“えいっ!”が強いんだった」


「このレベルの遠隔は初めて見ました…」

 車を降り、慌てて奏人の座る後部座席のドアを開ける星合。

「まずいな。オイルが漏れ出したようだ」

「早くこちらへ」


 二人が向かい側の公園まで走ると、車は轟音と共に火を噴出した。

「彼女の甘さだな」炎を見つめながら奏人が言う。

「とても甘いというレベルでは…」

「私たちの身体を直接砕くこともできたはずだ」

「あ…」

「あとは彼女がどう判断するかだ」

 奏人はほぼふさがった左手の傷をぺろりと舐め、呟いた。


  *  *  *


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