5_防具店にて
あの龍と戦った翌日、珍しく朝と呼べる時間帯に起きた私は、とある店の事が書かれている掲示板のログを見る。どうやらそこはこのゲームが始まって初めてのプレイヤーが経営する店とのこと。
更にそこは、今、私が最も欲している防具なども扱っているらしい。
「場所は……と、リンシアの南の方かぁ。ちょっと遠いなぁ……なんて言ってられないのよね」
私は朝食を軽く取るとすぐさまログインした。
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ログインしてこっちの時間で30分。
私は未だその店に辿り着けずにいた。
「どこだ……ここ……??」
ミニマップを開いて見ても現在位置が分かるだけで肝心の店が見当たらない。
「誰かに聞くかな……もう、分かんないし」
私は意を決して、近くを通りがかった女性に聞いてみた。
「……そこですか?そこは、私の店ですよ」
「…………はい?」
「だから、私の店ですって。私、リオンって言います貴方は?どうして私の店へ?」
「ヨミよ。ちょっとしたお願い……というより依頼がしたくて行こうと思ってたの」
「そうですか……分かりました。付いて来てください」
こうして、私は偶然出会った防具屋の店主――リオンに連れられるがままに目的地へと向かった。
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「ここだよ!ここが私の店!」
「……防具店にしてはただの民家と変わらな……」
「仕方ないでしょ!まだ買い取って一日なんだから!」
「ごめん……」
私は、彼女の剣幕に思わず謝ってしまった。
「いいわよ、別に……その内、ここの収益が出てから変えればいいんだし。ところで、私を尋ねてきたのはなんで?」
「あ……その、防具の方がちょっとボロボロで……直す、というより作って欲しいんだ」
急に本題に戻ったせいか、最初の言葉が出なかった気がしたが、気にしなかった。
「ドロップ素材ってどうなってる?」
と聞かれて、
「ほとんど使ってないですけど……?」
「作るなら持ち込み制よ。ほら、出して!」
と言われて大量の素材を出そうとすると、この店のドアが開いて、
「ただいまー……あれ、珍しいね。リオンと私の他にここに来るような人がいるとは……もしかして物好き?」
と言いながら入ってきた。
「姉さん、違いますよ!この人はヨミさん。私の大切なお客です!」
「……なるほどね。でも、ここには武器なんてないよ?」
なんか馬鹿にされた気がするので、
「……私、防具を頼みに来たのよ。こんな状態なんでね」
と言いつつ私はボロボロになった防具を取り出す。
「そういう事ね。それで掲示板を見てここに来たと」
「……まぁ、ちょっと迷っちゃってね……たまたまリオンさんに会えたからよかったけども」
私とリオンの姉とで談笑が弾んでいると、リオンが、
「……あの、話してるの遮っちゃって悪いんですけど、防具の方はどうしましょうか?」
と言われたので私は、
「ん……できるだけ身軽な方がいいんだけども」
と言うと、
「革製だと貴女の使い方的にすぐ壊れますよ?」
と言われてしまった。
「でも、避ければ……」
「避けれてないからこうなってんでしょ!」
「最初は誰だって無理でしょ!……今は、今は大丈夫よ。多少は避けれるから」
などと最早口喧嘩か論争か分からない状態になっていると、
「そういや、私って自己紹介したっけ?」
「「してない」」
と息ぴったりの返事をしていた。そして、
「ですよね」
としか言わなかった。
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「自己紹介遅くてごめんね。私はシズク。ここの防具店の店主兼鍛冶屋のオーナー、みたいな人です。
ところで、ヨミさん」
「……はい?」
ごく普通で簡潔な挨拶が終わったと思ったらいきなり話を振られて変な声が出てしまった気がする。
「フレンドになってくれない?」
別に断る理由もないので、
「良いですけども……いきなり過ぎません?」
と微妙に疑りつつも、フレンドになった。するとすぐに一通のメッセージが届いた。それには、
『貴女は東神楽高校1年1組25番の小坂瑠奈さんですか?』
と書いてあった。あまりにも正確すぎるその情報に思わず、
「なんで知ってるのよ……!」
「私は何も言ってないですよ? まぁ、私は貴女を知ってますけど。ところで……私が誰だか分かります?」
「……分かることは私の学校……いやクラスメイト、って事くらいかな」
私も彼女―シズク―が誰か、とまでは行かないけれども何となく分かっていた。
「本当に私のことを知りたい、それなら教えてあげるよ? 私に勝つってのが条件だけどね」
あからさまな挑発をされて、堪忍袋の緒が切れそうになりながらも、顔には冷静な表情を浮かべ、
「……いいじゃない。やってやろうじゃないの。完膚なきまでに殺してあげるから」
とシズクが私に売りつけた喧嘩を高く買った。
別に、私は無理をしている訳では無いし、気にしている訳でもない。
ただ、昔からしてきたようにしただけだ。
「なら、ここでやるとリオンに怒られるから外に出て、いや街の外に行こうか」
「あぁ、いいよ」
そうして私たちは玄関の外へ向かった。
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