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日付がちょうど変わった頃、暗く深い森の中、少女は追われていた。
追っていたのは、敵対動物である。
熊が2匹、こちらはまだ足が遅いからいいものの、猪が3匹と狼が1匹、こっちは今にも追いつかれてしまいそうな距離にいる。
足止めのために阻害系の魔法を使おうにも、再使用時間が10分程足りてない。
(……逃げてるだけじゃ追い付かれて意味がない。かといって、今ここで反転すればそのまま飛びかかられてデッドエンド……ならば、上!!)
少女は自分の咄嗟の判断で木の上に飛び上がり、そこでほんの少しの休息を取って、木々の枝葉を伝って、恐らく最後尾にいると思われる熊の方へ向かう。
「先ず……一つ!」
熊の中でも後ろにいた方の、無防備になっている心臓へ向けて、左手に持っていた脇差で刺し、そのまま刃の方向へ一文字に切り裂き、それは断末魔と共に崩れ落ちた。
しかし、それをすぐ近くで聞いたもう1匹の熊は、仲間を殺された怒りと地響きと共に少女の方へ向かってくる。
「……しまった!!」
ほんの一瞬動作の遅れた少女は、慌てて熊との距離を取ろうと一度逃げるが、すぐに詰め寄られてしまう。
怒りに駆られた熊は、仲間の敵である彼女を切り裂き殺そうと右腕を振り上げる。しかし、すぐに冷静になった少女はその攻撃を紙一重で躱し、その隙に左手の脇差で勢いの余った熊の右腕に対し切りつける。
目の前の熊に大きな隙ができたその瞬間に少女は1歩ほど退き、体勢を整え、阻害系呪文の『パラライズ』を唱えようとした。
しかしその瞬間に熊は、
「グルァアアアアア!!」
と周囲に響く声で吼えた。その咆哮は恐らく周囲100メートル程にいる全てのものを怯えさせた。その咆哮に驚いたのか、危険を感じたのか、狼や猪たちは逃げ帰っていった。
少女は恐怖した。
目の前に迫ってくる熊に。
だが、少女のその行動は本来隙を生むはずであった。
「……う、動かない?」
どうやら熊に与えたあの一太刀が何らかの形で動けなくさせていたのだろうと少女は思案する。それを見て一呼吸を置き、自分の体勢を立て直し、最後の力を振り絞って力尽きたようにぐったりとしている熊の前に行き、
「……ごめんね」
とだけ言ってその首を刎ね、首から下をこれでもかとバラバラにしていった。
その時の少女の眼はとても冷たく暗い眼であった。
戦闘のリザルト画面を眺め、少女は呟いた。
「……疲れた、帰ろ」
そして少女は「『ハイド』」と小さく唱え、闇に溶けて消えた。
初投稿です。
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