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第五話 段ボールの中身

 二人でダイエットしたあの夏の終わり頃から、早くも約一か月が過ぎようとしている。


 プール?

 もちろん行ったよ、二人で一緒に。

 平日だったということもあってか、プールは結構空いていた。

 昼前から夕方まで二人でのんびり過ごしてきたよ。


 もちろんオレはコイツの可愛い水着姿で目の保養もしっかりさせて貰った。

 ああいうのを眼福がんぷくって言うんだっけ?


 頑張った後だったからな。

 感動や幸福感も一入ひとしおだったよ。

 素晴らしい時間だった。


 そしてもちろんダイエットはその日をもって終了し、コイツのマヨ断ちもめでたく解除となった。


 ちなみに、この一か月でオレの体重は半分戻った。

 なので、ダイエットを始める前から比べると、今のオレの体重は二キロ減といったところか。

 せっかく減らしたのだから、少しは維持しようとは思っているんだが、このままだと元に戻ってしまう日も近いかもな。


 コイツの一.五キロ減はどうなったのかね。

 聞いてはいないが、マヨラーモードが復活したんだ。

 コイツだってすぐに戻ってしまったりして。ははは。


 さて、そんなある日の事。

 週末ということもあり、オレはコイツのウチに泊まりに来た。


 今日の手土産はカップアイスだ。

 電話で「何がいい?」って尋ねたら「アイスがいい」と言うので、来る途中のコンビニで買ってきた。

 百円のヤツじゃないよ?

 もうちょっと高級なヤツだ。

 オレはバニラで、コイツは抹茶。


 ちなみに、「またダイエットする羽目になっても知らんぞ」と言ったら、「その時はまた付き合ってくれるよね?」と返されてしまった。

 オレのウチに泊まりに来ることは大歓迎だが、ダイエットに付き合うのは、流石にもう勘弁して欲しいね。


 玄関先で、出迎えてくれたコイツに頼まれていたカップアイスを手渡し、オレは部屋の中に入った。


 いつものようにガラステーブルの向こうに座ろうと思ったのだが、その上に置いてある段ボールが目に入った。

 食品メーカーのロゴが入った段ボールで、既に封が開いている。


 そしてオレは、何とはなしにその中身を見てしまった。


 だって、上が開いているんだよ?

 別にノゾキのようなことをする気が無くったって、自然と目がいってしまうものだろう?

 オレだって、もし開いてなかったらわざわざ開けてまで中身を見ようとは思わないよ。


「何……これ……」


 オレは思わずそうつぶやいていた。


「何って、見ての通りマヨネーズだよ?」


 うん。そうだね。

 それは見て分かるんだ。

 だから、問題はそこじゃないんだよ。


「なんでマヨネーズがこんなに、段ボールいっぱいにあるんだ?」


 そう、マヨネーズが段ボールの中に綺麗に並んで入っている。

 縦に四本、横に六本。つまり二十四本、二ダースだ。


 何? もしかしてコイツ、マヨネーズを箱買いしているの?

 これも一つの大人買いってやつなのか?


 どんだけマヨネーズが好きなんだよ。

 つうか、どんだけマヨネーズを一人で消費するつもりなんだよ。


 それとも、もしかしてアレか?

 先日のマヨ断ちの反動だったりするのか?


「あ、それ、自分で買ったヤツじゃないよ。貰ったんだよ」


 めちゃくちゃ嬉しそうな顔でコイツはそう答えた。


「貰った? こんなに? マヨネーズを?」

「うん」


 はぁあ? なんだそれ?

 誰だよ、コイツにそんなアホなプレゼントする奴は!


 そう思いながらも、正直少し焦っている自分がいる。

 だって、よく考えてみたら、コイツにとってこれ以上のプレゼントは無いんじゃないか?


 しかも、オレにはその発想は全く無かった。

 普通無いよね? マヨネーズを女性にプレゼントするなんて発想は。


 でも、もしどっかの気の利くリア充野郎が、コイツを狙ってこれをプレゼントしたってことだとしたら……?


 その様子を想像すると、ほとんどギャグマンガのようなものに思えるのだが、だけど、コイツはそれを心底嬉しそうに笑顔で受け取ってしまう姿までもが思い浮かんでしまう。


 嘘……だろう……?

 こんな奇天烈なマヨラーを、オレ以外にも好きになるヤツがいるっていうのか?


 そりゃあ、スタイルは抜群だよ。

 それは先日のプールでも再確認した。


 顔だってかなり良いほうだと思っている。

 大学内でも間違いなく上位ランカーレベルの美人だと思う。

 高校時代の雑誌モデルってことを考えれば、オレだけの主観じゃなく、一般的に言っても美人だということだろうしな。


 しゃべり方はちょっと特徴的かもしれないが、家事全般をそつなくこなすし、明るくて、一緒にいると楽しくて、たまにちょっと強引なところもあるけど、思いやりがあって、気配りもできて、友達も多いし後輩達の面倒見も良くて……


 あれ? よく考えてみると、コイツ、かなりスペック高くね?


 いやいやいやいや。

 それでもコイツは奇天烈で破天荒なマヨラーなんだから!

 もしそんな奇特なヤツが実在したとしても、それはきっとコイツの本当の姿マヨラーを知らないんだ。

 きっとそうだ!


 ちくしょう! 一体何処のどいつだ?

 コイツにこんなふざけたプレゼントを寄越したヤツは!


 オレは彼氏なんだから。

 聞き出したって、おかしくないよな?

 むしろ、それがフツーだよね? ね?


 ゴクリ……


「……なあ、誰からの、プレゼントなんだよ」

「プレゼント? 違う違う。それは副賞で貰ったんだよ」


 ――はい?


「ぷっ。あっははははは! マヨネーズをプレゼントしてくる人なんて、いるわけないじゃん。どんだけの変人なんだよ。あははは」


 そ、そうだよな。

 一瞬、コイツの次の誕生日のプレゼントにはマヨネーズを、とか思っちゃったけど、やっぱやめといたほうがいいよね?

 そんなの、ありえないよね?


「……でも、それもちょっとアリかもね!」


 ――どっちだよ!

 

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