表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/7

第二話 とばっちり

 コイツの不意を突く見事な魅力攻撃・・・・に内心身悶えしてしまったが、そこからようやく立ち直りかけた時、オレはちょっとした質問を投げかけられた。


「今日もバイトだったよね? 何時に帰って来るんだっけ?」

「んー、今日のバイトは夜の十時までだな。そこから帰って来るのは十時半過ぎると思うが」

「了解。夕飯はどうする? 用意しておこうか?」


 ――ん? 了解? 夕飯?


「……えっと? 今夜ウチに来るってことか?」

「そうだよ。今夜からXデイ・・・まで、お世話になるね」


 ――はい?


 なんか笑顔であっさり言われたんだが?

 すまんが、話がよく見えん。どういうこと?


 いや、ウチに来ること自体は全然構わないんだ。

 今までだって週末とか休日の前日なんかは、どっちかのウチに泊まることはしょっちゅうなんだし。

 だから既に合鍵だって渡してあるし、オレもコイツの合鍵を持っている。


 Xデイっていうのは、プールに行く来週の水曜日のことだろう?

 それはもちろん分かる。

 で、今日は月曜日なんだから、えっと、十日くらい?

 ずっとオレのウチに泊まるってことか?


 別に構わないし、むしろ嬉しいくらいなんだが、でも何でだ?

 そんな長い間ずっと泊まりに来るなんて、今まで無かったぞ?


「もちろんその間、炊事洗濯に掃除などなど、家事全般はボクが引き受けるから」

「えっと、オレはもちろん大歓迎なんだが、でも、いきなりどうした?」

「ほら。ボクのウチにはさ、とっても魅力的にボクを誘惑してきちゃう困ったヤツがいるんだよね」

「誘惑?」


 オレの疑問に対して、コイツはガラステーブルの上に置いてある、ある物体を指さした。


 さっきも焼きそばにたっぷりかけていたヤツだ。

 コイツが愛してやまない魅惑の白いヤツだ。


 その名は、もちろんマヨネーズ。


 もしかしたら、実はオレよりも愛しているんじゃないかと、最近ちょっと本気で疑いたくなるヤツだ。


 ……もし「イエス」などと言われた日にゃ、立ち直れなくなりそうなんで、確認したことはないが。


「君のウチにはマヨネーズは無いじゃない?」

「まあ確かに。お前が持ち込まなければ、な」


 別にマヨネーズが嫌いというわけではないが、オレはサラダには胡麻ドレッシング派だからな。つまりオレには必要が無いので、ウチには置いていない。


 コイツはマヨラーで、コイツにはマヨネーズは必須アイテムなんだが、ウチに来るときにはいつもマイ・・マヨネーズとやらを持参して来ていた。


「ということで、ダイエットの最中は、この誘惑から逃れるため、君のウチに厄介になろうかと」

「……なるほど」


 納得した。

 コイツなりの、覚悟ってやつなんだろう。

 しかもそれがオレのためっていうのなら、オレに否があろうはずがない。


 さらに家事全般までやってくれるという。

 至れり尽くせりってやつ?

 もう、いつまででも泊っていってくれと、本気で考えてしまったね、オレは。


 だけど、喜んだのもつかの間。

 コイツはふいにとんでもない爆弾を投下し始めてくれた。


「ついでに言えば、ダイエットもボク一人でやるよりは、仲間がいてくれたほうが心強いからね」


 ――ん? どういう意味だ? 仲間?


「大丈夫。さっきも言ったけど、炊事はボクがちゃんとやるから。もう既にダイエットメニューは考えてあるんだよ」


 ――おい! おいおいおい! ちょっと待て!


 コイツの言わんとしていることがようやくオレにも分かってきた。

 つまりそれって、まさか、オレも……?


「十日間で確実に、二人・・の体重を落としてみせるよ! 期待してて!」


 それは、期待してて、じゃなくって、覚悟してて、の間違いじゃないか?


 ってか、なんでオレまで!

 オレは身長百七十八センチ、今朝計った体重は六十七キロ。

 標準なハズだ。

 ダイエットなんて、全然必要無いハズだ。


 そうだろう? そうだよな?


 だけど、ここまできてコイツの暴走・・を止められるはずもなく……


「二人で頑張ろう!」


 そう言ってコイツは両手を握りしめて、とびっきりの笑顔でガッツポーズを決めていた。


 ……やられた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ