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第9話 淡い橙の日陰で The Shadow under The Pale Orange
同作者作品「暗い純白の中で」より
私は、「橙の悲劇」を閉じ、立ち上がった。
このことを妹のなるみに話すためだ。
この話は、家族に話さなければならない。この、13作目の父の作品を世に発表しても良いのか。
登場人物が家族の名前を、そして人物そのものを反映している以上、家族全員に尋ねなければならない。
まずは妹、そして、今散歩から帰ってきた兄と義姉に。
母に話すのは最後だ。3人の了承が得られたら、4人で説得に行くのだ。
この作品は父の今までのどの作品とも異なり、叙述トリックとどんでん返しが使われている。
できれば、父の最期の作品を世に発表したい。最期くらい、母の了解を得て。
それが私の願いだ。
庭に実る橙の実よ。私が橙武者ではないことを見ていてくれ。
ジョン・オレンジの最期の作品が代々受け継がれるよう、見守っていてくれ。
〈終〉
樫谷は言った。
「あと、葭江警部補の名前だけど、挟間の名前をアナグラムしたんだよ。
HASAMA SEIJI→ASHIE MASAJIってね。」