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虹色ライラック  作者: 蛍石光
第1章 巻き込まれる男
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え?俺がですか?

放課後の委員会活動。


なんだか、ちょっとだけ魅力的な響きに聞こえるのは私だけでしょうか。

 学級会長に就任してから一週間。

 特に問題もない日々が流れ、今日は初めての学級代表会議。各クラスの代表と生徒会役員が集まる会議がある日だ。これだけ揃うと人数もかなり多い大会議になるから、使われる部屋も多目的室という大きな部屋だ。刑事ドラマで会議が行われるような雰囲気の机といすが準備されていて参加者は全員で五十人くらい。今日は初顔見せということで自己紹介と今後の活動についての説明が行われるらしい。二人掛けの座席はクラスごとにあたえられている。つまり、ここでも玉置さんが隣に座るというわけだ。


「少し緊張するよね。」


 笑顔でそんなことを言わないでください。可愛い顔がさらにかわいく見えてしまって違う緊張をしてしまうではないですか。


「そだね。緊張するね。」


 そう、この緊張は会議のせいじゃない。玉置さんが隣にいるからだ。


「では、これから今年度一回目の代表会議を行います。まずは自己紹介を生徒会の方からしていきます。次に三年一組から順に。そのあとに二年生、一年生の順でお願いします。」


 さすが生徒会長。とても滑らかなしゃべりだ。どこかで見た三年生とは大違いだ。あれ?生徒会役員の中の一人に見覚えがあるぞ。あれは、玉置さんのお兄さんじゃ?ということは、玉置さんのお兄さんって生徒会役員だったのか。それなのにあんなことに巻き込まれたら肩身も狭いよなぁ。

 代表会議での自己紹介はどんどん進んでいくのだが、それにしても・・・正直なところ、一気に自己紹介されても覚えられるわけがない。絶対に無理だ。それに覚える必要があるのかすら、よくわからない。配布された書類に名前とクラスが書かれてはいるが、読む気にすらならない。まぁ、名前が書かれた紙がなければただの呪文に聞こえただろう。いや、紙のあるなしはまったく関係ないな。どちらにしてもこれは呪文だ。そう、睡眠誘発系の。ラリホーみたいな。今なら簡単に眠りに入れる気がする。

 もうすぐ自己紹介の順番が一年生まで回ってきそうだが、眠いせいでどうでもよくなってくる。目を覚まそうとして真剣に配布書類を見てみるが、なんて書いてあるのかわからない。どんどん意識が遠くなっていく・・・


「竹中くんの番だよ。」


 小声で玉置さんに言われて我に返る。え、俺?いつの間に?もしかして寝てた?


「あ、え、と。俺?」

「そうだよ。寝ちゃってたの?ほら、頑張って。」


 頭にかかった靄を振り払うように頭を振ってから席を立ち、自己紹介を始めてみる。


「えっと・・・二組の会長です。竹中夕人といいます。以後、よろしくお願いします。」


 ザワザワっとした空気が流れる。マズい、寝ぼけていたのがばれたのか?ようやく眠気も冷めてきた。いや、どうやらそうではないみたいだ。もしかして例の件のことか?


「あの、よろしくお願いします。」


 今度は少しだけ大きな声で挨拶をして席に座る。ざわめきは消えて落ち着きが戻った。続けて玉置さんが自己紹介をする。


「二組の副会長の玉置環菜です。わからないことばかりなのでいろいろ教えてください。よろしくお願いします。」


 今度は特に何も起こらなかった。良かった。玉置さんのことは全校には広まってないみたいだ。安心するとまた眠気が襲ってくる。きっと玉置さんが聞いていてくれるから大丈夫のはずだ。

・・・・・

・・・


ん?何?俺を小突くのは誰?


「竹中くん、寝たらダメだよ。」


 小声で囁かれる。わかってはいるのだけど。こう長い話ばかりだと寝るなという方に無理があると思う。楽しい話なら別なんだけどなぁ。

・・・・・・

よし、少し目が覚めてきたぞ。

・・・

・・


 その後は何とか寝ないで乗り切り、ようやく解散だ。いい加減疲れた。半分は寝ていたくせに疲れるなんていうのは、寝ていた奴の特権だ。大体、机というやつは眠るために作られていないんだ。なのにあれほど眠りに入りやすいのはなぜだろう。まぁいい。考えても無駄だ。そういうものなんだから。それよりさっさと帰ろう。結構、暗くなってきてるし。


「やっと終わったねぇ。長かったぁ。」


 玉置さんに声をかける。彼女は全然寝てなかったのかな?


「竹中くんは寝てたじゃない。ダメだよ?寝てたら。」

「いや、後半はそれなりに起きてたって。話は聞いてたよ。」


 嘘じゃない。後半は聞こえてはいた。


「ほんとに?じゃ、何の話だったか覚えてる?」


 ちょっと、いじわるしてみよう。そんな感じで玉置さんが俺に話してくる。


「え、覚えてるさ。確か、生徒総会の話で・・・・」


 簡単に玉置さんに説明する。


「すごいね・・・寝てたと思ったのにちゃんと聞いてたんだ?」

「聞いてましたよ。明日まで覚えていられるかどうかわからないけどね。」


 そんなやり取りをしながら教室に戻ろうとしたときに廊下で藤原先生に出会った。


「あら?今、委員会終わったの?お疲れさま。」

「あ、藤原先生。ありがとうございます。」


 そう答えたのは玉置さん。俺は、なんとなく軽く会釈しただけだった。


「もう結構遅い時間だから、帰りは気を付けてね?」


 それは担任としてとても普通の自然な言葉だ。まぁ、遅いと言っても六時くらいなんだが。


「はい、そうします。」


 答えてくれたのは玉置さん。俺はまたしても返事のタイミングを逃したみたいだ。


「そうそう、竹中くん。」

「はい?なんでしょう?」


 話はもう終わったと思って歩き出そうとしていた時に再び声をかけられる。


「もう暗いから、玉置さんを家まで送ってあげてね。」


 なんですとぉ?家まで送っていけですって?どうしてそういうことになるんだ?いや、外が暗くなったからか?それにしてもなんで俺が?


「え?俺がですか?」


 思わず、そう返してしまった。


「じゃ、よろしくね、竹中くん。」


 言いたいことだけ言って、藤原先生は職員室のほうに消えて行った。


「じゃ、よろしくね、竹中くん。」


 藤原先生と全く同じセリフを玉置さんが言う。しかし、違う人が同じセリフを言うと違う意味に聞こえてしまうのはなぜだろう。玉置さんを見ると笑顔で俺を見ている。


「え、本気で言ってる?」


 先生に言われたからそう言っているだけだよね?


「うん、竹中くんなら安心だし。」


 安心ってどういう意味だよ。


「わかったよ。じゃ、送っていくよ。」

「うん、じゃ、早く教室に戻って荷物とってこよ?」


 そう言って、俺の手を取って歩き出す玉置さん。ちょっと待ってくれよ。まだ、心の準備が・・・

ここまで読んでくださってありがとうございます。


委員会の話から急展開です。

もしかすると前回の話とつなげても良かったのかもしれませんが。


次回からようやく、話が動き出していく感じになります。

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