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虹色ライラック  作者: 蛍石光
第1章 巻き込まれる男
3/27

イベントいっぱいだけど頑張ろうね。

いきなり皆勤賞の夢を壊された竹中。


いや、それよりも中学デビューを失敗したと言うべきなんでしょうか。


こんな経験した方、いらっしゃいます?

 あの事件から数日たった。幸いなことに大きな事件も起こらなかったし、ありがたいことに友達も何人かできた。そして、ある意味で最大の被害者である玉置さんとも仲良くなることができた。彼女は、例の事件のせいで有名になってしまっていたが、原因はそれだけではなかった。

 そもそも、例の三人組があんなことをしたのも『玉置さんが可愛いらしい』という噂を聞いたからだった。噂通りで確かに可愛いと思う。名前は玉置環菜さん。容姿端麗で秀才。運動神経も良くて性格も良いという四拍子そろったスペシャルな女子みたいだ。身長は俺より少し小さいくらい。女子のほうが男子よりも成長が早い。中学一年生くらいの頃のこの時期は身長では女子のほうが大きいくらいだから、玉置さんはそう背の高い方ではないのかもしれない。髪はあんまり長くのばしておらず、肩より少し上のあたりで切りそろえられていて、いつもどこか一か所をゴムで縛ってきている。これは日之出ヶ丘中学校の校則に従った髪型なんだろう。彼女は大きな綺麗な目を持っていて、その目で見つめられるとついドキドキして目をそらしてしまいそうになる。三年生が興味を持つのもわからなくはない。

 例の三人組はどうなっているのかって?そこはやっぱり気になるところですかね?

 川井先輩は実はというか、やはりというべきか、この学校を締めている番長だった。しかもあの一件では顔に泥を塗られたわけだから相当ご立腹・・・かと思いきや、俺のことをものすごく気に入ったらしい。聞いたところによると、『竹中に手を出したら俺が相手してやるっ。』と他校の輩どもにも言いまわっていたようだ。まったく、ありがたいのやらありがたくないのやら。まぁ、こんなことがあったから他の先輩たちから絡まれることもなく、平和な学校生活を謳歌することができていました。いや、これって本当です。


「おい、竹中。そろそろ俺に感謝の言葉があってもいいんじゃないか?」


 こう言ってきたのは杉田。コレは中学校に入ってからの友人で、中学入学を機会に群馬から引っ越してきた奴だ。どうにも面白いヤツというかありがたいヤツで、例の事件の際も先頭を切って俺の弁護をしてくれたらしい。小学校時代のつながりがない杉田の弁護があったおかげで、他のクラスメートも口を揃えて俺に非がないことを訴えてくれたらしい。本当にありがたいことだ。感謝以外に言葉がみつからない。こいつがいなかったら俺はどうなっていたのかわかったものじゃない。こいつにはいつか恩を返さないといけないよな。


「感謝って・・・もちろんしてるさ。前にも何度もありがとうっていったじゃないかよ。」

「そう思うんだったらさ、これからもよろしく頼むさ。」


そう。彼の名前は、杉田翔。これから長い付き合いになりそうなやつだ。


「こちらこそ、これからもよろしく頼むよ。」


俺と杉田はきっとこれから仲良くやっていけるだろう。あの事件に感謝することがあるなんて思わなかった。


*************************


 さて、中学校ではクラス委員なるものの選出が必須なのだそうだ。もう、完全にイベントといっても過言では無い。小学校の時も同じようなものがあったが、中学校のそれはレベルが別物である。そして、時としてクラス委員=罰ゲームに近い扱いになる可能性が高いのは気のせいだろう。

ということで、うちの中学校では・・・


 学級代表(会長と副会長 男女一名ずつ)

 風紀委員一名

 美化委員一名

 文化委員一名

 体育委員一名

 保健委員一名

 放送委員 任意人数

 図書委員 任意人数


 といった具合でクラスの最低七人が委員会活動にかかわることになっているようだ。会長、副会長なんて大げさな役職だが、つまりは学級代表ってことだ。まぁ、そのほかの委員会の活動については名前から察するほうが早いと思う。俺だって、黒板に書かれた役職だけから想像するしかない。

 そして、こういった委員選抜というのは学級会みたいなもので決めるわけだから仕切り役が必要だ。本来は学級代表の仕事なんだろうけれど、まだ決まっていない状態だから、担任の藤原先生が代わりに司会進行をおこなうことになるわけだ。


「それぞれの委員に立候補する人はいますか?」


 委員会活動か・・・風紀委員は早朝から挨拶イベントがありそうだし、美化委員は花壇の世話とかありそうだ。これらは割と厄介な仕事だ。そういうのは面倒だ。ならば暇そうな図書委員でもやろうか。いや、図書委員はガラじゃないな。やめておこう。それよりも小学校の頃もやったことがある放送委員でもやろうか。それなりにヒマもあったし楽しかった記憶がある。よし、放送委員にでも立候補するかな。

 そんなことを考えていた時、玉置さんから声をかけられた。彼女は俺の隣の席に座っている。実はあの事件の後、例の記憶を消そうとするかのようにすみやかに席替えが行われた。俺は内心、美少女の玉置さんの隣になって喜んでいたということは当然のごとく内緒だ。


「ねぇねぇ。竹中くんは学級会長やるよね?」


 なんでだよ。会長はやらないよ。


「いや、ユルそうな放送委員でもやろうかと・・・」

「学級会長は竹中くんがいいと思いま~っす。」


 まるで俺たちの会話が聞こえていたのかのように、他の女子が言う。おいマジか。あの子は誰だっけ。俺の知らない女子だぞ?これ以上目立つと俺の中学生活が大変なことになってしまうかもしれない。


「いやいや、そこは違いません?ほら、あんなこともあったわけだし。」


 俺は、驚きながら辞退する旨を伝えようとした。


「それは違うわ。あれがあったから竹中がいいんだろさっ。」


 杉田よ。なんてことを言ってくれるんだ。俺の援護をしてくれるんじゃないのか?方向性が真逆だよ。それじゃ、援護じゃなく追撃だ。なんだよ、なんでクラスの雰囲気は完全にやれやれムードになるんだ?ええい、こっち向きながら親指立てるなっ、杉田っ。


「えぇ、会長やろうよ。竹中くんがやるなら、私も副会長やろうと思ってたし。」


 むっ、美少女の玉置さんと委員会活動ですか。それは苦しゅうない。苦しゅうないぞ?いや、むしろ楽しそうだ。任期は半年間だし、最大イベントであろうの学校祭は後期のイベントだろう。十月だしな。

 いろいろ考えた末に不純な動機が最も俺の中で優勢に後押しを始めた。『もしかしたら、玉置さんともっと仲良くなれるチャンスかもしれないぞ?』そうか、なるほど。俺の心の声に従うとしよう。


「えっと、それじゃ、やらせていただきます。」


 もちろん、心の声は伏せておく。『よっしゃぁ』と声を上げたのは誰だったのだろう。


「はいっ、副会長は私やりたいですっ。」


 玉置さんがそう言うと、ワァーっと歓声と拍手が起こる。一体どういうノリなんだよと思う。けど、数日前にあんなことがあったばかりだから、このクラスの一員になれたような雰囲気はありがたい。


「他に立候補する人はいますか?」


 藤原先生もこの雰囲気ならほぼ決定だろうなと考えているようで、明らかに一応の確認という感じだ。


「では、学級会長は竹中くん、副会長は玉置さんでいいですか?」


 この言葉と同時にさらに拍手が起こる。頑張りますよ。玉置さんとだし。


「よろしくお願いします。」

「よろしくお願いしまーす。」


 二人で席を立ってみんなに挨拶をする。


「前期は、野外学習という一年生向けの宿泊研修みたいなイベントや陸上競技大会、学校祭もあるので皆さん協力してくださいね。」


 あれ?ちょっと待って。イベント目白押しじゃないですか。これは相当忙しいのではないでしょうか?予想とは違うんですけど?お願いだから最初にきちんと説明してくださいよ。


「イベントいっぱいだけど頑張ろうね。」


 玉置さんに笑顔で言われる。


「そうだね。頑張ろう。」


 はい、玉置さんとなら頑張れます、たぶん。心の声と口に出す声が逆になりそうだった。


「さて、それではここからは会長と副会長にお任せしますね。」


 おいおい、いきなりですな。でも、まぁ、いいかな?玉置さんと委員会活動ができるなら。そんなことを考えながら教卓まで移動してクラス委員の選抜を続けることにした。さて、なんとか進めてみますか。


「えっと、それでは他の委員の立候補はいませんか?」


 かくして、学級会長としての一年生前期が始まったのだった。

ここまで読んでいただきありがとうございます。


本当はここで終わりたくはなかったんですが、少し長くなるので一旦ここで終わります。


委員会関係の話、もうちょっとだけ続きます。

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