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虹色ライラック  作者: 蛍石光
第9章 想う女
24/27

私に謝ったって、仕方ないでしょ?

衝撃の展開の真相です。

 日曜日はとっても楽しかった。きっと最初で最後のデート。

 買ってもらった髪飾りは、私の大切なもの箱にしまっておいた。引っ越しの時に無くなったら嫌だからね。本当は髪につけたところを見て欲しかった。


 週が明けて月曜日の放課後。いつものように友ちゃんとお話。


「で?昨日はどうだったのよ?」

「え?えっと・・・。」


 いきなり?それ聞いちゃうの?


「・・・はぁ、その感じだと・・・。」

「・・・手をつないで、お祭り、まわったよ?」


 いやだ、顔が火照ってきちゃった。


「それだけ?」

「うん、そう。」


 それだけって。すごく楽しかったもん。ちょっとひどいよ。


「好きだとか言わなかったの?」

「うん。言ってないよ・・・。」

「・・・そう・・・。」

「・・・うん。」

「まぁ、あきがそれで良いなら、いいけどね。」

「・・・うん。」


 そう、これでいいの。あと二週間しかないから。

 竹中くんと友ちゃんと、あと杉田くんたちとも、仲良く楽しく過ごしたい。


「あのね?でね?お祭りの前に四プラでね?」

「あ・・・。」


 え?どうしたの友ちゃん? 


「あの、東山さん。」


 た、竹中くん?


「あ、竹中くん。昨日は楽しかったね。」


 大丈夫。いつもと同じ感じでお話しできてる。


「うん、楽しかったね。」


 どうしたのかな?いつもと違う表情の竹中くんだよね?。


「・・・えっと?」

「あ、そうだ。あき、私、先生に呼ばれてるんだった。ごめんね?ちょっと待っててくれる?」


 友ちゃんっ。なんでこのタイミング?


「え?ちょっと、そうなの?」

「うん、じゃ、竹中くんも、あとでね。」

「えっと、うん、あとでね。」

「あの・・・なにかな?」


 なんだろう?すっごくドキドキする。


「えっと、あ、昨日はありがとう。」


 ドキドキが止まらないよ。


「ううん、こっちこそ。買ってもらっちゃって。ありがとう。」


 私も、何か買ってあげたかった・・・。


「いや、そんなことはいいんだよ。」


 何だろ。すっごく、ドキドキする。それに、竹中くんの顔、ちょっと怖い。


「あの、東山さんっ。」

「はいっ。」

「本当は、昨日、言いたかったんだ。でも、言えなかった。」


 えっ、イヤだ、何言おうとしてるの?

 お願い。言わないで。

 きっと、それって私が聞きたかった言葉なの。

 でも、聞きたくない。

 胸が締め付けられるみたいに苦しいよ。


「・・・・・・」

「俺、東山さんのことが・・・・・」


 ダメよ・・・


「・・・・・・・うん。」

「・・・・・東山さんが・・・・・・」


 私も・・・好き。


「・・・・・・」

「・・・・好きなんだ。」


 イヤだ。恥ずかしくて、嬉しくて。大好きな竹中くんの顔を見てると涙が出ちゃうよ。


「・・・・・・」

「・・・・俺と・・・付き合って・・ください。」


 どうして?どうして今なの?

 なんで、転校なんかしなくちゃいけないの?

 やっぱり、転校しなきゃいけないの?

 彼の気持ちを聞いてしまった今、どうしたらいいの?

 でも、私はもう、決めてしまった。もうどうすることもできない。

 彼の気持ちを聞く前に、転校することを決めちゃった。イヤだ。どうして?


 けど、彼の気持ちを知ってても、私は、きっと今と同じ選択をしたと思う。

 私のわがままで、お父さんとお母さんに迷惑はかけられないもん。

 でも、何この気持ち。今からでもやっぱりこっちにいられないのかな?

 ううん、そんなこと無理なのは分かってる。わかってるよ・・・


 私は、竹中くんのことが好き。大好きです。今まで、こんなに誰かのことを好きってはっきり思ったことないよ。


 彼からの告白。好きだって言ってくれた。

 私も言いたい。『私も竹中くんが好きだよ。』って。あの時から。動物園に行ったも。花火大会の時も。そして、昨日のデートの時も。


 ずっと、竹中くんのことが好きでした。


 でも、言えない。もう、今になってそんなこと言えないじゃない。今さらよ?こんなに、こんなにうれしいのに、なんでこんなに後悔するの?私は間違ったんだ。彼との付き合い方を。

 もっと、もっと、早く。私から言うべきだったんだ。好きだってこと。だって、好きだったんだから。転校しちゃうっていうことも。きっと彼は分かってくれた。

 そしたら・・・こんなことには・・・ならなかったのに。竹中くんに、辛い思いをさせなくて済んだはずなのに。ごめんなさい。竹中くん。私のせいで、イヤな思いをさせちゃう。


 本当に・・・ごめんなさい・・・竹中くん。でも、大好きだよ。お付き合いしたかったよ。



「・・・・ごめん・・・なさい。・・・私・・は、竹中くんとはお付き合いできない。」


 ごめんなさい。


 私、もうダメ。

 そう思ったとき、カバンをもって教室から逃げ出していた。

 私は教室から逃げたの?彼から逃げたの?それとも私から逃げたかったの?

 友ちゃんが私を呼ぶ声が聞こえたけど、止まれない。


 一気に、走った。周りから見たら絶対変な子に見えたと思うけど。気が付いたら友ちゃんに転校を打ち明けた公園まで走ってきてた。何も考えてなかったと思うけど、ここに来ちゃったんだね。


「あきっ」


 友ちゃん?

 なんでここにいるってわかったの?もうダメ。学校にいる時からずっと我慢してきた。でも、もう限界だよぉ。


「友ちゃん・・・なんで?なんで、こんなことになっちゃうの?」

「あき・・・私も聞きたいよ。どうしてあんなこと?」

「だって・・・わたし、あと一週間くらいしか札幌にいないんだよ?家なんかもう、ほとんど荷物ないいんだからっ。そんな状態で、どうやってお付き合いしていくの?」

「だけど、だけどっっ。他の言い方もあったじゃないっ。」


 そうかもしれないけど・・・


「でも、なんて言えばよかったのよっ」

「本当のこと、言えばよかったのよ。竹中くんは分かってくれるよ。このままじゃ・・・悲しすぎるじゃないっ」


 きっと、友ちゃんもいっぱい我慢してたんだ。だから、私のために泣いてくれてる。


「う・・うぅ・・・。ごめんね。友ちゃん。」

「私に謝ったって、仕方ないでしょ?」


 ううん、友ちゃんはいつも私の味方でいてくれた。

 私には、たくさんのチャンスがあったのに、それを逃したの。

 けど、いまさら時間は戻らない。あと、二週間弱。彼と今まで通りに接して行けるとは思えない。あんな風に逃げ出しちゃったんだから、彼はきっとすごく傷ついたはず。

 あんなに楽しかったのに。昨日はあんなに幸せな時間だったのに。


 でも、これで、私のことを嫌いになってくれたなら。

 竹中くんをこれ以上傷つけなくて済むのかもしれない。


「ごめんね。友ちゃん。」

「竹中くんに、今から、ちゃんと話しに行こう?私も協力するから。ね?」

「ありがとう。友ちゃん。でも、やっぱりこのままで。」

「どうして?好きなのに?ちゃんと両想いなんだよ?」

「うん、嬉しかった。竹中くんが私のことを好きでいてくれて。だからこのまま。」

「わからないよ、あきの考えてる事が。」

「もしかしたら、今日のことで竹中くんは、私のことキライになるかもしれないじゃない。」


 実際に口に出してしまうと、すごく苦しい。


「どういうこと?」

「そうなったら、彼が・・・これ以上・・・ううぅ・・・傷つかない・・・」


「馬鹿っ。こんな時までそんなこと考えなくてもいいのよっ。彼には、私から伝えてくるよ。あきも本当は竹中くんのことが好きだって。でも、来週には転校しちゃうから、だから、断ったんだって。今、こんな終わり方しちゃったら、ずっと後悔するって。」


「ううん、これは、私に与えられた罰。彼に嘘をついてきたから・・・」

「・・・・・・ごめん。私も、言うべきだった・・・」

「なんのこと?」

「私、花火大会の日に、杉田くんと会ったの。あきたちを二人で花火大会に行かせたかったから。それで、その時に杉田くんから聞いてた。」


 え・・・。何それ?聞いてたってなんのこと?


「ごめん、あき。」


 え?どういうこと?


「わかんないよ、友ちゃん。どういうこと?」

「私、杉田くんに確認したの。竹中くんの気持ち。だから・・・。」


 そうなんだ。知ってたんだ、友ちゃん。ありがとう。そこまで私のことを思ってくれて。杉田くんもありがとう。


「ありがとう、友ちゃん。教えてくれて。私、やっぱり、今のままでいいと思う。竹中くんとは今のままで。」

「・・・・・・」

「手紙、書くことにする。私の本当の気持ち。ちゃんと彼に伝える。だから、ね?本当にありがとう。」

ここまで読んでくださってありがとうございます。


東山さんにとっても辛い結果だったわけです。

彼女の後悔。

良かれと思っていたことが全て裏目に出てしまった瞬間。

絶望感でいっぱいだったでしょう。


竹中と東山さんの本当の思いがわかったところで、元の時間の流れに戻ります。

竹中目線からの話。

フラれた後の話。


竹中・東山編の結末まであと2章です。


ご意見、ご感想お待ちしております。

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