表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
虹色ライラック  作者: 蛍石光
第6章 向き合う男
20/27

ぢゃねぇよ。竹中。何やってんの?

お祭りの続きですかね。

前の話の続きですが、章は変わっています。


少しは関係が進展してほしいものです。

「で、どうだった?」

「どうって、何がだよ?」

「そりゃ、何って。なぁ?言ったんだろ?」


 そんな話をしている今日は、祭りの翌日の授業合間の休み時間。いつも通りに杉田と話をしているのは学校の教室。昨日のことを杉田に根掘り葉掘り聞かれていた。



 あのあと、俺たちは祭りを堪能した。手をつないで歩いた。焼きそばも食べたし、綿あめも食べたし、クレープも食べた。少し食べすぎな気もするが。小夜へのお土産は、実は忘れてた。


「いっぱい食べたねぇ。」

「ほんと、ちょっと食べすぎかもしれない。」

「ね?こんなに食べたことってないよね。」


 ちょっとした丘に座って公園を眺めながら一緒に食べていた。


「そうだよね。」


 空の色が、透き通った青からオレンジ色に変わろうとしている。タイムリミットが近いことを空の色が告げてくる。


「そろそろ帰らないとダメだよね。」

「・・・そうね・・・」


沈黙が二人を包む。楽しい時間というのはいつだってあっという間に過ぎていくんだ。


「帰ろっか?」

「・・・うん。」


 帰り道。

 まだ言えていない、伝えたい気持ち。『好き』という気持ち。その一言が伝えられない。彼女の家に着く前に伝えなくちゃ。そんな希望を打ち消すようにあっという間に時間は流れる。


「今日は本当に楽しかった。ありがとうね。」


 今言わないと、もうチャンスがない。


「俺も楽しかったよ。また、遊びに行こうね。」

「うん、そだね・・・。」

「じゃ、また明日、学校でね・・・」

「うん、また・・・」


 そういって、東山さんはマンションに消えていった。




「ぢゃねぇよ。竹中。何やってんの?」

「は?俺だって、必死だったんだよっ。悟れよ。」

「悟れるか、ボケェ。そこまでしておいてお前は・・・」


 頭を掻きむしりながら杉田が言った。


「こういうのは苦手なんだよっ。仕方ないだろ?」

「・・・まぁな。得意な奴もどうかと思うけどな。」

「だよなぁ・・・」


 教室で男二人で深いため息をつく。決して絵になる光景ではない。


「今日だな。」

「は?何が?」


 杉田が訳の分からないことを言い出す。


「やっぱり、今日伝えるしかないだろうが。」

「だからなんで今日なんだよ。」

「今日だからいいんだって。まだ、昨日の感覚が残ってるだろ?」


 昨日の感覚。思い出すと、とてもいい気持になる。


「放課後に勝負だ。」

「ちょっと待てよ。心の準備が必要だろ?」

「昨日さんざん準備してできない奴に、今更、準備なんていらないって。」


 それを言われると反論の余地がない。


「わかった。今日、告白する。」

「うっし。結果報告、期待しているぜ?コンドコソナ。」


 あぁ、勢いというのは恐ろしい。



 放課後になった。けど、どうやって話しかければよいのかもわからない。たぶん、まずは普通に話しかけるべきなんだろうけど。


「早くいけよ。」


 杉田に急かされる。


「わかってるよ。わかってるけどさ。」

「あああああああ、もう。腹立つなぁ。さっさと行けよ。」


 うううう、行きますよ。行きたくないわけじゃないんだから。



「あの、東山さん。」


 彼女は友ちゃんと話していた。いつもの笑顔だ。


「あ、竹中くん。昨日は楽しかったね。」

「うん、楽しかったね。」


 いや、そうじゃないだろう?確かに楽しかったけど。


「・・・えっと?」


 どうしたの?っていう表情でこっちを見つめる東山さん。


「あ、そうだ。あき、私、先生に呼ばれてるんだった。ごめんね?ちょっと待っててくれる?」


 砂川さんっ。なんでこのタイミングで?


「え?ちょっと、そうなの?」

「うん、じゃ、竹中くんも、あとでね。」

「えっと、うん、あとでね。」


 どうしよう。なんて言えばいいんだろう。


「あの・・・なにかな?」


 東山さんが目の前にいる。言わなくちゃ。


「えっと、あ、昨日はありがとう。」


 何言ってんだ。


「ううん、こっちこそ。買ってもらっちゃって。ありがとう。」

「いや、そんなことはいいんだよ。」


 言いたい言葉は決まってる。たった一言なんだ。俺は、その一言も言えないのか?心臓の音が聞こえそうだ。頭も爆発しそうだ。よし、言うぞっ。決めた。東山さんの顔を、しっかり真っすぐに見つめる。他人が見たら、恐ろしい表情をしていたんかも知れない。それこそ、見つめるというよりも、睨みつけるような。まいった。なんだか変な汗まで出てきた。・・・よし、決めた。もう決めた。


「あの、東山さんっ。」

「はいっ。」

「本当は、昨日、言いたかったんだ。でも、言えなかった。」

「・・・・・・」

「俺、東山さんのことが・・・・・」

「・・・・・・・うん・・・」

「・・・・・東山さんが・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・好きなんだ。」

「・・・・・・」

「・・・・俺と・・・付き合って・・ください。」


 やっと言えた。彼女への告白。とてつもなく長い時間がかかったけど、やっと言えた。東山さんはどんな表情をしてるんだろう。


 ずっと、彼女の顔を見てた。

 ずっと、彼女も俺を見てた。


永遠かと思うような長い沈黙の後、彼女がフッと目をそらし、そして口を開いた。



「・・・・ごめん・・・なさい。・・・私・・は、竹中くんとはお付き合いできない。」

ここまで読んでくださってありがとうございます。


いやぁ、まさかの展開ですね。

竹中、敗戦。

何が原因なのでしょう。


それにしても、2連敗はさすがにかわいそうな気もする・・・


感想、ご意見お待ちしております。

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ