ぢゃねぇよ。竹中。何やってんの?
お祭りの続きですかね。
前の話の続きですが、章は変わっています。
少しは関係が進展してほしいものです。
「で、どうだった?」
「どうって、何がだよ?」
「そりゃ、何って。なぁ?言ったんだろ?」
そんな話をしている今日は、祭りの翌日の授業合間の休み時間。いつも通りに杉田と話をしているのは学校の教室。昨日のことを杉田に根掘り葉掘り聞かれていた。
あのあと、俺たちは祭りを堪能した。手をつないで歩いた。焼きそばも食べたし、綿あめも食べたし、クレープも食べた。少し食べすぎな気もするが。小夜へのお土産は、実は忘れてた。
「いっぱい食べたねぇ。」
「ほんと、ちょっと食べすぎかもしれない。」
「ね?こんなに食べたことってないよね。」
ちょっとした丘に座って公園を眺めながら一緒に食べていた。
「そうだよね。」
空の色が、透き通った青からオレンジ色に変わろうとしている。タイムリミットが近いことを空の色が告げてくる。
「そろそろ帰らないとダメだよね。」
「・・・そうね・・・」
沈黙が二人を包む。楽しい時間というのはいつだってあっという間に過ぎていくんだ。
「帰ろっか?」
「・・・うん。」
帰り道。
まだ言えていない、伝えたい気持ち。『好き』という気持ち。その一言が伝えられない。彼女の家に着く前に伝えなくちゃ。そんな希望を打ち消すようにあっという間に時間は流れる。
「今日は本当に楽しかった。ありがとうね。」
今言わないと、もうチャンスがない。
「俺も楽しかったよ。また、遊びに行こうね。」
「うん、そだね・・・。」
「じゃ、また明日、学校でね・・・」
「うん、また・・・」
そういって、東山さんはマンションに消えていった。
「ぢゃねぇよ。竹中。何やってんの?」
「は?俺だって、必死だったんだよっ。悟れよ。」
「悟れるか、ボケェ。そこまでしておいてお前は・・・」
頭を掻きむしりながら杉田が言った。
「こういうのは苦手なんだよっ。仕方ないだろ?」
「・・・まぁな。得意な奴もどうかと思うけどな。」
「だよなぁ・・・」
教室で男二人で深いため息をつく。決して絵になる光景ではない。
「今日だな。」
「は?何が?」
杉田が訳の分からないことを言い出す。
「やっぱり、今日伝えるしかないだろうが。」
「だからなんで今日なんだよ。」
「今日だからいいんだって。まだ、昨日の感覚が残ってるだろ?」
昨日の感覚。思い出すと、とてもいい気持になる。
「放課後に勝負だ。」
「ちょっと待てよ。心の準備が必要だろ?」
「昨日さんざん準備してできない奴に、今更、準備なんていらないって。」
それを言われると反論の余地がない。
「わかった。今日、告白する。」
「うっし。結果報告、期待しているぜ?コンドコソナ。」
あぁ、勢いというのは恐ろしい。
放課後になった。けど、どうやって話しかければよいのかもわからない。たぶん、まずは普通に話しかけるべきなんだろうけど。
「早くいけよ。」
杉田に急かされる。
「わかってるよ。わかってるけどさ。」
「あああああああ、もう。腹立つなぁ。さっさと行けよ。」
うううう、行きますよ。行きたくないわけじゃないんだから。
「あの、東山さん。」
彼女は友ちゃんと話していた。いつもの笑顔だ。
「あ、竹中くん。昨日は楽しかったね。」
「うん、楽しかったね。」
いや、そうじゃないだろう?確かに楽しかったけど。
「・・・えっと?」
どうしたの?っていう表情でこっちを見つめる東山さん。
「あ、そうだ。あき、私、先生に呼ばれてるんだった。ごめんね?ちょっと待っててくれる?」
砂川さんっ。なんでこのタイミングで?
「え?ちょっと、そうなの?」
「うん、じゃ、竹中くんも、あとでね。」
「えっと、うん、あとでね。」
どうしよう。なんて言えばいいんだろう。
「あの・・・なにかな?」
東山さんが目の前にいる。言わなくちゃ。
「えっと、あ、昨日はありがとう。」
何言ってんだ。
「ううん、こっちこそ。買ってもらっちゃって。ありがとう。」
「いや、そんなことはいいんだよ。」
言いたい言葉は決まってる。たった一言なんだ。俺は、その一言も言えないのか?心臓の音が聞こえそうだ。頭も爆発しそうだ。よし、言うぞっ。決めた。東山さんの顔を、しっかり真っすぐに見つめる。他人が見たら、恐ろしい表情をしていたんかも知れない。それこそ、見つめるというよりも、睨みつけるような。まいった。なんだか変な汗まで出てきた。・・・よし、決めた。もう決めた。
「あの、東山さんっ。」
「はいっ。」
「本当は、昨日、言いたかったんだ。でも、言えなかった。」
「・・・・・・」
「俺、東山さんのことが・・・・・」
「・・・・・・・うん・・・」
「・・・・・東山さんが・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・好きなんだ。」
「・・・・・・」
「・・・・俺と・・・付き合って・・ください。」
やっと言えた。彼女への告白。とてつもなく長い時間がかかったけど、やっと言えた。東山さんはどんな表情をしてるんだろう。
ずっと、彼女の顔を見てた。
ずっと、彼女も俺を見てた。
永遠かと思うような長い沈黙の後、彼女がフッと目をそらし、そして口を開いた。
「・・・・ごめん・・・なさい。・・・私・・は、竹中くんとはお付き合いできない。」
ここまで読んでくださってありがとうございます。
いやぁ、まさかの展開ですね。
竹中、敗戦。
何が原因なのでしょう。
それにしても、2連敗はさすがにかわいそうな気もする・・・
感想、ご意見お待ちしております。
よろしくお願いします。




