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氷の魔法使い  作者: 星野 葵
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プロローグ

初めて書いた小説です。文がヘタかもしれませんが、最後まで読んでいただければ幸いです。ストーリーは出来次第投稿していく予定です。

地図に載らないほど小さな村。


この村を見た者は、きっとそう呼ぶだろう。


この村は、本当に小さな集落にすぎず、言葉の通り、世界中でどんなに地図を探しても、その村が載っている地図は無いと言っていい。周囲は山に囲まれ、山に生えている木々は冬でも葉を落とさない。そんな自然に隠れるようにしてその村は存在していたのだった。


しかし、そんな小さな村でも、たった一つだけ他の村には無い特徴があった。


この村の住人は、全員が魔法使いなのである。


住人は、日々の生活の中で当然のように魔法を使い、生活を豊かにしていた。魔法の研究も活発に行われ、住人はみなそれを誇りに思っていた。また、魔法を理解することができない他の人々からの迫害を避けるため、村から出ようとする者はほとんどいなかった。


隠れるように存在するその村からさらに隠れるようにして、山のふもとに小さな小屋があった。そこには母と娘が住んでいた。母は得意の治癒魔法を使って治療院を経営し、まだ幼い娘を養っていた。娘は最近ようやくはいはいができるようになったばかりだった。夫を早くに失っていた母にとって、娘は唯一の心の支えだった。


母はたまに娘をおぶって薬草を探しに山へ行くことがあった。その日も朝から山へ行き、薬草を探していた。


「おっと…。」


母は足を滑らせて、それから気を引き締めた。昨夜の雨で土がぬかるんでいる。もう少しで転ぶところだった。


「今日は解毒の薬草を探そうと思っていたのだけど、この調子では無理そうね…。この子にもしものことがあったら大変だし、もうここまでにしようかしら。」


母は山を降りることにした。薬草が取れる場所にはまだ着いていないが、怪我をする方が大変だ。もう少し土が乾いてからまた来よう。そう思って、今度は足を滑らせないように慎重に歩いた。その時娘は背中の上ですうすうと寝息を立てていた。


しかし、足元に気を取られ、母は他のことを見ていなかった。雨でぬかるんだ土が土砂となって崩れてきたことに気付くのが遅れた。音に気付いて斜面を見上げると、もう土砂はすぐそばまで迫ってきていた。ここは魔法で切り抜けるしかない。母はそう思った。


「土砂よ、どうか私とその娘を避けて流れたまえ。

流れの形成ティクス・レント…!」


母は土砂に向かって手をかざし、魔力を集中させた。


やがて土砂は二人を飲み込もうとするかのように襲いかかった。土砂はなんとか母の目の前で二つに分かれ、二人を避けて流れた。


(このまま保てればいいのだけど。)


母は治癒魔法以外はあまり得意ではない。土砂が過ぎ去るまでなんとか魔力を維持できることを祈った。


幸いなことに、それほど大きな土砂崩れではなかったようで、土砂はすぐに過ぎ去った。妙に静かになった山道で、母はしばらく呆然と立っていた。


ほっと胸をなでおろし、母は早く山を降りようと一歩踏み出した。その時。


すさまじい音を立てて、今度は母のいる地面が崩れ始めた。母にはもう魔力がほとんど残っていなかった。母はさけび声を上げることすらできなかった。ただ土砂に飲み込まれることを想像してぎゅっと目をつむっただけだった。しかし、そんな感覚はいつまで待ってもやって来なかった。


おそるおそる母が目を開けると、驚くべきことに、母は浮いていた。崩れる土砂を見下ろすような体制をとっていたのだ。背中の上では、目を覚ました娘が面白がって笑っていた。


(これは浮遊魔法?こんな難しい魔法を、誰が…。)


その問いの答えを、母はすでに分かっていた。自分たちを浮かび上がらせている魔力を、母は間違いなく背中から感じていた。


(浮遊魔法は村でも使える人はほとんどいないと言われた、難易度の高い魔法。それを、まさか、この子が…?)


魔法は、本来ならどんなに素質のある者でも教わらなければ使えない。誰にも教わらず、それもまだ言葉も話せないような幼子が魔法を使った。それも浮遊魔法を。そのことの異常さを、娘は知るわけもなくただ背中の上で愛らしい笑い声を上げていた。

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