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第十話 side:girl

後半は限りなく趣味の部類です。読み飛ばしても問題ありません

霧ヶ峰君の幼馴染みだという二人がやって来てからクラスは大分変わった。

霧ヶ峰君自身も凄く明るくなった。

「アー、なんなのよあの授業。意味不明」

「右に同じ」

「……基本だぞ。あれぐらい。というかお前ら今まで何を修行してきたんだよ」

「魔法に決まってるでしょ。決して机に座って本を読むことではないわ」

「あのなぁ。魔法使いは誰よりも勉強するものなんだぞ」

「だって教えてくれる人いなかったし……。大体、ヘタレのアクトに言われたくないわ」

「何をー。どの口が言うか」

「実際に魔法を使うのが苦手だから理論ばかり勉強してるんでしょ」

「フン。当たらずとも遠からずだが。……そこまで言うなら試してみるか?」

「ええ。いいわ。勝負よ」

いきなり二人が杖を構え、五歩程離れて背中合わせ。アレ?これって危険じゃない?

「よし。三つ数えたらだぞ。晴彦。審判頼む」

「あ、ああ」

「1」

止めなくて良いのかな。

「2」

いや、止める程の力はないけど。

「3」

「いけ!式神よ!」

「世界よ、脈動し、収束せよ」

二人の杖から放たれた魔法は一目散にお互いの間の晴彦君に……。え?

「ふげらっ」

二人の魔法を一身に受けて晴彦君が倒れる。

「「晴彦!」」

暫くして晴彦君が立ち上がる。タフだ。

「な、なんとか大丈夫だ」

「「どっちが強かった?」」

「そういう競技かよ!」





「で、本当にわからないわけ?」

「さっぱり」

「俺も」

「はあ、教えた経験なんてないんだけどな。ノート見せて」

「アハハ」

「ハハハ」

「……取ってないの?」

「あ、アクトのでやればいいじゃない」

「ん、取ってない」

「何それ。人のこと言えないじゃない」

「俺はわかってるからいーの。北条さん、悪いけどノート貸してくれる?」

え?私?字が汚いんだけどな。仕方ないか。

「はい」

「サンキュ」

パラパラとノートをめくる。授業時間の割にかなりの板書量だったからノートも結構使った。

「じゃ、まず魔法の成り立ちと魔法とは何かから話そうか」

はっきり言うと私もノート取るだけで全然理解してない。

「科学って言葉がかるだろ?化学ばけがくのカガクじゃなくてサイエンスの方のカガクだ。科学って言葉は魔法と対極にあるって認識があるかもしれないけど、そいつは間違い。元々、錬金術も魔法も科学の一分野だったんだ。もっと元を辿れば芸術もそうだな」

霧ヶ峰君は殆ど何も見ずに話している。

「科学の目的はね、『世界の何たるか』を探求することなんだ。特に日本では自然科学こそが世界の真理を捉える唯一の方法だ、って考える人が多いんだけど自然科学も結局は世界を観察する方法論の一つに過ぎないんだよね。んで、自然科学の正しさを主張するためには魔法を否定するしかない。異端審問や魔女狩りなんてのは良い例だ。まあ魔法が使える人間はごく少数だったから、魔法は瞬く間に落ちぶれていき、つい最近まで魔法は隠匿される存在だったわけだ。これが大ざっぱな魔法の経緯だね」

周りを見ると聞いてる人が沢山いる。というかノート取ってる人もいる。……私も取ろうかな。

「骨組みさえわかってれば教科書でわかるはずだから、次は魔法とは何かを話そう。並行世界って考え方が重要になるな。言うまでもなく世界には様々な可能性を秘めている。人が次の瞬間どういう行動をとっているか、空気分子のぶつかり合いにより分子はどう進むのか、全部足し合わせると可能性の数はとんでもないことになる。でも俺たちが実際に体験できるのはそのうちの一つだけ。ところが選択されなかった他の可能性たちも並行世界としてこことは違う次元に存在しているという考えがある。俺たちは『並行世界の全て』という巨大な樹形図からたった一つをアミダクジのように選択しているというんだな。魔法はこの考えより生まれた。例えば……」

霧ヶ峰君は自販機で買ったらしい紙コップの中身を飲み干して、何かを詠唱する。

次の瞬間にはコップには水が溜まりだし、遂には一杯になった。

と思うといきなり水を机にぶちまけた。

「今、俺は水をこぼした。覆水盆に還らずというように、この水はもう元には戻らない。と、同時に戻ってもおかしくはないんだ。10の何億乗分の一だろうけどね。これだって可逆反応まきもどせることには違いないんだな。だけど、普通じゃあり得ない。だから、祈るんだ。それが魔法。根本的には魔法ってのは祈ることなんだ。だから、宗教なんてのはあながちインチキでもないのさ」

そう言うと霧ヶ峰君はまた詠唱してコップに水を戻した。

この時から、魔法のことは霧ヶ峰君に聞けという不文律がクラスに生まれることになる。


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