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第九話 side:boy

またいつもの夢を見た。

あの日の夢だ。世界が変わってしまった日の。




 あの日、新しい魔法書に夢中になっていた。今まで父さんに禁止されていた概念の魔法が乗っている本だ。

難しい言葉が多くて、理解できないところだらけだったけど「結界」だけは理屈がわからなくても行使できる。

だから、新しい結界を勉強していた。名を、「五行平衡の陣」といった。

古来から伝わる五つの陣が複合したその結界は、形からしてとても複雑で形を真似るだけでも一苦労だ。

あ、また失敗した。

「むぐぐ、やっぱし五つを同時に作らなくちゃダメなのか。ムチャクチャにむずいぞ、これ」

当たり前だ。いくら結界が得意とはいえ、大の大人が手こずるような結界を子供が出来るわけもない。

「やっぱし、曲陣の練習が適当すぎたのかなぁ……」

そう言いつつも飽きもせずに結界を組んでいる。魔法を使う、その行為だけで無限の楽しみを見いだしていた頃だった。

「父さんがやると、あんなに簡単そうにやるのになぁ」

そう、父さんがもの凄い天才だったから、自分にも同じぐらい才能があるはずなんてバカなことを考えていた頃だった。

「あら、また結界弄り?いい加減根暗よね、アンタって」

「サキ!来てたの!?晴彦も」

「おっす」

「そう。来てあげたの。わざわざ来てあげたんだから、そんなことは後にして遊びに行くわよ」

「うん。これ、父さんの書斎に返したら直ぐに行く。待ってて」

サキと晴彦。こんな俺にも仲間がいた。いつ知り合ったのかなんてことも思い出せない。

いつだって、この二人に連れられて俺は毎日を駆けていたんだ。

それすらも裏切ってしまったけど。




 「じゃ、かくれんぼね。鬼は晴彦ね」

「……なんで」

「今朝、お告げがあったのよ。じゃ、三分数えたら探しに来てね」

「前そんなこと言って普通に帰ったよね?」

「いいから、いいから。よーい、始め」

「ああ、もう。いーち、にー、」

「ほら、アクトも行くよ」

「う、うん」

何だってまた隠れんぼだったんだろう。せめて三人一緒に遊ぶ遊びだったら、こんなにも惨めな思いをしなくて済んだのに。




 隠れんぼの時に俺が隠れていたのはいつも同じ場所。小高い丘に一本生えている檜の木の天辺で一等眺めの良い場所から町を眺めていた。

その直後だった。

空から恐怖の大魔王が降りてきた。

――キィーン

金属音のような甲高い音は今でも耳の奥に残っている。

真っ赤に燃え上がった隕石のような物体は禍々しい気配そのままに地面へとぶつかった。

俺は幼い野次馬根性そのままに着弾地点へと駆けていく。

「馬鹿な」

「予定ではまだ二週間の猶予が」

「そんなことよりどうする」

集まりだした大人たちが口々に喋っていた。

ことの重大さがわかっていなかった俺は興味津々で着弾地点を見つめていた。

だから、俺だけが次の瞬間に着弾地点を見ていた。

異常なエネルギーを感じた。今にも暴発しそうなエネルギーだ。

ヤバい。爆発する。直感的に思い、反射的に行動した。

「五行平衡の陣!」

我ながらバカなことをしたと思う。よりにもよって一度も成功したことのない結界を使ったのだ。

辛うじて構成には成功したけれど魔力がうまく通せずに。

爆発した。世界が白に薄れていく。

一秒後、生きているのは自分だけだった。周り全てが燃え尽きて、そこは地獄になっていた。

人が燃える異臭がした。

 断末魔の叫びが耳を突く。

  助けを呼ぶ声、子供を捜す声。

自分にはどうしようもないと言い聞かせながらそのすべてを無視してひたすら進んだ。

今思えば怖かったのだ。誰かを助けようとして誰も助けられないことが怖かった。

自分の無力さを教えられるのが怖かったのだ。

だから、たった二人の友人の最後さえ見てやることをしなかった。

死んだと知らされることを恐れたのだ。




そこで目が醒めた。フラフラと支度を済ませて学校に向かった。

教室のドアを開けた時に自分は夢の続きを見ているのだと思った。

頬でも募ろうと思ったけど、夢ならそれはそれでいい気もしてそのまま赤い髪の少女を眺めていた。

「あら、私がどうかしたのかしら?」

急にその子が喋った。

その丁寧な物言いは記憶の中の彼女とは余りにかけ離れていて、夢にせよ現にせよ、彼女ではないのだと思い知らされた。

「あ、いや。何でもない。何でもないんだ。少し、昔の友達に似ている思ってさ」

目を覚まそうと思って頭をブンブンと振った。

「へえ。それも何かの縁かもしれないわ。あなた、名前なんて言うのかしら?」

「阿久人だ。霧ヶ峰阿久人」

「ふーん。変わった名前ね。よろしく、阿久人君。あ、そうそう。私の名前はさき白銀しろがね 咲っていうの」

ニヤッと悪戯っぽく笑う少女の笑みと少女の名前はまさに思い出の女の子そのままだった。

「!」




「生きて、いたんだな」

「はぁ、勝手に殺さないでくれる?大体いなくなったのはそっちでしょうが。

一言ぐらい声を掛けてくれても良かったと思うんだけどー?」

「あ、ああ。そうだな。悪かった」

忙しいとか何とか理由を付けて会いに行かなかった。

怖かったのだ。これ以上誰かが消えてしまうことが怖かった。確かめなければもっと後悔することになるのに。

「何にせよ良かったわね。こうして三人再会出来たわけだし」

「三人?……!晴彦もいるのか?」

「ゴボゴボボ」

いや、何をしてるんだ?

「ああ。晴彦はね。悪い魔女に捕まってこんな声にされてしまったの」

「ゴ、その例えはムチャ……、クチャに、ゴボ、正し、いが、犯人はお前だ」

「晴彦!晴彦なのか!良かった!よく無事で!」

「あらー。もう解いちゃったの。つまんない」

「ゼー。アクトも久しぶりだな。なんだかあの日がつい昨日みたいだ」

「……ああ。そうだな。悪かったな。連絡もせずに」

「ま、終わったことはよしとするわ」

「すまん」

「ところで、この学校ってレベルどうなの?」

「レベルか。今のところ何とも言えないけどこのクラスに限れば大した奴はいない。授業はまあ微妙。

あと、色々きな臭いことが多いな」

「ふーん。つつき甲斐がありそうじゃない。って早苗さんが困ってるわね。えーっと私たちは幼馴染みっていうかね……」

凄い嬉しそうなサキの笑い。多分、何か陰謀を企ててる人がいればサキを入学させたことを大いに後悔することになる。

コイツの行動力は半端ないのだ。




「なあ、アクト」

「ん?なんだ晴彦」

「見ぃーつけた」

それは遠い日の遊戯の続き。こうして時が動き出す。未来に向けて、ゆっくりと。

さて、これで役者が出揃いました。

ぶっちゃけ、この二人は構想のときと大分キャラが変わってしまったんです。

ストーリーも二人というかサキに引っ張られ大分明るくなると思います。

序盤のころはシリアス一辺倒で行こうと思ってたのでバランスとるために折をみて改稿しようと思います。


あと、感想など入れてくださると嬉しいです。

評価なしの一言だけとかでも構いません。


それでは

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