帰ってきた悪女
とある学園の学園長室。
50代前半ほどの白髪がちらほら見えるが後ろに髪をなでつけておりきちっとした印象の男、もといこの学園の学園長とさらさらの黒髪を胸元まで伸ばし肌は白く透明感のある17歳くらいの少女が話していた。
「久しぶりだな、結衣子。」
「ええ。叔父様。」
黙っていれば、気弱そうでおとなしそうな印象の彼女だが、実際口を開くと堂々と凛とした印象に変わる。
「留学から帰ってきたばかりだろう。もう少し後から学園に戻っても良かったんだぞ?」
「いいえ、叔父様。なるべく早く戻ってきたかったんです。最後の一年ですし。
・・・精一杯楽しみたいんですの。」
「・・・そうか。ああそうだ。クラスのことだがな、本当に彼のいるクラスで
良いのか?今ならまだ変えてやることも・・・」
「そのままで結構ですわ。」
彼女はきっぱりと断った。
「しかし・・・」
彼女の叔父、もといこの学園の学園長は納得いっていないようだ。
「叔父様。心配してくださっているのはわかります。
ですが、もう彼のことは気にはしていません。・・・たとえ元婚約者でも。
それに安心なさってください。彼に復讐するつもりなんてありませんから。」
彼女は穏やかな表情でそう言った。
「・・・そうか。そこまで言うのなら、私からはもう何も言わない。
ただ無理はするな。」
「お気遣いありがとうございます。それでは・・・」
コンコン
誰かが学園長室に来たようだ。
「学園長ー、お呼びでしょうか。」
扉越しに若い男の声。
「おお、来たか。入りなさい。」
学園長は笑顔で彼を迎えた。
「失礼しまーす。」
長身のやはりそれほど歳ではないがすこしだるそうな面倒くさそうな顔をした男が
入ってくる。
「こちら神崎先生だ。見た目はこうだが、信頼できる男だよ。結衣子の担任だよ。神崎くん。こちらが峰結衣子だ。君のクラスに今日から入る。
私の孫だ、くれぐれもよろしく頼むよ。」
「それ褒めてんのー?わかってるって。あー。峰だっけ?これからよろしくな。」
ゆっくりとこちらを向き挨拶をする男。
「はい、よろしくお願いいたしますわ。」
そんな彼に笑顔でお辞儀をし、挨拶を返す。
「んじゃ、ついて着て。クラスに案内すっから。」
「叔父様。それでは行ってまいります。」
最後に叔父にも声を掛け出て行く。
「ああ。行ってらっしゃい。」
ばたん
扉が閉まり学園長室には彼一人。
「・・・復讐か。」
そうぼそりとつぶやいた彼の表情は、とても苦しそうだった。