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ザイールとチェルシーを倒した8班は

続いて不気味な雰囲気を漂わせる、

城門付近へと向かった。

『誰も居ないっすね…。』

エレアが呟くのも無理はない。

全班が出動し、敵もそこそこのはず。

なのにどこからも戦闘の音は聞こえず、

辺りは静まり返っている。

『まさか…もうやられたんすかね…。』

不安な赴きのテクノがみんなに問いかける。

『まさか…そりゃないだろ。』

『そうだよな。』

とは言ったものの、テクノは、まったく納得しておらず答えたラテンも本気で全滅してないとは思ってはいなかった。それどころかコアを含めた8班全員が全滅したのかもしれないと思っていた。そんな矢先、

前方からなにやら怪しげな光がこちらへ向かってくる。その光は恐るべき速さで8班の真ん中を貫いた。ほんとに一瞬の出来事だった。

悲鳴をあげる間もなく、ラテンの体からは血がとどまることなく飛び散り、ラテンはその場に倒れこんだ。

『ラテーーーーーーーン!!!!!!』

怒りをあらわにしたテクノが叫ぶ。

その叫びをあざ笑うかのように前方の光は

どこかへと消え去った。

なにもできなかった。

いや、あれはたとえ分かっていたとしても

恐らく防ぐことはできなかっただろう。

テクノだけではなく8班全員が、悲しみ、いや、悔しさの嵐に巻き込まれていた。

『ラテン…ラテン!!! ラテーン!!』

その声に答える気力など、ラテンには残ってなかった。ラテンの顔はみるみる青白く、冷たくなっていく。テクノはラテンを助けたかった。

自分の体を引き裂いて、血を分け与えたりしたが

そんなものはまるで意味をもたず、ついにラテンの命はあともう少しで途絶えるとこまできていた

『ラテン大丈夫か!?』

『あ…ぁ…あ…』

力ない声がテクノの鼓膜を優しく揺らす。

『死ぬな…死ぬな…死なないでくれ…!!!』

テクノは必死でラテンに声を掛けた。

その声はラテンの体に届くことなく、

息を引き取った。

『ちょっと待てよ。おいラテン…!!

返事しろよ!!…俺の名前を呼んでくれよ!!呼べよー!!!……バカヤロー……。』

テクノの顔は涙でびしょ濡れになっていた。

回りの三人は、テクノの苦しみをただただ見守るだけでなにもできなかった。

そしてまたテクノも悔しかった。

自分を救ってくれた友を、自分で助けれなかったからに他ない。テクノは心の中でふとあのときの言葉がよぎった。

『世界で1人だけでも自分を信じてくれる人が居れば前へ進めるよ。』

テクノはこの言葉の意味を今本当に理解した気がした。

『俺は信じてくれる人を失った。ラテン…お前だよ…。信じてくれる人が居れば前へ進める…。その通りだな…信じてくれる人を失った今はもう…進める気がしねえよ…。』

テクノは逃げていた。大切な友を失った痛みを、前に進まないことで、避けようとしてた。

それを分かっていたとしても、コアはあえて優しい言葉はかけなかった。

『ラテンは死んだ。もう帰ってはこねえ。進む気がないならここで一緒に心中しな。』

かけた言葉はあまりにひどく、とても悲しく、

だがその中にも、優しさで溢れていた。

『ラテンの言葉の本当の意味を間違えるな!!

前に進まない…笑わせるなよ。そんなお前をみてラテンが喜ぶと思うか!? それは絶対に違う!

あいつの言葉の意味は前を進むには信じてくれる仲間がいるということではなく、信じてくれる仲間は前に進むうちに必ずできるって訳だ!!

苦しいのは分かる。辛いよな…。でも、辛いという文字も一本加えれば幸せという文字になる。辛いなら一歩前に踏み出そう。そしたら幸せが待ってるはずだからな。お前は強いよ。』

テクノは泣き止んでいた。ラテンの言葉の本当の意味を胸に刻み、前に進む準備はできていた。

『ラテン…待ってろよ。お前がいる場所へ、お前を殺したやつをすぐに地獄に連れてってやるからよ!!』

そして先陣をきって歩きだしたテクノの心のつぶやきを、エレアは確かに聞いた。

『ありがとう』と。

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