1分間~悲しみの背景~
4人が戦い終わったころ、
テクノとザイールの1分間のデスゲーム
が始まろうとしていた。
『助けないんですか!?』
『バカヤロー。剣士ってのはなかなかデリカシーでな。自分の戦いにチャチャ入れられたら頭に来るのさ。まあ剣士に限らず、ここフォルランの戦士は誰もがそう思っているだろうがな。』
ラテンの説明はエレアに有無も言わせない
完璧な内容であった。
『(おっと、コアさん達は終わったようだな…)
おいザイール…。準備はできたかよ!?』
ザイールはゆっくりと答える。
『とっくの前からな…。』
なぜかその声は震えていた。この震えはテクノに対する恐怖かとテクノも最初は思っていた。
だが違っていた。
テクノが違うと確信を抱いたのは1分間のデスゲームが始まる直前のザイールの言葉だった。
『チェルシーは…幼いころからの幼馴染みでいつも一緒でひとりだった俺を救ってくれた…大切なともだちだった。お前らは俺の…大切なともだちの1人をクズのようにころしやがった。許さねえ…許さねえー!!!』
その咆哮と同時にテクノも構える。だがなぜだろう…。剣を持つことができない。
おそらく答えはテクノの心情にあった。
幼馴染みでいつも一緒でひとりだった俺を救ってくれた…そう、この部分の言葉が、テクノにとってもとても共感できたのだ。ザイールにとってチェルシーだったように、テクノにとっては救ってくれたともだちが、ラテンに当てはまったのだ。テクノは昔、両親を戦乱で失いテクノはひとりぼっちになっていた。誰からも叱られることもなけりゃ、誰からも優しくもされず、誰からも認識されてなど居なかった。
そんなもとに現れたのが、ラテンだった。
彼はまだ幼いテクノと同い年でも上を向いていた。彼はテクノにこう言った。
『世界で1人だけでも自分を信じてくれる人が居れば、きっと前に進めるよ。』
その目には大きな雫が溢れ出していた。
そう、ラテンも同じように両親を失ったのだ。
その涙を見たとき、テクノは思った。
俺でもラテンとならもう一度踏み出せる。
生きて、この荒れた世を直すことができる。
ラテンから差し出された手を握った瞬間、
テクノに初めて、居場所ができた……。
そんな昔の出来事がテクノの動きを鈍らせた。
刀が思うように振れない。相手の動きが読めない。その一方、ザイールも怒りで我を忘れ、
本来の動きを発揮できていなかった。
この1分間のデスゲームの背景に映る、
悲しい2者の出来事は外で見守るだけの
エレア達にも見えていた。
エレアがもうすぐ1分たつことを知らせようと
横を向いたとき、ラテンの目にはあの日と同じ
悲しみの涙が溢れていた。
そうして1分間がたち、ザイールが意識を失うように倒れた…。その倒れた姿は剣士にしか分からない、見えない、剣士の誇りが見えた。