依頼1-12
「このメモは、少なくとも二ヶ月以上前に書かれた可能性があるンですよ」
大羽刑事がメモの入った袋を振りながら言った。
「ところで青波さんは、このメモが遺書ならば、誰に宛てられたものと考えます?」
「それはやはり沙緒さんかと……」
オレは城村が残した文章を見ながら答えた。
「ですよね。沙緒さんの現状を知っている人達ならばそう答えるでしょうね」
オレは大羽刑事の言葉に衝撃を受けた。沙緒の現状を知らない人間からすれば、このメモが沙緒のことを気に病んで書かれたものかどうかわからないかもしれないし、それ以前に誰に宛てられたものか特定できる者はいないだろう。
オレは大羽刑事の言葉を思い出す――。
――青波さんがこの一家の事情をある程度知っているからですよ。
「気づいたようですね。この文章が沙緒さんに残したメッセージだと考える人は、沙緒さんの現状を知っている人たちに限られるンです。もっと言えば、この文章を遺書と捉える人たちもです」
「じゃァ、それは……」
「私は遺書には見えませんでした。恐らくは書置きだと考えました。」
「書置き!?」
「ええ、そうです。城村さんの奥さんによると、沙緒さんが『ひきこもり』状態になったのは三ヶ月ほど前だったそうです。ただ、理由は未だにわからないと仰っていましたがね……。それはともかくとして、城村さんがこのメモを記したのが二ヶ月以上前だったことを考えると、沙緒さんが『ひきこもり』を始めた頃に、城村さんが親としてなんらかの行動を起こしたことは想像に難くないでしょう。その過程でこのメモが使われたのではないかと私は考えています」
オレにとって大羽刑事の言葉は説得力のあるものだった。しかし、だとするならば――。
「ええ、城村さんの死は自殺ではないと思います」
大羽刑事はあっさりと言った。
「このメモが遺書と読み取れる者が、自殺に見せかけるために再利用したンじゃないですかね。そこで青波さんにひとつ伺いたいことがあるンですが……」