依頼1-11
「ちょっと外へ出ませんか?」
大羽刑事はそう言って微笑んだ。
オレは言われるがままに大羽刑事の後に続いた。
外へ出るまでの間、城村の残した文字を何度も復唱した。
もっと話をするべきだった
すまない
許してくれ
遺書と言われればそうとれないこともない。しかし、どこか違和感があった。そもそも、城村が自殺するとは思えなかった。オレに依頼するくらいだから、沙緒のことを気に病んでいたのは間違いないだろう。
だが、それで死を選択するだろうか?
沙緒はまだ若い。将来を悲観するには早過ぎる。それよりも沙緒が立ち直ることを期待するのが親というものだろう。
現にオレは、城村がオレの報告を心待ちにしていると思っていたのだ。オレの話を聞かずして死を選んでは、オレに依頼した説明がつかない。
「いろいろとお考えになられたようですね」
オレの心を見透かしたように大羽刑事が言った。どうやらオレを外に誘い出したのは、オレに考える時間を与えるためだったようだ。
オレはまァ、と曖昧な返事をした。
「青波さんはこれが遺書だと思いますか?」
大羽刑事が再びメモをオレに翳した。
「見ようによっては……」
「なるほど。逆に言えば、違うようにも見えるということですね。では、どこに違和感を覚えます?」
「考えたンですが、そこまでは……」
オレは正直に答えた。
「それは青波さんがこの一家の事情をある程度知っているからですよ」
オレには大羽刑事の言葉が理解できなかった。それを予測したかのように、大羽刑事はわからなくても結構です、と話を続けた。
「それよりおもしろい話をしましょう。この遺書らしきメモは、城村さんが普段愛用していたと思われる手帳から切りとられたものでした。ですが不思議なことに、この切りとったページ以降のページにも文字が記されていたンです。その中には、日付入りのメモ書きがありましてね。その日付が、今日より前のものなンです」