依頼4-4
ぴーちゃんの捜索は困難を極めた。
ゴミに埋め尽くされた住居内、敷地内と懸命に探したがなかなかみつからなかった。
「ぴーちゃん、どこ? どこなの?」
タキは小さなカラダで何度もゴミの山を登った。だが、ゴミの山が崩れて滑り落ち、露出した肌に何箇所も擦り傷を創った。
「ぴーちゃん、ぴーちゃん……」
タキは何かに取り憑かれたように休むことなく探している。そんなタキの姿を見ていると、気の毒すぎてなんとか見つけてやりたいと思うのだが、なかなか発見には至らなかった。
「くッそォ~!」
縁側付近で足元のゴミを蹴り上げる。すると、どこに潜んでいたのか再び猫がゴミの隙間から飛び出しオレを驚かせた。
猫は俊敏な動きでゴミの山を駆け上がった。そして、身の安全を確信する距離を保つとオレに振り返った。
小馬鹿にされたようで腹が立った。だが、猫の背後に見えるものに、オレの視線は釘付けになった。
ベランダ――。
盲点だったかもしれない――と、オレはゴミが積まれたベランダを見て思った。
部屋の位置関係からすると、ベランダはタキの寝室とガラス戸を隔てて繋がっている。しかし、ガラス戸はゴミに埋もれて開閉できる状態になかった。だからこそ、猫がベランダに出ることなど考えもせずに、部屋の内側だけを探した。
しかし、猫なら外部からゴミの山を利用してベランダにあがることができる。昼寝しているタキからぴーちゃんをこっそり奪った猫は、階段を下り、玄関を抜けて外に出て、ゴミの山を登りベランダへと向かったのかもしれない――。
わずかだが可能性はある。オレは想像と逆の道を辿り、タキの寝室に向かった。寝室に入ると、窓際のゴミを全て取っ払い、ガラス戸を開閉可能な状態にした。そして、わずかに興奮しながらガラス戸越しにベランダを一望した。
「あッ、あッたァ~!」
ベランダの左端、ゴミに埋もれるようにしてぴーちゃんは横たわっていた。オレは慌てて鍵を開け、ベランダに出て、ぴーちゃんを拾い上げた。
「タキさん、あったぞォ~!」
オレはぴーちゃんを空に向かって突き上げた。