依頼4-3
もしかしたら、もうみつかったかもしれない――。
オレは淡い期待を胸にタキの家を訪れた。
それにしても凄い有様だった。
塵も積もれば山となる――。
まさに言葉通りのものが眼前に広がっていた。
ブロック塀が隠れるほど積み上げられたゴミ袋の山。周囲にはかなり異臭が立ち込めている。かろうじて門の所だけは開けているが、庭は全く見えない。玄関口まではさすがにゴミがよけてあるが、およそ人が暮らせるような状況ではなかった。
「タキさァ~~ん」
呼び鈴、インターホンの類が見当たらなかったのでオレは開き戸を叩いた。
「遅いじゃないかッ!」
突然、左手のゴミの山が崩れ、薄汚れたタキの顔が覘いた。いきなりの出現にオレは驚いて一、二歩後退った。
「タキさん驚かせないでよ」
オレが苦笑すると、タキは汚れたタオルで額の汗を拭った。
「早くぴーちゃん探せ」
タキはオレの顔も見ずに、右手のゴミの山へ足を踏み入れた。折れ曲がったフライパンがゴミの山から滑り落ち、オレの足元に転がった。
オレの期待も虚しく、まだみつかっていないようだ。どうやら予定通りこのゴミと格闘しなければならないようだ。
オレは用意してきたマスクをはめる。ばあさんの話によると、ぴーちゃんというのは瞬きする赤ちゃんの人形らしい。果たしてみつけられるだろうか。
どこから手をつけようかと辺りを窺うと、門の向こう側からこちらをじッっと見ている女性と目が合った。女性はすぐに視線をそらし、その場を去った。
ただの野次馬か――。
有名なゴミ屋敷だ。興味本位で見物に訪れる人間もいるだろう。オレはさほど気にも留めず軍手をして気合を入れた。
すると、どこからともなく、「ニャ~」と猫の鳴き声が響いた。
オレには探せるものなら探してみろ、と言っているように聞こえた。