依頼3-2
「まったく今時の女はなにを考えてるンだろうね」
ばあさんがはたきを乱暴に振りながら悪態をついた。
「アンタもアンタだよ。なんでもかんでも簡単に請け負って」
オレは黙ったまま入荷した駄菓子を並べる。ばあさんが女に厳しいのはいつものことだ。
「アンタ知らないのかい? 事件の陰に女あり――ってね。面倒なことに巻き込まれないように気をつけなよ」
「ばあさん、飛躍し過ぎだよ。サスペンスドラマでもあるまいし。飯を食いにいくだけなンだから事件なんて起きやしないの」
「そういう油断が命取りになるの」
オレの鼻先にはたきを近づけ強い口調で言った。
「はい、はい十分注意します」
「わかってるふうには見えないわね」
ばあさんは鼻息を荒くして、はたきを振り回した。
午後六時半――。
ばあさんの心配をよそに、オレは軽い気持ちで間山泉の家に向かった。彼女の話によれば、マンションに一人住まいだということだ。
ただ、そのマンションが分譲マンションであることがばあさんの懸念材料のひとつとなっていた。
しかし、オレにしてみればばあさんの考えは古いと言わざるを得ない。今時独り逞しく生きる女性など珍しくない。
それだけで彼女がドラマや小説のように、オレを陥れようと策略しているとは到底思えなかった。もし彼女への懸念をひとつあげるとするなら、せいぜいその強さを感じられなかったというぐらいだ。
約束の十分前にドアの前に立った。ローマ字で『MAYAMA』と刻まれた金属プレートにを目にしてからインターホンを押す。
わずかに心音が高鳴る。
スピーカーから彼女の声が響き、オレが名前を告げるとまもなくして彼女が扉を開けた。
「わざわざすみません……」
「仕事ですから……」
扉から出てきた彼女を見てオレは驚いた。
きっちりとメイクを施した彼女は、今朝見た彼女とは別人のようだった。
どうぞ、と部屋に招かれたとき、どこからともなく面倒なことに巻き込まれないように気をつけなよ、というばあさんの声が聞こえてきた。




