依頼1-7
退屈凌ぎに――と考えたのは沙緒も同じだったようだ。
話を聞き終えた空腹を満たしたネズミは、さっさと巣へ帰っていった。
少し拍子抜けした感もあったが、オレは今度こそ、とソファーに身を沈めた。夜更かしの努力が実って、眠りに落ちるまでそれほど時間は必要としなかった。
眠りからオレを呼び戻したのはインターホンだった。
腕時計に目をやると十二時半過ぎ。けっこう眠った。
オレが応対するべきか考える間もなく、沙緒が勢いよく階段を下りてきた。
漏れ聞こえる会話で、来訪者は宅配便業者だとわかった。
オレはその場から動かず、再度目を閉じる。
だが、再び夢の住人になるのを沙緒によって妨げられた。青波さん、とひきこもりらしからぬ明るい声でキッチンから呼びかけられた。
「お昼ごはんはどうするの?」
「お気遣いなく」
オレは横になったまま答える。もともと昼飯は抜くつもりだった。
沙緒は部屋に戻らずリビングを覘いた。
荷物を小脇に抱えている。荷物には有名なネット販売業者の文字。本かCDかDVDでも注文したのだろう。一日中家にいるにはそれなりに時間を潰すものがいるようだ。
「留守番してるから食べに行ってもいいわよ」
沙緒の冗談に頬が緩んだ。まったく妙な留守番になったものだ。
「五時までだったわよねェ」
オレが起き上がりながらそうだよ、と返事をすると、沙緒はまだまだ先は長いから作ってあげる、と微笑んだ。
断る理由はなにもない。
「じゃァ、頼もうかな」
オレがそう言うと、沙緒はけっこう上手なンだから、と早速冷蔵庫を漁りだした。
オレにはその姿が、ある女性と重なって見えた。