依頼1-1
客か?
駄菓子屋にはそぐわないスーツ姿の中年男性が店を覘いた。
「『なんでも屋』さんというのはこちらでよろしいのでしょうか?」
店内にいるばあさんとオレの顔を見比べながら尋ねる。
「はい、はい。ようこそいらっしゃいませ」
経営者のオレより先にばあさんが答えた。
男性は安堵と困惑の入り混じった表情を浮かべる。
みんな同じだ。
オレを訪ねてくる客は一様に同じ顔をする。
無理もない。
ここはどこからどう見ても、子供達の憩いの場『駄菓子屋』なのだ。
『なんでもや屋』である根拠は、電話帳に記載された電話番号と住所と、表によく見ないと見過ごすような小さな看板が掲げてあるだけなのだ。
オレは冷蔵庫から売り物のウーロン茶缶を取り出しどうぞ、と男性を店の奥へと招き入れた。
ばあさんがしっかりな、とサインを送った。
『なんでもや屋』の事務所は二階にある。
と、いってもばあさんから間借りしている畳敷きの八畳間だ。
食卓にも事務机にもなる万能座卓が部屋の真ん中に置いてあるだけの簡素な部屋。
オレが寝起きしている壁ひとつ隔てた同じ八畳間がゴミ溜めになっているなど知る由もない。
オレが気楽にしてください、と座布団とウーロン茶を勧めると男性は落ちつかない様子で腰をおろした。
「犬の散歩かなんかですか?」
オレは押入れからレターケースを取り出しながら尋ねる。休日の犬の散歩の依頼は少ない仕事依頼のなかでも割と多い。
男性はいえ、と口ごもる。
オレが『青波悠斗』と記載された名刺を手渡しながら、では? と口にすると、男性は名刺を受け取りながら、
「実は……引き受けて頂けるものか……」
と、伏し目がちに語尾を濁した。
「なんですか? 仰ってみてください。法に抵触しない範囲でなら協力しますよ」
営業スマイルをつくり、オレはレターケースから依頼書を取り出す。
男性ははァと恐縮しながら白髪混じりの頭髪に手をやり、お願いしたいのは留守番なんです、と言ってウーロン茶缶を開けた。




