ギルド内でのいつものやりとり
僕の街、聖都アルセリオンにも
当然だけど冒険者ギルドがある。
市場通りの奥。
石造りの大きな建物で、昼でも夜でも冒険者が集まっている。
魔物討伐。
護衛。
素材採集。
そういう仕事は、ほとんど全部ここに来る。
僕も一応、登録している。
……Eランクだけど。
扉を押すと、いつもの喧騒が広がる。
「お、リオじゃん」
「また依頼か?」
声をかけてくる人は多い。
この街では顔が知られているからだ。
でも――
パーティの誘いは、ほとんどない。
受付の女性が手を振った。
「リオ、こんにちは」
彼女の名前は レイナ。
このギルドの受付だ。
「こんにちは、レイナさん」
僕がカウンターに近づくと、
レイナさんは掲示板を見て小さく笑った。
「今日も貼ってあるね」
掲示板には紙が一枚。
パーティメンバー募集
Eランク リオ
……でもその紙の前には、誰もいない。
僕は肩をすくめる。
「まあ、いつものことです」
レイナさんは少し申し訳なさそうな顔をする。
「リオ、人気はあるのにね」
「街の人には、ですけどね」
レイナさんは少し声を落とした。
「やっぱり、スキルのせい?」
僕は頷く。
「僕の初期スキルは
《夢記録》ですから」
人は生まれたとき、
天核から一つの初期スキルを授かる。
それが冒険者の運命を決める。
剣術強化。
魔力増幅。
身体能力強化。
強いスキルを持つ人は
すぐに上へ上がる。
でも僕のスキルは――
「夢を覚えていられる能力、だっけ」
レイナさんが言う。
「はい」
眠っているときに見た夢を
そのまま記録できる。
それだけ。
戦闘には、まったく役に立たない。
だからパーティを組もうとすると
だいたいこうなる。
「戦えない奴はいらない」
「荷物持ちなら別にいいけど」
まあ、仕方ない。
僕は掲示板を見る。
「じゃあ今日は一人でできる依頼を」
レイナさんが紙を指さす。
「これならどう?」
Eランク依頼
南の森 青葉草採集
「報酬は銀貨三枚」
僕は頷いた。
「それ受けます」
レイナさんが書類をまとめる。
「はい、受理しました」
依頼書を渡される。
「そういえばリオ」
「はい?」
「最近、噂になってるよ」
僕は首を傾げた。
「何がです?」
レイナさんは少し笑う。
「あなた、二次スキル出たんでしょ」
僕は少しだけ目を伏せる。
「ああ……」
この世界では、ごく稀に
二つ目のスキルが目覚めることがある。
それを 二次スキル と呼ぶ。
僕の場合は
《停止時能力向上》
動きを止めている間、
身体能力や感覚がゆっくり強くなっていく能力。
……だけど。
「それも、戦闘向きじゃないですよ」
僕は笑う。
「じっとしてないと強くならないですから」
レイナさんも苦笑する。
「確かに冒険者向きじゃないね」
「ですよね」
だから僕は今日も
派手な依頼じゃなくて
薬草採集を選ぶ。
でも――
僕はまだ知らない。
このスキルが
どれだけおかしな能力なのかを。




