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外れスキルの【停止時能力アップ】実は世界最強でした  作者: 滝本りお


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76/119

王城、謁見の間。

重い警鐘が、外から何度も響いていた。


ゴォォォン――


ゴォォォン――


城の外では兵士たちが怒号を飛ばし、伝令が走り回り、王都全体が明らかに非常事態に包まれている。


だが。


謁見の間の空気だけは、妙に落ち着いていた。


王座の前で、鎧姿の兵が膝をつき、必死の形相で叫ぶ。


「ご報告いたします!」


「王都全周、外縁部にて大規模魔獣群を確認!」


「空も地も埋め尽くされています!」


「主力は天階Ⅲ級、確認数1万を突破!」


「さらに群れの中に、知能を有する天階Ⅳ級個体が複数――」


その言葉を聞いても、貴族たちの顔色は変わらない。


むしろ。


1人が鼻で笑った。


「何が天階Ⅴだ。」


別の貴族も、肩を揺らして笑う。


「大袈裟なのだ。」


「警戒レベルⅤなど、そんなもの本当に使う日が来るわけがなかろう。」


王族の1人も、わずかに口元を緩める。


「騒ぎすぎだ。」


「せいぜいⅠかⅡだろう。」


さらに別の男が笑った。


「そうだ。」


「レベルⅤとは、言葉だけが歩きすぎている。」


「この国に、あの方々がおられるというのに。」


その瞬間。


謁見の間の空気に、妙なズレが生まれる。


外の兵士たちは青ざめ、今にも崩れそうな顔をしている。


だが中の貴族たちは、余裕を崩さない。


それは異様だった。


一方では、終わりを見ている。


もう一方では、何も起きていない顔をしている。


その差を作っている理由は、たった1つ。


城の中に、アストラ・エクリプスがいる。


それを知っている者たちは、恐怖より先に“安心”を抱いていた。


だが。


王だけは笑っていなかった。


王座に座ったまま、静かに彼らを見下ろしている。


やがて、低く口を開いた。


「……笑うな。」


その一言で、謁見の間が静まり返る。


先ほどまで笑っていた貴族たちが、ぴたりと口を閉じる。


王は立ち上がらない。


ただ、その目だけが冷たかった。


「お前たちが今、息をしていられるのは。」


「この国がまだ滅んでおらぬのは。」


「この城に、あの方々がおられるからだ。」


沈黙。


誰も反論できない。


王はゆっくりと続ける。


「敬え。」


「ひれ伏せ。」


「感謝しろ。」


「当たり前と思うな。」


その声は静かだ。


だが、逆らえる者はいない。


「お前たちは強くない。」


「お前たちでは、脅威から国民を救えぬ。」


「救えるのは、あの方々だけだ。」


貴族たちの顔から笑みが消える。


1人が慌てて膝をつく。


「……し、失礼を。」


別の1人も続く。


「我らが浅はかでした……」


王族の1人も、ようやく頭を下げる。


「申し訳ございません。」


やがて、その場にいた全員が、静かに跪いた。


王は彼らを見下ろしたまま言う。


「分かったならよい。」


「すぐに報告せよ。」


「アストラ・エクリプスへ。」


「一刻も早く、な。」


「はっ!!」


伝令役の騎士が飛び出していく。


その足音が遠ざかるのを聞きながら、王はようやく小さく息を吐いた。


そして、誰にも聞こえぬほどの小さな声で呟く。


「……どうか。」


「今日も、この国を。」


その続きを、口にする者はいなかった。

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