世界最強の騎士
北方王国の王城。
巨大な石の玉座の間。
王と、数十人の貴族、騎士団長たちが並んでいた。
その中央に、一人の男が立っている。
リオだ。
黒い外套。
腰には剣。
そして背中には、長い年月の重みがあった。
王がゆっくり口を開く。
「リオ。」
「お前が北方戦線を終わらせたと聞いた。」
リオは静かに答える。
「はい。」
貴族の一人が言う。
「魔族軍三万を撃退。」
「しかも単騎で前線を突破したとか。」
別の騎士が呟く。
「信じられん……」
王が言う。
「報告ではこうだ。」
「敵の魔導将軍を討ち取った。」
「それにより戦線が崩壊。」
王は少し笑う。
「本当か?」
リオは少し困った顔をする。
「……数は覚えていません。」
玉座の間がざわつく。
貴族が叫ぶ。
「三万を覚えていないだと!?」
騎士団長が言う。
「陛下。」
「この男は、もう“人間の基準”で測れません。」
王は深く息を吐く。
そして言った。
「リオ。」
「今日からお前を」
「王国最高騎士とする。」
騎士たちがどよめく。
「最高騎士……!」
王が続ける。
「そして。」
「我が国の戦争は終わった。」
「だが世界はまだ荒れている。」
王はリオをまっすぐ見る。
「旅に出ろ。」
「世界を見てこい。」
リオは少しだけ驚く。
「……旅?」
王は笑う。
「お前はもう。」
「この国の枠には収まらん。」
玉座の間が静かになる。
リオはゆっくり頭を下げた。
「承知しました。」
数年後。
砂漠の国。
巨大な魔竜が空を覆う。
街が炎に包まれている。
兵士が叫ぶ。
「終わりだ!」
「逃げろ!」
その時。
空から何かが落ちてきた。
ドン。
砂煙。
その中心に立つ男。
剣を抜く。
リオだ。
魔竜が咆哮する。
炎を吐く。
だが。
次の瞬間。
閃光。
剣。
魔竜の首が落ちる。
兵士が呆然とする。
「……え?」
一人の子供が言う。
「だれ……?」
兵士が呟く。
「……あの剣。」
「まさか。」
老人が震える声で言う。
「世界最強の騎士……」
「リオだ。」
また数年。
海の王国。
巨大な海魔が港を襲う。
だが。
波の上に立つ男。
剣。
一閃。
海が割れる。
さらに数年。
南の帝国。
魔術師団が壊滅。
戦場に一人の騎士。
剣と魔術。
同時に発動。
敵軍が崩壊。
兵士が叫ぶ。
「伝説だ!」
「世界最強の騎士だ!」
その後の夜。
静かな屋敷。
書斎。
リオが椅子に座っている。
年齢は三十八。
落ち着いた顔。
若い頃とはまるで違う。
だが。
机の上には。
小さな光。
ノアが、ふわふわ浮いている。
昔と同じ。
何も変わらない。
リオが優しく指で触れる。
「ノア。」
ノアが嬉しそうに光る。
リオは微笑む。
「長かったな。」
ノアがぴこぴこ光る。
リオは窓の外を見る。
星空。
静かな夜。
リオは小さく呟く。
「……カイル。」
「ルーク。」
「ナーシャ。」
「みんな元気かな。」
そして、少し笑う。
「約束守れたかな。」
「そしてあいつらも、俺との約束守れたかな?
ノアがリオの肩に乗る。
暖かい光。
リオは目を閉じる。
その瞬間。
世界が少しだけ揺れた。




