第三階層の罠
地下という場所は、単に暗いだけではない。
空気が古い。魔力が沈殿している。長い年月、数えきれない戦いと死がここに染み込んでいる。第三階層は、その“沈殿した知性”が姿を持ったような場所だ。ここでは腕力よりも、注意力と頭脳が生き残りを決める。
第二階層の奥。
石の扉。
重い刻印。
リュメリアが魔力を流す。
ゴゴゴ……
扉が開く。
冷たい空気。
レオン
「第三階層。」
ガルヴァン
「罠の階層だ。」
ドレクス
「ここは戦う場所じゃない。」
リュメリア
「気を抜くと死ぬ。」
リオ
「罠……?」
一歩踏み出す。
石の通路。
第一階層とも第二階層とも違う。
床に細い線。
壁に刻印。
天井に穴。
リオ
「……。」
リュメリア
「止まって。」
リオが足を止める。
リュメリア
「ここは魔術罠の層。」
指で床を示す。
「その線。」
リオ
「はい。」
リュメリア
「踏むと爆発。」
リオ
「……!」
ガルヴァン
「新人。」
リオ
「はい!」
ガルヴァン
「真ん中歩け。」
リオ
「はい。」
一歩。
二歩。
静か。
だが
通路は長い。
そして
複雑。
床。
壁。
天井。
至る所に刻印。
リュメリア
「面倒ね。」
ドレクス
「壊せばいい。」
リュメリア
「連鎖爆発する。」
ドレクス
「なるほど。」
レオン
「慎重に行く。」
その時。
リオが立ち止まる。
リュメリア
「どうした。」
リオ
「この先。」
指差す。
「右の床。」
リュメリア
「?」
リュメリアが魔力を流す。
そして
目を細める。
「……。」
ガルヴァン
「どうだ。」
リュメリア
「罠。」
レオン
「見えたのか?」
リオ
「なんとなく。」
リュメリアが少し笑う。
「なんとなくで当てないで。」
リオ
「すみません。」
一行は進む。
さらに奥。
通路が分岐する。
三つ。
左。
中央。
右。
ドレクス
「どれだ。」
リュメリア
「全部罠。」
ガルヴァン
「は?」
リュメリア
「全部爆発系。」
レオン
「回避できるか。」
リュメリア
「時間がかかる。」
その時。
リオが床を見る。
少ししゃがむ。
石。
刻印。
そして
空気。
リオ
「……。」
カイゼル
「何を見ている。」
リオ
「真ん中。」
レオン
「理由は?」
リオ
「刻印の削れ方。」
皆が見る。
確かに
中央の床だけ
わずかに磨耗している。
リュメリア
「……。」
ガルヴァン
「誰か通った?」
ドレクス
「罠じゃない?」
リュメリア
「違う。」
少し驚く。
「正解。」
レオン
「通路だ。」
一行は中央を進む。
リュメリアが小さく言う。
「……直感?」
リオ
「多分。」
リュメリア
「多分で当てないで。」
だが
少し笑っている。
奥へ。
そして
通路の終わり。
巨大な扉。
レオン
「第三階層突破。」
ドレクス
「新人。」
リオ
「はい。」
ドレクス
「運がいいな。」
リオ
「そうかもしれません。」
カイゼルが言う。
「違う。」
全員が見る。
カイゼル
「勘だ。」
少し間。
「それも」
「異常な勘。」
リオ
「……?」
レオン
「次へ行く。」
扉が開く。
ゴゴゴ……
暗闇。
第四階層へ。
⸻
一行が去った後。
第三階層。
通路。
床の刻印。
魔力がわずかに揺れる。
まるで
誰かが
観察しているように。




