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現場の勘

冒険者ギルド

カザール支部。


昼。


掲示板の前では冒険者たちが騒いでいる。


「天階Ⅳだってよ!」


「嘘だろ!」


「町が消えるやつじゃねえか!」


奥の扉が閉まる。


会議室。


ギルドマスター

グラン・ベルド。


受付主任

ミレイナ・ルクシア。


机の上には地図。


西の森。


グランが椅子を引く。


「さて。」


腕を組む。


「面倒なことになった。」


ミレイナ

「天階Ⅳですね。」


グラン

「そうだ。」


ミレイナ

「血刃の魔神グラディオス。」


グラン

「確認されたのは昨日の昼。」


ミレイナ

「そして」


「現在は反応なし。」


グラン

「つまり」


ミレイナ

「消えました。」


沈黙。


グランが鼻で笑う。


「魔物が自然消滅するか?」


ミレイナ

「しません。」


グラン

「じゃあ何だ。」


ミレイナ

「倒された。」


グラン

「そういうことだ。」


グランは地図を指で叩く。


「問題はここだ。」


「戦闘痕跡が少ない。」


ミレイナ

「はい。」


グラン

「天階Ⅳだぞ?」


「普通なら森が半分消える。」


ミレイナ

「ですが」


「倒木も少ない。」


グラン

「つまり」


ミレイナ

「一撃決着。」


グランは椅子にもたれた。


「嫌な感じだな。」


ミレイナ

「嫌ですか?」


グラン

「ああ。」


「理由が分からない強さほど」


「怖いものはない。」


ミレイナが資料をめくる。


「最近の依頼報告です。」


グラン

「何かあるか。」


ミレイナ

「西の森。」


グラン

「同じ場所か。」


ミレイナ

「はい。」


「ネオスライム討伐未遂。」


グラン

「未遂?」


ミレイナ

「Cランクパーティが撤退しています。」


グラン

「珍しいな。」


ミレイナ

「理由は」


「スライムの変異体。」


グラン

「ネオスライムか。」


ミレイナ

「その場にいたのが」


紙を指す。


「Eランク冒険者。」


「リオ。」


グランが目を細める。


「またあいつか。」


ミレイナ

「覚えてましたか。」


グラン

「当然だ。」


「受付で毎回謝ってるやつだろ。」


ミレイナ

「依頼失敗が多いので。」


グラン

「だがな。」


ミレイナ

「?」


グラン

「あいつ」


「現場にはよくいる。」


ミレイナ

「偶然ですか?」


グラン

「この仕事やってると分かる。」


ミレイナ

「何がです?」


グランは机を指で叩く。


「現場の勘だ。」


「危険な場所には」


「必ず変な奴がいる。」


ミレイナ

「変な奴…」


グラン

「英雄か」


「死体か」


「そのどっちかだ。」


ミレイナが少し笑う。


「ひどい言い方ですね。」


グラン

「事実だ。」


ミレイナ

「では」


「リオは?」


グランは肩をすくめる。


「まだ分からん。」


窓の外を見る。


西の森。


グラン

「ただ一つ言える。」


ミレイナ

「なんです?」


グラン

「天階Ⅳを倒した奴がいる。」


ミレイナ

「はい。」


グラン

「そしてそいつは」


「この町の近くにいる。」


ミレイナ

「……」


グラン

「もしそいつが冒険者なら」


ミレイナ

「はい。」


グラン

「そのうち」


「ギルドに顔を出す。」


ミレイナ

「なぜです?」


グランが笑う。


「強い奴ほど」


「金が必要だからだ。」


ミレイナ

「現実的ですね。」


グラン

「ここは冒険者ギルドだ。」


「夢を見る場所じゃない。」



その頃。


遠くの塔。


暗い部屋。


水晶が光る。


観測者

オルディス・カナン。


ゆっくり目を開く。


「……反応。」


カイゼル

「どこだ。」


オルディスが水晶を見る。


川。


森。


少年。


老剣士。


オルディス

「芽がある。」


カイゼル

「名前は?」


水晶が光る。


オルディス

「Eランク冒険者。」


静かな声。


「リオ。

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