外れスキルの現実
◆ギルド休憩所
冒険者が昼食を取りながら、ワイワイ騒いでいる。
リオは隅っこでノートを広げ、スキルの研究をしていた。
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冒険者A「おい見ろよ、今日も“外れスキル坊主”が来てるぞ。」
冒険者B「あー……リオだろ?
《静止時能力向上》とかいう伝説級の外れスキル持ち。」
リオ「……聞こえてますけど。」
冒険者A「あぁ? 悪気はねぇって。
でも事実だろ?
止まってる間だけ能力上がって、動いた瞬間ゼロに戻るとか……
そりゃ戦闘じゃ使えねぇよ。」
リオ「……はい……分かってます……。」
冒険者C「でもあれだろ?寝返り打ってもリセットされるんだろ?」
リオ「はい……動いた扱いになるので……」
冒険者B「寝てても強くならねぇの? 地獄じゃねぇか!」
冒険者A「外れどころか罰ゲームスキルだろそれ!」
リオ「はは……よく言われます……」
ミナ「ちょっと! リオくんをいじめないの!」
冒険者A「いじめてねぇよ、事実を言ってんだよ。
だいたいよ、お前のそのスキルで何ができるんだ?」
リオ「……止まってる時に、
ほんの少しだけ筋力と魔力が上がります。
でも動くと全部消えます。」
冒険者B「意味ねぇぇぇ!!」
リオ「……ですよね……」
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◆夢の話になる
冒険者C「そういやお前、《夢記録》とかいうスキルもあったよな?」
リオ「えっ……なんで知ってるんですか?」
冒険者C「ギルドカードに載ってんだよ、“初期スキル”として。」
ミナ「リオくん、そんなスキルも持ってたの?」
リオ「あ、はい……
でもこれは本当に何の役にも立ちませんよ。
ただ……夢の内容を全部覚えてるだけで……」
冒険者A「夢!? 寝言かよ!」
冒険者B「ぶっ……! 寝てる時の夢を記録!?
マジで雑魚じゃねぇか!」
リオ「実用性ゼロです……。
『夢日記スキル』って言われて馬鹿にされてます。」
ミナ「でもリオくん、夢の内容って……」
リオ「はい。
“止まってる時の映像”だけが全部残るんです。
歩いたり走ったら記録されないので……
やっぱり役に立たないです。」
冒険者B「外れスキル二連続とか……逆に才能じゃね?」
冒険者A「“静止系の呪い”でも受けてんのか?」
リオ「……かもしれませんね……」
ミナ「リオくん、落ち込んでる?」
リオ「いえ……慣れてますから。」
ミナ「でも……
本当に無駄なスキルなの?」
リオ「…………
……自分でもよく分からないんです。
《夢記録》はただの夢の映像なのに、
ときどき“見たことない景色”を夢に見るんです。」
ミナ「見たことない景色?」
リオ「はい……
まるで深い霧の中で誰かが戦っているみたいな……
そんな夢を。」
ミナ「怖くないの?」
リオ「怖いというより……
『これ、なんなんだろう……』って。」




