グラディオスが消えるまで〜血刃、空を裂く
西の森。
黒い魔力がゆっくりと膨れ上がっている。
木々が軋む。
枝が折れる。
そして。
森の奥から姿を現す。
巨大な影。
黒い体。
背中から刃の骨。
腕の先は鋭い刃。
魔神。
血刃の魔神グラディオス。
その足が地面に触れる。
ドン
地面が沈む。
森の奥にいた鹿の群れが逃げる。
鳥が一斉に飛び立つ。
空が揺れる。
グラディオスはゆっくりと首を動かす。
目はない。
だが――見ている。
町の方向を。
⸻
城壁
城壁の上。
見張り兵が叫ぶ。
「確認!!」
「魔神視認!!」
「西の森から出現!!」
兵士の手が震える。
「天核測定継続!」
魔力計が光る。
赤い針。
震える。
「天階Ⅳ!」
隊長が叫ぶ。
「弓兵配置!」
「魔術部隊待機!」
鐘が鳴り続ける。
ゴォォォン
ゴォォォン
⸻
市場
商人が荷車を引く。
「早く!」
「中央区画へ!」
子供が泣く。
母親が抱き寄せる。
老人が呟く。
「こんな…」
「こんな町で…」
空気が重い。
恐怖は伝染する。
誰も魔神を見ていない。
それでも全員が理解している。
近い。
⸻
ギルド
ギルドマスターが地図を広げる。
「出現位置はここだ」
指が西の森を叩く。
Bランク剣士が言う。
「町までどれくらいだ」
「歩けば二十分」
空気が凍る。
Cランク冒険者が呟く。
「速かったら…」
ギルドマスターが答える。
「十分だ」
沈黙。
女戦士が剣を持つ。
「行くぞ」
別の男が言う。
「討伐隊、前へ」
その時。
魔力計が跳ねる。
ピィィィィィン
ギルドマスターが顔を上げる。
「何だ?」
魔術士が叫ぶ。
「魔力上昇!」
「グラディオスが動いた!」
⸻
西の森
グラディオスの腕がゆっくりと持ち上がる。
空気が歪む。
刃が生まれる。
空中に。
一本。
二本。
三本。
十本。
数十。
数百。
空に浮かぶ魔刃。
空が黒く染まる。
グラディオスの腕が下がる。
その瞬間。
魔刃が落ちる。
ドドドドドドドド
森が裂ける。
木が吹き飛ぶ。
地面がえぐれる。
巨大な刃の雨。
それが
町の方向へと向く。
⸻
川沿い
リオの目が見開く。
「……!」
空。
刃。
数百。
「なんだよ…」
声が震える。
「これ…」
「どうやって倒すんだ」
ヴァルは動かない。
ただ見ている。
グラディオスを。
魔神がこちらを向く。
刃の腕。
ゆっくり上がる。
リオが息を飲む。
「来る」
風が止まる。
川の水が揺れる。
リオの鼓動が速くなる。
「町が…」
ヴァルが言う。
静かに。
「だから言っただろう」
「見ていろ」
魔神が腕を振り下ろす。
刃が空を裂く。
その瞬間。
ヴァルが
木刀を握る。
まだ。
振らない。




