天階Ⅳ ― 血刃の魔神グラディオスが消えるまで
町の上空に警鐘が鳴り響く。
ゴォォォン
ゴォォォン
静かな朝が一瞬で壊れた。
市場の屋台が止まる。
パン屋の煙突から出ていた煙が風に流れる。
子供たちが立ち止まる。
兵士の叫び声が走る。
「警戒警報!!」
「魔人反応!!」
「町外れ西側!!」
人々がざわめく。
「魔人だって…?」
「うそだろ」
「この町で?」
商人が荷車を押して逃げる。
母親が子供を抱き寄せる。
兵士が剣を抜く。
「全員、中央区画へ退避!!」
「門を閉じろ!!」
鐘は止まらない。
ゴォォォン
ゴォォォン
城壁の上の見張り兵が叫ぶ。
「魔力反応拡大!!」
「天核測定――」
兵士の声が震える。
「天階Ⅳ!!」
町の空気が凍る。
老人が呟く。
「天階Ⅳ…」
誰かが言う。
「町が…壊れるぞ」
⸻
ギルド
冒険者ギルドの扉が乱暴に開く。
バンッ
兵士が駆け込む。
「緊急依頼!!」
ギルドマスターが立ち上がる。
「報告しろ」
兵士が叫ぶ。
「西の森に魔神確認!!」
「天核観測――」
「天階Ⅳ反応!!」
室内が静まり返る。
Cランク冒険者が呟く。
「天階Ⅳ…?」
Bランクの女戦士が顔をしかめる。
「この辺のダンジョンにそんな魔物はいないはずだ」
別の男が言う。
「どこから来た?」
ギルドマスターは低く言う。
「分からん」
「だが魔力反応は本物だ」
壁の魔力計が赤く光る。
針が震えている。
ギルドマスターが机を叩く。
ドン
「討伐隊を組む!」
「Bランク中心!」
「Cランク支援!」
冒険者たちが立ち上がる。
誰かが小さく呟く。
「……天階Ⅳ」
「最悪だ」
⸻
城
王都ではない。
だがこの町には領主がいる。
城の塔。
伝令が駆け込む。
「報告!!」
「西の森に魔神出現!!」
執政官が立ち上がる。
「天階は?」
伝令が答える。
「天核観測――」
「天階Ⅳです!!」
室内の空気が変わる。
執政官が言う。
「王都へ魔術通信」
「騎士団に出動命令」
一瞬迷い
そして言う。
「SSギルドにも連絡しろ」
書記官が震える手で魔術通信を準備する。
⸻
SSギルド
遠くの都市。
高い塔。
水晶が光る。
五人の影。
一人の魔術族が目を閉じている。
その瞳がゆっくり開く。
「魔神」
別の男が笑う。
「珍しいな」
魔術族が言う。
「天階Ⅳ」
「血刃の魔神グラディオス」
空気が止まる。
別の男が言う。
「グラディオス?」
「こんな場所に?」
魔術族が遠くを見る。
「違う」
「これは」
「誰かが誘導している」
一人が聞く。
「誰だ?」
魔術族は答えない。
ただ小さく言う。
「……面白い反応がある」
⸻
川沿い
その頃。
町外れの川。
リオとヴァル。
地面が揺れる。
ドン
森が裂ける。
巨大な影。
リオの息が止まる。
「……魔神」
それは人ではない。
四メートル近い黒い体。
背中から刃の骨が伸びている。
腕は刃。
顔は仮面のように滑らか。
口の代わりに
赤い魔力線が縦に裂けている。
リオの声が震える。
「……グラディオス」
ヴァルは静かだ。
魔神の魔力が空気を歪める。
風が逆流する。
川の水面が震える。
リオの手が汗で滑る。
「町が…」
ヴァルが言う。
「焦るな」
魔神が一歩踏み出す。
ドン
地面が沈む。
森の鳥が一斉に飛び立つ。
リオの心臓が速くなる。
「どうするんですか」
ヴァルは前を見る。
そして静かに言う。
「見ていろ」




