動けない剣士
洞穴の奥。
黒い魔物――洞穴ハンターが唸る。
「グルル……」
岩と同じ色の体。
目だけが光る。
リオは構えた。
剣は抜かない。
抜けない。
「……どうしよう」
ノアが肩で光る。
洞穴ハンターが低く体を沈める。
狩りの姿勢。
次の瞬間。
ドンッ!
突進。
速い。
リオの体が固まる。
怖い。
動けない。
だが――
ガンッ!!
衝突。
魔物の体が弾かれる。
岩壁にぶつかる。
リオは目を丸くする。
「また……?」
魔物が立ち上がる。
怒りの唸り声。
「グルルル……」
再び突進。
リオはまた固まる。
動けない。
ガンッ!!
また弾かれる。
魔物が転がる。
リオは混乱する。
「……え?」
「なんで?」
魔物が三度目の突進。
今度は角度を変える。
横から。
リオは反応できない。
また体が固まる。
ドンッ!!
弾かれる。
しかし――
今回は魔物が壁に頭をぶつけた。
ゴンッ
鈍い音。
魔物の体がぐらりと揺れる。
そしてそのまま
崩れ落ちた。
静寂。
リオは動かない。
しばらくして
恐る恐る近づく。
「……え?」
魔物は動かない。
完全に気絶している。
リオはぽかんとする。
「勝った……?」
ノアが小さく光る。
リオは頭をかく。
「いや」
「これ……」
苦笑する。
「たまたまだよね」
魔物の頭を見る。
岩壁にぶつけた衝撃で気絶している。
リオはため息をつく。
「先生に怒られるな」
その時。
洞穴の入口から声がする。
「その通りだ」
リオが振り向く。
ヴァル・グレンが立っていた。
静かに洞穴へ入ってくる。
リオは慌てる。
「せ、先生!」
ヴァルは倒れた魔物を見る。
しゃがむ。
軽く頭を触る。
「気絶しているだけだ」
リオ
「え?」
ヴァル
「お前の勝ちではない」
リオは苦笑する。
「ですよね」
ヴァルは立ち上がる。
洞穴を見回す。
そして言う。
「だが」
「運も実力のうち」
リオは少し嬉しそうにする。
しかしヴァルは続ける。
「だが覚えておけ」
「今の戦い方」
「三回も通用せん」
リオは頷く。
「ですよね」
ヴァルはリオを見る。
「お前は動けなかった」
「それだけだ」
リオ
「……はい」
ヴァルは少し笑う。
「だが」
「それでも生きている」
「それは才能だ」
リオはぽかんとする。
「え?」
ヴァルは洞穴の奥を見る。
「試験は終わりではない」
リオ
「え?」
ヴァル
「これは」
「入口だ」
洞穴の奥。
さらに深い暗闇。
ヴァルはゆっくり言う。
「ここから」
「剣を教えてやる」
リオの目が大きくなる。
「本当ですか!?」
ヴァルは頷く。
「だが」
「覚悟しろ」
そして静かに言う。
「わたしの剣は」
「優しくない」
洞穴の風が吹く。
少年の修行は
ここから始まる。




