戻ってきたCランク
川沿いの道の先。
黒い口のように、洞穴が開いていた。
岩肌にぽっかりと空いた穴。
中から冷たい風が吹き出している。
リオは立ち止まった。
「ここか……」
肩の上でノアが羽を震わせる。
リオは洞穴を見つめる。
「思ったより暗いな」
その時だった。
洞穴の奥から足音が聞こえた。
ザッ……
ザッ……
誰かが出てくる。
リオは身構える。
次の瞬間。
四人の冒険者が洞穴から姿を現した。
鎧は傷だらけ。
一人は肩を押さえ、
もう一人は腕から血を流している。
リオは思わず声を上げる。
「だ、大丈夫ですか!?」
先頭の男がリオを見る。
鋭い目。
胸には Cランクの紋章。
男は眉をひそめた。
「お前……」
「ここで何してる」
リオは少し戸惑う。
「えっと……」
「魔物を倒しに」
空気が止まる。
一人が吹き出した。
「は?」
別の男が言う。
「冗談だろ」
先頭の男が低く聞く。
「ランクは?」
リオは正直に答える。
「Eです」
沈黙。
そして四人が同時に言った。
「帰れ」
リオは固まる。
「え?」
男が洞穴を指差す。
「あの中は」
「Eランクの場所じゃない」
別の男が吐き捨てる。
「俺たちCランクが四人で挑んだ」
「それでもこのザマだ」
傷ついた腕を見せる。
「中にいるやつ」
「普通の魔物じゃない」
リオの背中に冷たい汗が流れる。
「……そんなに」
先頭の男が言う。
「少なくとも」
「お前は死ぬ」
リオは洞穴を見る。
暗い。
静かだ。
そして怖い。
足がわずかに震える。
その時だった。
パーティの一人がリオをじっと見た。
「あれ?」
男は目を細める。
「お前……」
「どっかで見た顔だな」
リオは首をかしげる。
「え?」
男は腕を組んで考える。
数秒。
そして指を鳴らした。
「思い出した」
少し笑う。
「ネオスライムだ」
他の三人が反応する。
「ネオスライム?」
「……あ!」
一人が声を上げる。
「こないだのやつ!?」
別の男も思い出す。
「ギルドで騒ぎになってたやつか」
最初の男がリオを指差す。
「そうだ」
「こいつだ」
「ネオスライムを真っ二つにしたEランク」
リオは慌てて手を振る。
「いやいや!」
「僕じゃないです!」
「固まってただけで!」
男は笑う。
「そんな偶然あるか」
別の男が肩をすくめる。
「でも確かに」
「スライムの死体は真っ二つだった」
先頭の男が腕を組む。
リオをじっと見る。
しばらく沈黙。
そして小さく言う。
「……妙な奴だな」
リオ
「え?」
男は洞穴を見る。
「だが」
「中にいるやつは別格だ」
ふとリオの肩を見る。
ノア。
小さな魔虫が静かに光っている。
男は少し目を細める。
「まあ」
「死ぬなよ」
リオは小さく頷く。
「……はい」
四人は歩き出す。
洞穴から離れていく。
去り際。
一人が振り返る。
「Eランク」
「もし生きて帰ったら」
「酒でも奢ってやる」
リオは苦笑する。
「生きてたらお願いします」
四人は去っていく。
リオは洞穴を見る。
風が吹く。
暗闇。
深い静けさ。
リオは小さく呟く。
「怖いな」
ノアが肩の上で光る。
リオは少し笑う。
「でも」
「試験だから」
一歩。
洞穴へ近づく。
その時。
遠くの木の影。
ヴァル・グレンが立っていた。
すべてを見ていた。
ヴァルは小さく呟く。
「ほう」
そして静かに笑う。
「やはり面白い」
目を細める。
「さて」
「どうする、少年」
洞穴の風が吹く。
試験は――
ここから始まる。




