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外れスキルの【停止時能力アップ】実は世界最強でした  作者: 滝本りお


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洞穴までの三百歩

川沿いの道。


リオは静かに歩き出した。


肩の上には小さな魔虫――ノア。


「三百歩って言ってたよね」


リオは小さく呟く。


「意外と近いなあ」


ノアが小さく羽を震わせる。


リオは空を見上げる。


「でもCランクって言ってたよね……」


「怖いな」


少し笑う。


「まあ、僕はEランクだけど」


川の水がさらさらと流れている。


リオは歩きながら足元の石を蹴る。


一歩。


二歩。


三歩。


しばらく歩くと、前方で誰かの声がした。


「おい……誰か……」


リオが足を止める。


声の方へ近づく。


そこには荷車が倒れていた。


年配の男が一人、困った顔で立っている。


荷物が川沿いの石に散らばっている。


「大丈夫ですか?」


リオが声をかける。


男が振り向く。


「ああ、助かった」


「車輪が外れてな」


リオはしゃがみ込む。


荷車を見る。


「重そうですね」


男は苦笑する。


「麦袋だ」


「運ぶ途中だったんだが……」


リオは腕を組んで考える。


「持ち上げるのは無理だな……」


ノアがリオの肩から降りる。


荷車の周りをちょこちょこ動く。


リオは石をいくつか拾う。


「これを……こうして」


車輪の下に石を並べる。


てこのように持ち上げる。


ぐっと力を入れる。


「よいしょ!」


荷車が少しだけ持ち上がる。


男が慌てて車輪をはめる。


「おお!」


荷車が元の形に戻る。


男が深く頭を下げる。


「助かった」


「急いでたんじゃないのか?」


リオは笑う。


「少しくらいなら」


男はしばらくリオを見る。


「若いのに」


「いい顔してるな」


リオは照れて頭をかく。


「いや、全然です」


「僕、Eランク冒険者ですし」


男は驚く。


「Eランク?」


「そんな感じには見えんな」


リオは苦笑する。


「よく言われます」


ノアが肩に戻る。


リオは再び歩き出す。


「行こうか、ノア」


また歩き始める。


十歩。


二十歩。


三十歩。


少し進むと、今度は小さな悲鳴が聞こえた。


「きゃっ!」


「やめろ!」


リオが顔を上げる。


子供が二人。


その前に小さな魔物がいた。


牙ネズミ。


灰色の体。


鋭い牙。


二匹。


子供が震えている。


リオは小さく言う。


「ノア」


「少しだけ手伝って」


ノアが微かに光る。


リオは石を拾う。


一匹の前に投げる。


「こっちだ!」


牙ネズミがリオを見る。


突進してくる。


リオは構える。


剣には手をかけない。


その瞬間。


体が硬直する。


怖い。


動けない。


しかし――


突進。


牙ネズミがぶつかる。


ゴッ


弾かれる。


リオは驚く。


「……あれ?」


牙ネズミは体勢を崩す。


リオは石を蹴る。


ネズミの顔に当たる。


「逃げろ!」


子供たちが走る。


牙ネズミは数秒うなり声をあげるが、やがて森の中へ消える。


リオは大きく息を吐く。


「怖かった……」


子供の一人が振り返る。


「ありがとう!」


もう一人が言う。


「お兄ちゃんすごい!」


リオは慌てる。


「いやいや」


「全然すごくないよ」


子供たちは走り去っていく。


リオは空を見上げる。


「……何歩くらいかな」


ノアが羽を震わせる。


リオは笑う。


「まだ半分くらいかな」


川沿いの道の先。


遠くに暗い穴が見え始める。


洞穴。


リオの表情が少しだけ引き締まる。


「行こう」


その背中を。


遠くの木の影から


ヴァル・グレンが見ていた。


小さく呟く。


「なるほど」


「優しい」


「だが」


「それだけでは強くなれん」


そして少し笑う。


「さて」


「洞穴だ」


川風が吹く。


少年はまだ知らない。


この三百歩が


人生を変える歩みだということを。

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