AOI 第63話
ある日、いつものとおりに塾へ行くと、トイレの横にのあちゃんと翔太君の同じ中学の女の子達が並んで立っていた。嫌な予感がして、私は、少し離れた所から、そのまま声をかけた。
「のあちゃん。」
振り向いたのあちゃんは、困った顔をしていたように見えた。のあちゃんは、女の子達に何か話をして、私のところへ、のあちゃんは無言だった。そのまま、一緒に教室へ入った。翔太君が体をこちらに向けて、座っていて、のあちゃんをにこにこ見ている。のあちゃんは、さっきより少し口元がにっこりしている様に見えた。私は、前に女の子達に、翔太君との事を聞かれたのを思い出していた。翔太君をちらっと見たけれど、のあちゃんが女の子達と話をしている事は知らなそうだなと思った。ふと視界に翔太君の向こう側に女の子達が席に座るところが見えた。女の子達と視線が合わないように、私は、視線をそのまま平行移動して、黒板にむけた。翔太君とのあちゃんは、いつもと同じに、何か話していて、いつも通りに仲が良さそうで、ホッとした。塾が終わっても、女の子達との接触は無かった。夜になっても、のあちゃんからの連絡はなかったから、どうしようかなどうしようかなと思い悩んだけれど、塾友2人だけだし、思い切って電話をかけてみた。
(はーい。)
のあちゃんの声は、眠たそうだった。
(のあちゃん、ごめん、寝てた?)
と、私はなぜか小さい声になっていた。
(ううん、大丈夫だよ。どうした?)
あくびまじりの、のあちゃん。あれっ、どうしたの?えっ、のあちゃん、気にしないタイプなのかな?もしかして、聞くことはよくなかったのかな。他に、急に宿題の事を聞くのも初めてだから驚かれちゃうかな。きっと、そんなふうには思わないと思うけれど。
(のあちゃん、女の子達に…)
と、話途中で、のあちゃんが、
(あーっ。あれね。廊下でね。)
と、さっきの声とは違う、はっきりとして聞こえた。私は、
(うっうん。)
と、なんだか、喉に何かが引っかかったような声が出た。おそるおそる、私は、
(心配になって。)
と、続けた。
(翔太君と、同じ中学の女の子達でね。私の同じ中学の子達から、私のウワサを聞いたらしく。本気じゃないなら別れなよって言われて。その時、さっちゃんが私を呼んでくれて。その後、振り返って、真面目にお付き合いしているんでと、話をして、さっちゃんのところに行ったってわけ。)
と、のあちゃん。私は、気になる言葉がたくさん出てきて、どこから聞いたらいいのか、まず、
(のあちゃん、よく言った。)
と、言ったら、
(あっはっはっ。)
と、のあちゃんに大笑いされた。