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お客様、ご注文はどちらにいたしますか?  作者: イチバ
第一政 レ・キャフェイ・カデ
7/10

第7杯 変わる世界

7月14日…


フランスの凱旋門で兵士達が音楽と一緒に行進します。

7月14日はフランスでは革命記念日として軍事パレードが行われるのです。

歩兵隊の次は音楽隊。音楽隊の次は騎兵隊と続いていきます。

歓声は激しく、拍手が鳴り止みません。

代表者の席には首相のエドゥアール・ダラディエやフランス軍のトップであるシャルル・ド・ゴールといった方々が並んでいます。

フランス国旗が靡きます。


「凄いね店長!」

「そうだね」

「これならドイツなんかに負けないよ!」


マジノ線、多くの軍隊、様々な兵器。確かにフランス軍は昔から軍事大国として君臨し、イギリスやプロイセンといった国々と戦っていました。しかし、戦間期中はマジノ線建設に多くの軍事費を費やし、他の兵器の強化は遅れていたのです。実際、この時期にも第一次世界大戦中の兵器が現役で使われていた他、旧式化したあまり物の兵器が配備されていました。

つまり、ドイツのような現在に適応した最新兵器ではないのです。


パレードが終わった次の日、いつものように開店の準備をします。


「おはよう店長…」


今日はジャンヌが一番乗りです。


「今日さえ乗り越えれば休みだよ。頑張ろう」


日常的な会話する朝が、何気ない平和な日常を示していました。

しかし、平和は突然崩れるものなのです。

隣の建物の窓からギランと何かが反射します。それに店長は素早く気付きジャンヌをカウンターに伏せさせました。


「危ない!」

「きゃっ!」


小さな飛翔物が窓に穴を開けて床に当たります。

2発目が飛んできてガシャンと窓を破り、床には小さな穴が開きました。


「どうしたの?」


エマがその騒ぎに気付き降りてきます。


「エマ!こっちに来るんじゃない!上で隠れていろ!」

「へっ!?」


外はその音で大騒動となり、人々は逃げ始めます。


「店長…?」

「大丈夫かジャンヌ。エマ!窓がない場所に逃げろ!イリスも連れてけ!」

「は、はいっ!」


この音に店長は聞き覚えがありました。それは地獄で何度も聞いた音。すなわち、銃声です。

カウンターを貫いて銃弾が真上を通過します。

店長はあの時の戦場を思い出します。砲撃跡のクレーターで伏せながら敵の弾丸から必死に身を隠していた夜を。その光景と重なり吐き気がします。


「店長…」


ジャンヌの声で現実に戻りました。今はジャンヌを助けなくては…と。


「大丈夫だ。私は死なせないよ」

「…本当?」

「ああ。20年前の経験があるからね」


店長がワインボトルを見て反射している光景を見ます。隣の窓から光っているスコープでした。狙っていた正体はスナイパーです。


「ジャンヌ。私の合図で店奥に走るんだ」

「はい…!」


店長が下にしまっていたフライパンを持ち、スナイパーに頭だと誤認させ無駄撃ちをさせました。


「今だ!」


ジャンヌと店長が一気に店奥に走ります。スナイパーはすぐさまコッキングし撃ちますが間に合わず店の看板に命中します。

外では警察がサイレンを鳴らしパトロールカーで到着します。


「相手は銃を持ってるぞ!細心の注意を払え!」

「突入!」


警察とスナイパーが銃撃戦を繰り広げると、窓からスナイパーが落下してきました。そこを警察に捕らえられ、ついに逮捕されます。

店長が店から出てくると、そのスナイパーの顔には見覚えがありました。


「…あいつの妻?」


それはスペイン内戦で国際義勇軍に参加した戦友と結婚していた妻でした。


「あんたのせいよ!あんたが一緒にスペインに行けば彼は死ななかった!」


そんな言いがかりというか、怨みが店長を狙った理由だったのでした。


「詳しくは署で聞く。乗りなさい」

「あなたにも事情聴取を伺いたい。協力願う」


店長は警察の質問に答えます。


"戦争は1つではない"。戦争は死だけでなく、PTSDや家族の崩壊など、周りの環境にも影響を及ぼすのです。



事件から1ヶ月ほど。世界を震撼させる出来事が起きます。


[なんと、あのヒトラーとスターリンが手を結びました。アルマーニュ政府とソビエチーキ(ソ連)政府は正式に独ソ不可侵条約を締結したと発表しました]


「「「なんだって!?」」」


レ・キャフェイ・カデにいた人達が一斉に驚きます。


「あのアルマーニュとソビエチーキが…?」

「もうダメだな…」

「世界の終わりだ…」


1939年8月23日。ドイツとソ連は独ソ不可侵条約を締結。これにより今までバチバチに対立していた独ソが同盟になるという珍事例が発生したのです。

これには両国の狙いがありました。

ドイツはイギリス、フランスといった国々の戦争に集中するため。ソ連はヨーロッパからの不信感を持っており、ドイツと手を組むことで安全を保つ狙いだったのです。

この条約締結に世界中が驚愕ととある思考に埋め尽くされます。

これが、戦争への第一歩だと。

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