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親子げんかに巻き込まれる パートⅡ

 さて、期末試験も終わり、もうすぐ夏休みだ。


 猛勉強の成果もあって、今回は僕が初めてジェニファー様を抜いて成績首位を取った。


 確かに、元のドウェインに勉学の素養はほぼゼロの厳しいスタートだったけど、勉強のスキルを生まれてこの方磨き続けた僕だ。

いかにアドバンテージがあるといっても高位貴族のライバル達に負ける訳にはいかないんだ。


 ちなみに、2位ジェニファー様、3位ミッチェル殿下は揺るがない。4位以下を大きく突き放してこの三人が首席を争う構図になってる。

 そして心配なニコラス君だけど、座学で63位に急上昇した。

 彼は実技がトップレベルなので、このまま勉強を続ければC組落ちは何とか回避できると見ていい。


 そんな中、僕はヴィクター・ラトリッジ宰相に弟子入りし、基本的な政治・行政の仕組みや、ニコラス君がやっている仕事の手伝いをさせてもらっている。


 僕の最終目標は学者になることで、どちらかと言えば理系を希望しているのだが、こういった文系仕事の知識は必要だ。

 それに、ラトリッジ宰相は何と言っても権力者だ。騎士団長が何を言おうが、宰相なら撥ね除けられる。

 それどころか父をクビにだってできる。

 まずは、宰相から信用を得て味方に付けることが、僕の親離れ計画の第一歩だ。


 ということで、今日もラトリッジ邸にお邪魔している。


「補佐官様、ここの数字が間違っております。」

「ドウェイン様、さすがですね。」

「しかし大変な分量を毎日こなさないといけないなんて、予想以上でした。」

「今は来年度予算の査定時期ですので、各部局からの予算要望、各部門から上がってくる来年度収入見込額など、とにかく膨大な書類が財務部門を飛び交います。」

「まあ、うちのニコラスでは使い物にならん。できればドウェイン君のような息子がいれば嬉しかったのだがな。」


「しかし宰相様、以前のニコラス様はとても優秀な方とお見受けいたしましたが。」

「彼奴は入学前辺りから人が変わってしまったな。まあ、能力の低さは私の見込みが甘かっただけで、ヤツ本来の実力なんだろうけどな。」

「入学前のニコラス君は、今とは違ったのですか?」

「ドウェイン君ほどではないが、そこそこ礼儀正しく、それなりに忍耐力もあり、将来使える人材になると予期させるものはあった。」

「確かに、今とは全く雰囲気が異なりますね。」

「そうだったのですね。」


 それにしても、入学前か・・・

 以前のニコラス君って、どんな感じの子だったんだろうね。

 何がきっかけだったのか、今度聞いてみよう。


「では、理財部の要求書確認が終わったら、本日の作業を終了しましょう。」

「はい、お任せ下さい。」

 この後、宰相様と補佐官の三人で1時間ほどを掛けてチェックを行い、午後のティータイムまでに作業を終えることができた。


「さすがは学年首席だけのことはある。」

「そうですね。卒業後は是非とも宰相府に入っていただきたいものです。」

「ありがとうございます。」

「ニコラスも心を入れ替えて、せめて本来の力を発揮してもらいたいんだがなあ。」

「おい、また俺のよからぬ噂をまき散らしているのか?」

 ティータイムになったのを見計らってか、ニコラス君が入室してきた。


「噂では無い。事実だ。」

「子供の悪口を平気でのたまう親はロクでもねえって決まってるんだよ。」

「もうお前は大人だ。年齢だけはな。」

「まあ、全てにおいて大人なのはその通りだな。」

「能力は入学前の子供に等しいじゃないか。」

「親バカだな。」

「その言葉はそういう意味じゃないぞ。」

「親が馬鹿って意味だろ?」

「親の悪口を平気で言う子供も碌な者ではないな。」

「今度は揚げ足取りか?つまらん。」

「宰相様もニコラス君も落ち着いてよ。」

「そうだな。こんな奴と会話しても有意義なことは何一つ無いからな。それよりドウェイン。今日の仕事はもう終わったんだろう?」


「お前は遊んでないで、ドウェイン君に勉強でも教えてもらえ。」

「そんなに勉強ばかりしてたら、どっかの宰相みたいになっちまうからお断りだ。」

「何を抜かすか!この愚か者め。」

「まるで自分は愚か者じゃないみたいな言い方だな。」

 宰相様はついに我慢の限界に達したか、ニコラス君に掴みかかる。

 もちろん、僕だってそこそこ腕力はあるから止めに入るけど、二人を止めるのはさすがに腕の数が足りない。

 とっくみあいの末、ニコラス君が宰相様をボコってしまった。



「お前など勘当だ!今すぐ出て行け!」

「望む所だ!ドウェイン、世話になるぞ!」

「ええ・・・そんなあ。」

 ここにミッチェル殿下がいてくれたらなあと後悔するが仕方無い。

 そのままニコラス君を連れて帰宅することになった。


「面倒を掛けちまって済まねえな。」

「ホントだよ。まあ、いいけど・・・」

「代わりと言っては何だが、ドウェインの親離れも協力してやるから。」

「うん、頼むよ。」

 おや、悪い予感しかしないんだけど・・・


「それにしても、このままじゃ婚約破棄は避けられねえな。」

「やっぱり、宰相様に謝った方がいいんじゃない?」

「謝った所で何も解決する見込みが無いからな。」

「そりゃそうだけど・・・」


 どうなるんだろう、これ・・・

 でも、ニコラス君は父上とはウマが合いそうなんだよなあ。

 そこは期待してもいいかな?


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