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蠢く陰謀

「それで? ブランドンの治安や騎士団の配置状況は分かったか?」

「はい。密偵の嬢報がまとまりましたのでご報告いたします。」


 ここはロフェーデ王宮の一室。


 そして、ここにいるのは第一王子ロアン・バルクナーと宮中伯アントン・フェルネの二人である。

 ロフェーデ王国はウィンスロット王国の南に位置する軍事国家である。


 しかし、バレッタ王国ローランド王子の暗殺を企てたことが発覚し、三カ国連合軍との戦争に至った。

 いかに軍事大国といえども、準備不足な上にこくから攻め込まれる想定をしていなかったため、ほとんど組織的な抵抗を行うことができずに降伏を余儀なくされた。


 このため現在、王宮内部は混乱しており、王家としても失地を回復すべく、新たな策謀を巡らしているところである。



「やはり敵地の警備は厳しいか。」

「はい。まず、有力者に対する揺さぶりですが、やはり勝ち戦の後で当方に寝返るだろうと見込まれる者は見当たりませんでした。」

「まあ、そうだろうな。しかもウィンスロットは元々政情が安定しておる。」

「先方の懸念としましては、後継者が若いという程度のものでございます。」


「若いと言っても成人はしているからな。それに第二王子は有力な対抗馬ではない。」

「といことで、政治的な揺さぶりは効果が薄いとの結論でございます。」

「王も取り立てて敏腕と言うわけではないが、失策もない。」


「次に軍や騎士団ですが、こちらも不穏な動きをする幹部は見当たりませんでした。」

「勝ち戦の後だから士気も高かろう。」

「三国の結束も固く、とても当方が揺さぶりを掛けられる状況ではございません。」

「そうだな。他の国ならともかく、我が国が楔を打てる状況にはないな。」

「ということで、残念ながら現状で採れる策としましては、要人への攻撃、破壊工作しか無いと考えております。」

「なるほど。そのくらいしか打つ手が無いのか・・・」

 ロアンは葉巻に火を付け、一服だけ吹かす。


「要人の一人や二人で揺らぐような相手ではないが、良い考えがあるのか?」

「一人や二人で揺らがないなら、沢山巻き込む必要がございますな。」

「待て。何より重要なのは我々の関与が発覚しないことだ。」

「もちろんローリスクハイリターンを目指しております。」


「具体的には何ができる。」

「貴族学校に対するテロ、もしくは誘拐です。」

「しかし、今の状況に陥ったそもそもの原因が、貴族学校におけるローランド第一王子暗殺未遂であったろう。」

「あれは計画と実行体勢があまりに杜撰でした。」

「我が国の関与があっさり発覚するなど、通常はあり得ぬぞ。」

「ええ、前回はかなり質の低い者共でしたな。」

「今回は大丈夫なのだろうな。」

「はい。今回は我が直属の者をリーダーとして配置します。」

「少なくとも、我が国の被った損失は取り返せ。」

「御意。」


 

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「父上、お呼びで。」

「良く来たな。まあ座るが良い。」

「はい。」

 ここは国王の執務室。

 いつものようにミッチェルが呼ばれ、定例の打ち合わせが行われる。


「ロフェーデとの交渉がほぼまとまったとのことですが。」

「うむ。随分難航はしたが、事務方による四カ国協議は大詰めのようだ。」

「それで、こちらの要求は。」

「大体は通った。」

「それでは、我が国への一部領土の割譲と緩衝地帯の設置、武装解除と今後5年間の非武装化について通ったのですね。」

「非武装化については1年で妥協したが、我が国にはフェルテッセ地方の割譲及びその先50kmの非武装化。同じくバレッタにはフォンテーヌ地方、ファルテリーニにはロレッタ地方が割譲される。」


「では、ロフェーデは国土の2割程度を失うことになりますね。」

「我ら三カ国の結束が揺るがぬ限り、ロフェーデが軍事力で我らを上回ることはない。」

「それは目出度いことですね。」

「しかしまだ油断はできぬ。ヤツらは策謀にも長けておるからな。」

「そうですね。そもそもローランド殿下の暗殺を謀ってきた相手ですから。」


「それともう一つ。ロフェーデから人質を取る案が浮上しておる。」

「王族ですか。」

「そうだ。ロフェーデの第一王女が18、第二王女が13で、どちらも王妃との間の子だそうだ。お前もローランド殿下も現時点で婚約者がおらぬ。もちろん、いたとしても側妃として迎えるなら問題ないがな。」

「確かに私も殿下も決まった方はおりませんが、敵とは言え、王族を側妃に迎えるというのはロフェーデの恨みを買うのではないでしょうか。」

「かと言って、正妃として迎えて力を持たれるのは我が国もバレッタも嫌がるし、そうなると押し付け合いになるだろう。」

「確かにそうなりかねませんが。」


「仮に我が国が受け入れ、お前との間に子を成したとしても、王位に就かせるつもりはない。」

「まさに人質以外の何者でもありませんね。」

「王女には気の毒だが、王女が個人的に優れた人物であったとしても、国としてはまるで信用できん相手だからな。力を与える訳にはいかぬ。」

「両国で一人づつということなのでしょうか。」

「いや、それではファルテリーニだけが横並びから排されることになる。どちらか一カ国に嫁ぐということだ。」

「そうですか。では、陛下のご判断にお任せします。」

「すまんが、よろしくな。」

 正室の前に側室が決まるか?


「それで、ジェニファー嬢についてはいかがでしょう。」

「うむ。妃教育を再開したそうだな。」

「婚約解消が決まっている中で、よくやってくれています。」

「そうだな。今は諸侯に勘ぐられる訳にいかない不安定な状況だからな。」

「そちらも気を配っておきます。」

「頼んだ。解消のその日まで、くれぐれも慎重にな。」

「御意。」


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