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2つのクラス

「では、この問いを解ける人、挙手を。」

「はい。」

「ジェニファー君、相変わらず速いね。では前に来て解いてもらおうか。」

「はい。」


 私は黒板に書かれた方程式を解きます。

 前世でも数学は比較的得意だったのですが、ここの授業はせいぜい中学校レベルです。


 これはスペ体質のメインユーザーに併せた文化・化学水準に合わせた設定なので、大卒の私なら解けて当然のレベルです。


「できました。」

「うむ。さすがですね。正解です。」

 私は先生に軽く会釈して席に戻ります。


「では、この問いを理解できなかった人、正直に挙手を。」

 数人が手を上げます。

「では、今から解説します・・・」

 先生の開設は非常に分かりやすいです。

 みんな熱心にノートを取っています。


 一年の時は、みんなもう少し暢気といいますか、大らかな雰囲気でしたが、進級時に成績によって振り分けられた効果によってクラス全体の雰囲気が引き締まり、授業に緊張感が生まれました。

 特にC組から上がってきた生徒の存在が大きいと感じています。


「ではみんな分かったかな。分からない場合は後で聞きに来ても構わない。それと、ここで分かっている者も、後で忘れない内に復習して完全に自分の物とすることが大切だ。」

「はい。」

「では、今日はここまで。」


 ドウェイン卿やミッチェル殿下はもちろん、ブレンダもなかなかに優秀ですので気を抜くことはできません。


 元々それほど優秀な才能に恵まれていないジェニファーですから、彼ら以上に努力を積み重ねることが重要なのです。


 この場にいることに恥ずかしくない成績をこれからも残し続けて行きますわ。



~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/ 


「では、この問いを解ける人、挙手を。」

 パラパラと手が挙がる。このくらいはみんな理解してて欲しいんだけどなあ・・・


「ではニコラス君。」

「はい先生。大文字のえふが分かりません。」

「う~ん。魔法でアルファベットは使わないんだけどなあ・・・」

「でも、黒板の説明文には使われているだろ?」

「こ、こっち?」

 教室内にクスクスという笑い声が聞こえる。


 僕の授業は、いや、このクラスの授業はいつもこんな感じなんだろう。

 それにしても、B組でこれならD 組なんてどんなレベルなんだろうと頭を抱えてしまう。


「Fはこうだよ。」

「ああ、そうだった。サンキュー、先生!」

 こんな感じで授業は一向に捗らない。A組と比べれば3倍近い時間を必要とする。

 まあ、いかにB組とはいえ、ほとんどの生徒はそれほど酷い訳では無いと信じているが・・・


「えっと、それで何だったっけな。そうそう、この問題を解いてもらうんだったね。じゃあルシア君よろしく。」

 ここは困った時のルシアたんだ。

 彼女はB組落ちが信じられないくらい普段は優秀だ。


 何で推定ヒロインがこんなモブクラスに来たのかよく分からないが、僕的には好都合だ。

 この学級崩壊寸前状態のクラスで頑張って欲しい。


「先生すいません。ここの術式は二重にしてはいけないと思います。」

「うん?ああ、そうだね。済まない、先生のミスだ。」

「これじゃ俺が大文字のFを理解したとしても術式の展開は無理だな。」

「ニクラス君、大文字Fなんてニックネーム付けられないように、しっかり勉強してね。」

「何だよ。ジェームズにそんなこと言われるなんて心外だな。」


「ところでルシア君、この術式が何の魔術のものか分かるかい?」

「これは・・・私が使う結界魔法に近いですね。」

「そう、これは君が使う光魔法の破邪のものではなく、攻撃魔法を反射する結界だ。」

「光属性なのですか?」

「そうだ。光属性の術士はあまりに数が少ないので実用的では内が、かつて実戦投入されたこともある魔法だよ。」


「ところで先生、何で魔法の術式は平面なのですか?」

「どういうこと?」

「球体にすればもっとコンパクトになったり強力になったりしないのかなあと思って。」

「こういった術式は先人の研究の賜だよ。これが一番速く効率的に術を展開させられるものとして発達したんだ。これを立体構造にするとチェックが大変になるし、戦闘中に裏側に回って術式を確認するなんてできないだろ?」


「じゃあ、生活魔法ならいいんですか?」

「その場合は平面の術式を書いた紙をいくつか重ねて使うね。とにかく生活魔法とは言っても魔法は危険を伴うんだ。慎重を期して安全に、これが重要だ。」

「術式は慎重でも解説が雑なのはどうなんだ?」

「そ、そんなことないさ。僕の解説は丁寧で分かりやすいと学会でも評判なんだよ。」

「それで、小文字の方はどうなんだ?」

「そうだね。大文字が分からないなら小文字も分からないよね・・・」

「先生の字、汚くて読みづらいです。」

「な?なな・・・」

 今発言した彼は、B組では成績1番の生徒。


「先生の書く魔方陣、前の授業の時も間違ってました。」

「いや、そんなことは無いはずだが・・・」

「先生、また最近放課後に校内をうろついていますよね?」

「今は授業中なので、そのような発言は控えるように。」

「先生、体育の授業後に更衣室前で良く会うような気がするのですが・・・」

「キャーッ!キモいーっ!」

 教室内がざわついてとても授業にならなくなる。


 知ってる。僕も小学校時代はこんな授業に遭遇したことは幾度もある。


「先生はもっと真面目に教師した方がいいと思います。」

「そうだそうだ。もっと真面目にやれ。」

「あと、私の胸元をチラ見するの止めて下さい。」

 ああもうダメだ。全く授業にならない。


「そんなことはいいから授業に集中しなさい。」

「それはルシアさんのお尻を見ながら言うことでは無いと思います。」

「そうだそうだ!」

「見てない見てないっ!お前たちの方を見て言っただろう!」

「私たちの方?見てない見てない。」


 まあ、いつも終業のチャイムが鳴るまでこんなやり取りが続く日常。


 ホントに、疲れる・・・



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