2年目の活動開始
さて、新たな陣容を整えた生徒会が最初に行うのは、新入生歓迎パーティーだ。
去年は会長に就任したてでバタバタしたが、今年は落ち着いたものだ。
「今年はとんでもない高級食材目白押しらしいな。」
「もちろんですわ。あんなみすぼらしい料理、高貴な私の口には合いませんもの。」
「お前がそんなに繊細な舌を持ってるイメージは無いけどな。」
「その下品な口をお閉じになっていただけないかしら。」
「まあまあ二人とも。とにかく、キャロライン嬢のお陰で今年は過去最高のパーティーが実現しそうなんだから。」
「さすがは殿下。私の価値と貢献を高く評価して下さり、嬉しく存じますわ。それに比べて、そこの成績不審者ときたら・・・」
「おい、不振の字が違うんじゃねえか?」
「あら?B組でも漢字くらいは読めるのね。」
「ああ、これでも漢字検定3級だ。ただの馭者だと思うなよ。」
そういやこの世界、日本語なんだよなあ・・・
「まあまあ、そろそろ参加者が入場してくるよ。僕たちの新年度初仕事だ。しっかりやろうよ。」
「ドウェインの言うとおりだな。」
「一時休戦ですわね。」
全員の入場を確認して、会長である私が挨拶し、ダンスまでの間、歓談が行われる。
「このような華やかなパーティーは初めてです。」
「僕も実は学校に入るまでは経験無かったんだよ。でも、アナは僕から離れなければそれでいいから、安心してね。」
「ありがとうございます。ドウェイン様。」
「相変わらず仲いいね。羨ましいよ。」
「殿下もお相手を探さなくていいんですか?」
「モテない自覚はあるからね。」
「いや、第一皇子殿下なら引く手数多だと思いますよ。」
「殿下に相応しいのは会場広しと言えども、このキャロラインだけですわよ。」
そう言うと、彼女は私に腕を絡ませてくる。
最近、スキンシップが激しいんだよね。
まあ確かに、王宮内では王妃候補筆頭なんだけど、まだ彼女は私が婚約解消に動いていることは知らないはずだ。
「しかし、真面目な殿下にこんなキャバ嬢みたいのは似合わねえけどな。」
「きゃばじょう?聞いた事がございませんが、あなたが言うならきっと侮辱よね。」
「相手が殿下でなければ、それでも構わねえって意味だぜ。」
「この私のどこが相応しくないのかしら?具体的に教えていただけるかしら?」
「まあ、一番はそのがっついた所だな。商売女みたいじゃねえか。」
「失礼ね。これは殿下に妙な虫が寄ってこないためよ。」
「お前が殿下に寄って来てるじゃねえか。」
「私が一番相応しいのですから当然ですわ。」
「まあまあ、喧嘩しないで。」
ここで楽団の演奏が止む。ダンスが始まるようだ。
「では殿下、一曲目は是非、このキャロラインにお相手する栄誉をお与え下さい。」
しまった。
まだ歴とした婚約者がいるのだから、一曲目は席を外して目立たないところに隠れていようと思ってたのに、逃げ遅れてしまった。
今後のことを考えると、このお誘いは断り辛いし・・・
「何言ってんだ。殿下にはジェニファー嬢がいるんだから、いくら今日欠席しているとは言え一曲目を踊るのはルール違反だろ?」
「例えそのルールを無視しても、今この場でそれを覆せるご令嬢はおりませんわ?」
「お前、本気でフレミング公爵家と事を構える覚悟があるのか?」
「えっ?」
「いくらお前の家が金持ちでも、フレミング相手には分が悪と思うぜ。」
「すまないキャロライン嬢、1曲目はパスさせてもらうよ。」
「しゃあねえからローランド殿下、はすでにパートナーがいるんだな。」
「いいですわ。私も一曲目はパスさせていただきますわ。」
「それがいいぜ。ドウェインは早くいい位置をキープした方が良いぜ。」
「ありがとうニコラス君。」
ドウェイン君はアナベル嬢の手を取り、軽やかにフロア中央に駆けていく。
その後はキャロライン嬢やオリヴィア先輩と踊り、控え室に下がる。
「こんなに早く退散していいのか?」
「もう会長としての仕事は終わったからね。後はお開き直前まで休んでても支障無いよ。」
「そうだな。」
「今年の新入生は大人しい方が多いですね。」
「その大人しい生徒が早くもローランド殿下の毒牙に掛かっているが。」
「今日もお盛んだよねえ。」
「一体何人バレッタに連れ帰るつもりなんだ?」
「まあ、あそこは何人側室がいても大丈夫っぽい国だから。」
「まさにハーレムだな。」
「大奥に近い感じらしいね。」
ホントこの世界、何でもあるよね。今さらだけど・・・
「まあ、殿下については羽目を外しすぎないように、注意して見ておくことにするよ。」
「それがいいぜ。」
パーティーは夜まで続き、盛会のうちに終了した。




