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聖女様との語らい

 さて、すっかり忘れていたけど、ルシア嬢に今の気持ちを確認しないといけない。


 陛下との謁見からもう一ヶ月が経過しているので、彼女の考えもまとまっているだろう。

 いずれにしても、私には時間があまりない。

 ローランド殿下のサークルの無い日に、その部屋に彼女を誘う。



~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/



 ミッチェル殿下から、放課後に話がしたいと誘われちゃった。


 クラスが変わって会うことも無くなったから油断してたけど、そりゃ、こうなるよね。

 殿下だってアタシの気持ちは薄々知っているはずだから、婚約にならないように動いてくれると思うけど、だからといって他にめぼしいご令嬢がいる訳でも無いし・・・


 そんな大きな不安を抱えながら、指定された部屋に赴く。


「ルシア・ウォルフォード、ただ今参りました。」

「ああ、今開けるよ。」


「失礼します。」

「こちらこそ忙しい時に申し訳ない。」

「いいえ。私も課外授業に行かずに済んで助かってます。」

「ジェームズ先生の?」

「はい。光属性魔法の研究をしたいとかで、よく呼び出されるんです。」

「それは大変ですね。それにしてもジェームズ先生は熱心だなあ。」

「まあ、熱心には違いありませんね。」

「まあ、お掛け下さい。」

「はい。」



「それで、気持ちは謁見の後に聞いたとおりで変わりない?」

「そうですね。やはり私などでは重責を担えるほどの力量がありませんし、教会の仕事を通じて国に貢献できればと考えております。」

「そうか。」


「それで、つかぬことをお伺いいたしますが、やはりジェニファー様とは・・・」

「うん。まだ本決まりという訳でもないから他言無用でお願いしたいけど、彼女の方から婚約解消について打診されていて、別の婚約候補を募っているところなんだ。」

「やはりそうでしたか。」

「ウォルフォード嬢にも迷惑を掛けてしまい、誠に申し訳ない。」

「いいえ、お気になさらず。」


「それで、君が候補者の一人になっていることは間違い無い。ただ、最大限意向に沿えるよう頑張ってみるよ。それで、何が何でも嫌かい?」

「その、大変お答えにくい質問です。」

「ああ済まない。」


「それで、他にはいらっしゃらないのでしょうか。」

「キャロライン・ゴールドバーグ嬢の名も挙がっている。」

「彼女なら優秀ですし、前向きに考えて下さると思います。」

「確かに彼女の人柄からすれば、そうだと思う。」

「私にはそのような覚悟がございません。」

「私個人の見解では、ウォルフォード嬢でも申し分無いと思っているよ。」

「いえ、私などではとても無理です。」

「そうですか。」


「それと殿下。最近国内で不穏な動きなどはございませんでしょうか?」

「不穏?何か気になることでも?」

「いえ、具体的には無いのですが、例えば疫病の兆候とかです。」


「特に無いなあ。まあ、ロフェーデ王国はかなり混乱しているから、それ絡みで何か不足の事態が起こる可能性はあるけど、そのくらいかな。」

「そうですか。しかし、魔王を名乗る者も出たそうですし。」

「そうだね。魔王にしてはいささか弱いと思うし、魔族はみんな魔王を騙ってこちらに揺さぶりをかけるものかも知れないけど。」

「魔族の動きにも十分ご注意下さい。」

「ありがとう。今は聖剣を修理中だけど、あれがあれば勝てると思うよ。」

「何かございましたらご協力いたしますので。」

「ありがとうございます。とても心強いです。」

「では、これにて失礼してもよろしいでしょうか。」

「ああ、ありがとう。」


 何とか話を切り上げて脱出することができたわ。

 殿下が温厚で紳士的な人なのは本当に助かるわね。

 でも、あのジェニファーが婚約解消を申し出たって?


 ゲームのジェニファーじゃとてもあり得ないし、今のジェニファーも同じくらいあり得ない。

 一体、どうなっちゃってるんだろう。


 よくある悪役令嬢転生モノかも知れないけど、アタシだって転生者なのよ。

 そんなのストーリーが破綻しちゃうじゃない・・・


 もしそうだとしたら、よくあるパターンとしてアタシが逆転で断罪される側に回るってこともあり得るんでしょう?

 そんなの嫌よ。

 だってアタシまだ何も悪い事なんてしてないじゃない。


 そうなると、絶対に殿下との婚約を進める訳にはいかないわ。

 だって悪役令嬢の反撃でアタシが処刑される可能性があるってことだもんね。


 とにかく、ジェニファーに転生者かどうか確かめるなんてリスキーなことをする度胸も無いし、二人に近付かないのが正解ね。

 だって今、特に困ってないし・・・


 困ると言えば、バッドエンド対策の方が切実ね。

 疫病の兆候は無いって話だけど、あんなのいつ起こるか分からないし、ロフェーデ王国の戦後処理次第じゃ難民とか治安悪化とかが引き金になる可能性だってあるからね。

 戦争はゲームでもロフェーデがこの国に攻めてくる設定だったけど、今回はローランド殿下暗殺未遂がきっかけで三カ国がロフェーデに攻め込む形に変化してたわ。

 しかも、時期早いし・・・


 そんな大きな違いが既に生まれてるから、これからも小さな異常を見逃さないように注意しなきゃね。

 殿下は弱いって言ってたけど魔王だって既に降臨しちゃってる。

 殿下は半信半疑だったけど、ゲームでは魔王が出てくるんだから、魔王で間違いないわ。

 ただし、みんなが苦戦している様子は無いから、初級モードなのかもね。


 アタシも戦争は無理だけど、疫病と魔王討伐は手伝わないと、未来のハッピーライフが実現できないからね。

 そこは頑張るわよ。


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