新しい生徒会役員
さて、早くも生徒会長選挙の時期がやってきた。
昨年は予定された全ての行事を滞り無く終えることができ、予算も何とか範囲内に収めることができたし、七不思議の解明という、長年の懸案を処理できたことはこの学校の歴史に刻まれる功績だったのではないかと自画自賛してしまう。
そして、今回の改選により、3年生の3名、副会長のオリヴィア先輩、会計のケント先輩、監査のクリフ先輩が勇退する。恐らく私の他に立候補はいないだろうということなので、役員の補充が目下の課題である。
「一年生の成績優秀者と有力者のリストはこれだね。」
名簿を眺めている。
クラス順だからA組だけ見れば高位貴族出身者と成績優秀者は分かる。
「リンデンバーグ公爵家のライオネル君に首席のローナ・アビントン嬢は声を掛けてみるべきだな。」
「それにキャロライン・ゴールドバーグ嬢で三人ですね。」
「彼女なら喜んで入ってくれそうだね。」
「性格には難ありだけどな。」
「いや、意外といい子だと思うけどなあ。」
「殿下は守備範囲が広いな。」
「そうでもないと思うけど・・・」
「だが、あんなのでも殿下の婚約者候補の筆頭だろ?」
「そうだね。他の公爵家には同年代のご令嬢はいないから、国内ではゴールドバーグ嬢かオリヴィア先輩くらいなんだ。」
「だから聖女様が目を付けられたんだな。」
「そういや、彼女と話をするのを忘れてたな。」
「クラスも違うし、顔を合わせなければそんなもんじゃないか?」
「何だ、ミッチェル殿下とジェニファー嬢はそんなことになってたのか?」
「ああ、ローランド殿下は知らなかったんだよね。まだ未公表で箝口令が敷かれているけど、実はそうなんだ。」
「じゃあ、俺もピンクちゃんに手を付けちゃダメなんだな。」
「申し訳ない。いや、ローランド殿下はもう少し自重した方がいいけど・・・」
「そうだぜ殿下。あまりやり過ぎて後ろから刺されないようにな。」
「ご忠告痛み入るぜ。そうならないとうに精々注意するさ。」
結局、生徒会長選挙は無投票で終わり、役員候補者の承諾も得て、新役員がすんなり選出された。
ちなみに、聖女様には昨年同様断られてしまった。
副会長にはローランド殿下とゴールドバーグ侯爵令嬢、会計にドウェイン君が阿多に就任し、監査にはローナ・アビントン子爵令嬢、庶務はニコラス君が留任し、広報にライオネル・リンデンバーグ公爵令息が就くことに決まった。
「それではオリヴィア先輩、ケヴィン先輩、クリフ先輩。一年間お世話になりました。」
「こちらこそお世話になりました。とても楽しかったです。」
「そうですね。解くに七不思議の解明はとても印象深い出来事でした。」
「私たちは今日で勇退しますが、卒業後も王宮などで頻繁に顔を合わせることになるでしょうから、その節はよろしくお願いします。」
「取りあえずは、先輩方の挙式にご招待いただければと思います。」
「殿下にご参列いただけるなんて、とても光栄です。」
「そりゃ生徒会メンバー全員でご招待いただかないとな。」
「もちろん、お越し頂けるのであれば喜んで。」
「では、新役員のお三方も、これからよろしく。」
「もちろんですわ。このキャロライン・ゴールドバーグ、殿下のお側でお役に立ってみせますわ。でも、婚約者が入っていないのは問題じゃないかしら。」
「まあ、いろいろ事情があってね。」
「王妃になるには大きな問題があると言うことですわね。」
「まあ、今のところは諸般の事情ということしか言えないな。」
「まあ、あの方に興味はございませんの。それで殿下、これからは私のことをキャロラインとお呼び頂ければ嬉しく存じます。」
「よろしいので?」
「もちろんでございますわ。」
ニコラス君が耳元でささやく。
「アイツ、あのこと知ってるのか?」
「いや、公爵殿は内々に伝えているけど、まだ本人には伝わってない。」
「もう、本人はそのつもりじゃないか?」
「まあ・・・」
「いやあ、ローナ嬢。俺は副会長のローランド・グレゴリーだ。よろしく。」
「ローナ・アビントンです。よろしくお願いします。」
「才色兼備のご令嬢だねえ。いや気に入った。」
「ホント殿下はブレないな。」
「普段はニコラス君そっくりなのに、こと女性に関しては真逆だよね。」
「おいドウェイン。それ俺を褒めてんだよな。」
「もちろんだよ。」
「ライオネル君もよろしく。」
「こちらこそ、お声掛けいただき大変光栄です。殿下。」
「併せてみんなに紹介しよう。私の頭の上に乗ってるのが鏡の要請ミント。そして手前から順にイリュージョニストのテンコー、ヴィヴィアン元王妃殿下、フラワーチャイルドさんだ。」
「ええっ!?これってもしかして・・・」
「確かに人ならざる者達だけど、これから生徒会で代々受け継ぐことになるメンバーだ。」
「調査に戦闘にと、とても役に立つんですよ。」
「ドウェインよりな。」
「そこは僕じゃなくて・・・」
「ホントジェームズは腰抜けだよな。」
「ジェームズ先生って、魔法学の?」
「何だローナ、知ってるのか?」
「はい、課外授業で魔法を習っています。」
「あれが今年は生徒会顧問だ。役には立たんが使い勝手はいいぜ。」
「ローランド殿下とニコラス君はただ都合良く使ってるだけじゃないの?」
「ホント抜けてるよな。」
うん、ダメだこりゃ・・・