二年目の入学式
今日は4月1日、入学式と1学期の始業式がある。
在校生は午後から登校だが、私たち生徒会役員は朝から玄関で新入生を迎えている。
「アナ、おはよう。」
「ドウェイン様、おはようございます。今日からよろしくお願いします。」
「今日から毎日会えるなんて嬉しいよ。」
「文化祭以来ですね。ミッチェル・アーネットです。」
「アナベルです。これからお世話になります。」
「俺はニコラスだ。」
「はい。覚えております。これからよろしくお願いします。」
「へぇ、じゃあ狙えないな。俺はローランド・グレゴリー。生徒会副会長だ。よろしく。」
「よろしくお願いします。」
「ローランド殿下、頼みますから僕の婚約者は拐かさないで下さいね。」
「ご令嬢を拐かしたり襲ったりはしねえぜ。あれらは全部合意の上だ。」
「さて、そろそろ時間だね。」
「じゃあ、講堂に移動しますか。」
入学式が始まる。
今日は保護者の方も多くつめかけている。
公務の都合がつけば、陛下が来賓として来ることもあるけど、今年は生徒会長が第一王子ということもあって来てはいない。
そして校長の挨拶の後、在校生を代表して挨拶を行う。
「本日はこの歴史と伝統ある王立貴族学校に133名の未来ある若者を迎えることとができたこと、創設者の末裔としてても嬉しく思う。また、保護者たる諸侯におかれても、晴れ晴れしい気持ちあろう。これから3年間、勉学に励みつつ知己を得て、立派な王国帰属となるべく研鑽に励まれたい。私たち生徒会は、常に君たちと共にあるので、悩みや困り毎がある時は、いつでも頼って欲しい。では、これから、ともに研鑽しよう。」
「何か2年になったって実感だな。」
「僕たち先輩って呼ばれる立場になったんですよね。」
「ドウェインはフィアンセが入学してきて頬の筋肉が緩みっぱなしだな。」
「いや、それほど酷いことには成ってないと思うよ。」
「そう照れるなよ。俺だってジュリア-ナを前にすれば多少は緩むんだからな。」
「ミッチェル殿下、また同じクラスですわね。そしてニコラス・ラトリッジ卿、さようなら。」
「これはゴールドバーグ嬢。また一年、よろしくお願いします。」
「今年は生徒会入りを目指しますの。そちらも併せてお願いしますわ。」
「そうですね。オリヴィア先輩たち3名が抜けますからね。」
「それと聞きましたか?そのオリヴィア様とケント様がご婚約されるそうですわよ。」
「どちらも侯爵家同士ですから、丁度良い演壇ですね。」
「でも意外ですわ。派閥が違う長年のライバル同士でしたのに。」
「ああ、そうなの?私はそういうの疎いからよく分からないな。」
「殿下はお立場上、承知ておいた方がよろしいですわ。我がゴールドバーグ家とケント様のヴィッカーズ家は中央派、オリヴィア様は地方派、あそこの出来損ないが継ぐ侯爵家は皇統派に属しておりますわ。」
「そんなに仲が悪いの?」
「普段はそれが表面化することは無いようですわ。でも後継者争いが起こればたちまち多数派工作が始まりますわ。もちろん、ゴールドバーグ家はミッチェル殿下とともにありますわ。おーっほっほっほ!!」
一際高い笑い声が生徒会室に響く。これからはこれが日常なんだろうな・・・
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「イリアちゃん、タニアちゃん、ミリガンちゃん!」
「ルシアちゃん、ご機嫌よう!」
「みんな同じクラスになれて良かった!」
「これからよろしくね!」
始業式を前に、友達みんながクラスに集まる。
2年B組には両殿下も悪役令嬢もいない。何故か宰相の息子だけはBクラス落ちしてるけど・・・
「さあ、みんな揃ったかな。」
担任の先生か?教室に入ってくる。
「ゲッ!」
何で、どうして担任、コイツなの・・・
「今年、この2年B組の担任を務めるジェームズ・タカーキ・バルフォアだ。よろしくね。」
C組にしときゃ良かった・・・
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「先生、初のクラス担任ですからね。しっかりお願いしますね。」
「ああ、身が引き締まる思いだよ。」
若手教師で今までクラスを持ったことが無かった僕だが、ついに今年から2年B組を担当する。
優秀なA組や、問題児が多そうなD組では無いところがあてがわれたというところだろう。
ここには僕一押しのルシアたんのほかに生徒会のニコラスもいるが、他には特段目立つ生徒はいない。
でも、彼らが登校する前にやるべきことがある。そう、新入生チェックだ。
僕には愛しのエリーがいるが、全方位戦略を忘れた訳じゃ無い。
平凡なリア充が僕の最終目的じゃ無いんだよ。
そして、1年生をチェックしていくが、今年もなかなかレベルが高いと感じる。
「彼女たちに、真の大人になった僕を見せつけて靡かせないといけないからね。ここからの一ヶ月が勝負だね。」
さて、当分忙しくなるぞ!