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突然の謁見

「陛下、お呼びでしょうか。」

「ああ、そこに掛けるが良い。」


 私は父に呼ばれ、いつもの執務室に赴く。


「話は他でもない。お前の将来のことだ。」

「はい。何でしょう。」

「お前も聖女のことは知っておろう。彼女がお前に相応しいかどうかを直接、確かめてみることにした。」

「ルシア嬢でありますか。」

「ああ、同じクラスだから人となりはおよそ知っているだろう。」

「いえ、あまり話をしたことがありませんので、よく存じ上げてはおりませんが。」


「お前ももう少し視野を広く持った方が良い。まあ、成績もそれほど危惧するほどでは無いし、生徒会長としての働きや聖剣のこと、賊討伐や戦場での働き、ここ最近の働きには余も満足はしているが、唯一足りないのが次代の王妃選びだ。」

「それに関しましては、誠に申し訳ございません。」

「すでに教会には打診し、事務方で日程調整中だ。」

「もうそんなところまで・・・」


「もちろん、まだ候補者の一人としての位置付けだがな。」

「しかし、彼女は男爵令嬢です。それにもとは市井の住人。諸侯の反発や彼女の適応能力を鑑みますと、いささか不安であります。」

「過去にも平民出身の聖女が王妃になった例はある。そうでなくとも聖女であれば教会か高位の貴族家、あるいは王家に入るのが通例だ。」

「そうなのですか。」


「今までお前には公爵家のご令嬢が婚約者としていたし、フィリップはまだ幼児だから、聖女の入る余地が無かったが、今の状況的には十分選択肢に入る。」

「しかし、彼女には既に婚約者がいるのではないでしょうか。」

「それも含めての検討だ。教会からはまだ婚約者は聞いていないとの回答があったぞ。」

「そうですか。」


 正直、一年同じクラスにいて、会話はほとんどない。

 お祖父さんの件と初代校長の除霊の際に少し関わりがあったくらいのものだ。


 普通、ウマが合う人同士というのは、何もしなくても自然と仲良く成る物だと思うが、これまでそういった雰囲気は一切無く、むしろ避けられている空気すら感じる。


 きっと上手くは行かないだろうし、彼女に迷惑を掛けてしまうのは心苦しいが、ジェニファー嬢との件以降、私が不甲斐なかったのは事実だ。ここは父に従うほかなかろう。

「分かりました。よしなに。」



~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/


 突然、枢機卿様から呼ばれて行ってみたら何よ!

 陛下との謁見?


 そう言えば、ミッチェル殿下ルートだとそういったイベントはあったけど、まさかこの好感度とタイミングで来るとは思わなかったわ。

 でも何でだろう、何があったのかな・・・


 絶対行きたくはないけど、王様の命令に逆らうことはできないから仕方無くお城に行きことにするわ。

マジ涙目よ・・・


 枢機卿様から話を受けて3日後、ついに謁見の間に来ちゃったわ。

 ゲームの中では何度も訪れた場所だけど、実際に見るとアニメ絵なんか問題外の煌びやかさね。

 正直ビビりまくりよ・・・


「ウォルフォード男爵令嬢、聖女ルシア殿、面を上げよ。」

「はい。」

 王様を見る。顔はゲームの雰囲気そっくりね。

 まあ、他の登場人物もそうだったけど・・・


「今日は忙しいところ急に呼び出して済まなかった。そんなに緊張する必要はないから、楽にすると良いぞ。」

「陛下のお心遣い、誠に感謝の念に堪えません。何分、このような場所に慣れておりませんので、失礼は何卒お許しいただきたく存じます。」

「うむ。その歳でなかなか堂々とした振る舞いよの。気に入ったぞ。」

「ありがとうございます。」


「本日呼んだのは他でもない。そなたの人となりを知り、王家としても良き関係が築けたらと思った次第だ。」

「はい。ありがたきお言葉に存じます。」

「ときにルシア嬢、そなたはうちのミッチェルと同い年と聞くが、将来を決めた殿方がおるのであろうか?」

 やっぱそっちかー。ヤダなあ・・・


「いいえ、まだおりません。」

「そうか、では済まぬが、当面の間はそのような話が来ても、受けぬようにお願いする。教会と男爵家には追って知らせる。」

「はい。承知いたしました。」


「ところで、そなたは毎日真面目に努め、大変優秀な聖女であると枢機卿から聞いておる。国の為、民の為に日々尽力してくれて、感謝しておるぞ。」

「身に余る光栄でございます。これからも陛下のお言葉に報いることができるよう、勤めに励みます。」

「よう言うた。さすが噂に違わぬ立派な聖女よ。気に入ったぞ。」


 いえ、ご遠慮いたします・・・

 でも、何とか粗相せずに乗り切ってやったわよ。

 時間にしたら10分か15分くらいだったんだろうけど、体感は1時間くらいあったわ・・・


 フラフラになりながら謁見の間を後にすると、文官の方に呼び止められる。

「ルシア様、お疲れの所恐縮ではございますが、ミッチェル殿下がお呼びでございます。」

 へっ?まだ帰っちゃダメなの?

 まあ、殿下は知ってる人だし、それほど緊張する必要は無い人だけど・・・

 そしてミッチェル殿下の執務室に案内される。ここもゲームで知ってる場所よ。


「どうぞ、お疲れでしたね。」

「いえ、でも正直、とても緊張しました。」

「そうだよね。年配の貴族でも皆、緊張してるよ。初めての謁見で付き添い無しなら尚更大変だったでしょう。突然のことで申し訳ありませんでした。」

「ありがとうございます。でも、できればしたくない緊張でしたね。」

「気持ちは良く分かるよ。ではお茶でもどうぞ。」

「ありがとうございます。それで、本日お呼ばれした理由が分からないのですけど、教えて頂くわけにはいかないのでしょうか。」

「うん、呼び出しておいて失礼なことだとは思うけど、まだ明かせないんだ。本当に申し訳ない。」


 まあそうよね。

 でも、普段の殿下とジェニファーの雰囲気から察するに、上手く行ってないだろうってことは分かるわ。


 アタシの知ってるジェニファーだって、よく殿下は我慢できてるなあって思うくらい酷かったけど、今のジェニファーは別の意味で殿下と上手くやれる要素ないじゃん。

 ゲーム開始から既に一年が経過してるんだもん。

 次の動きがあってもおかしくはないわ。

 特に現実の世界ともなれば尚更ね。


「陛下から、当分は婚約するなとの命を受けました。」

「ああ、そうだね。状況はウォルフォード嬢の認識のとおりだよ。でも、まだ口外しないで欲しい。」

「分かっております。でも、できれば・・・」

「うん、それも分かってるよ。こちらでも何とかしてみる。」


 ホント、察しの良い方で助かるわね。

 どうにか気持ちを持ち直して帰りの馬車に乗る。


 帰ったらアニーお手製のチョコクッキーよ!



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