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貢君だったっけ?

「はい、これ。エリーが欲しがってた指輪だよ。」

「まあ嬉しい!いつもありがとうね。」


 ここは夜のカクテルバー。

 僕もすっかりここの常連だ。


「早速着けてもいいかしら。」

「ああ、君にきっと似合うよ。」

 最近はちょっと懐が厳しくなっているけど、エリーに対する投資なのだから必要経費だ。


「どう?似合うかしら。」

「ああ、最高だよ。やはり君にはダイヤが良く似合うよ。」

「ありがとう。いつもありがとうね。」

「どういたしまして。」

「それで・・・」

「何だい?」

「もう春だけど、まだ肌寒い日が続くから、春物のコートが欲しいの・・・」


 彼女は僕にピッタリ身体を寄せ、上目遣いにおねだりしてくる。

 内心、またなの?って思うけど、確かに彼女のキャラならそういう流れになるよね。


「うん・・・そう、だね・・・」

 女の人ってお金がかかるんだなあって思う。

 まあ、僕だって大学時代はアニメグッズやフィギュアでバイト代のほとんどは消えてたけど、僕の今の収入でこれだけ厳しいのだ。みんなどうやって彼女を維持してるんだろうと思ってしまう。


「でも私、本当に幸せだわ。シンディやヒラリーにも羨ましがられてるのよ。」

「そうかい。僕はそれほどじゃないと思うんだけど。」

「そんなことないわ。あなたほどの男性、滅多にいるものではないわ。」

「そう思ってもらえているなら本望だよ。グフッ、グフフ。」

「こうして甘い一時をご一緒できるんですもの。最高よ・・・」

 彼女がしなだれかかってくる。もう最高だ!


「飲み過ぎたかい?」

「いいえ、まだ大丈夫よ。まだ夜は長いんですもの。こんな所で眠ってしまう訳にはいかないわ。」

「そうだね。お楽しみはこれからだもんね。グフッ!グフッ!」

 そして僕たちはバーを出て、夜の繁華街に繰り出す。

 もうかなり遅い時間にもかかわらず、まだ人通りはかなり多く、あちこちに夜の蝶が舞っている。

 この辺は東京の夜と基本的に何も変わらない。まあ、僕は怖くてあまり近寄ったことは無いけど・・・


 そしてそのまま小綺麗な宿屋に入る。宿屋だが、旅人用ではない、あの宿屋だ。

 シャワーで汗を流し、ベッドインして彼女を待つ。もうここも常連と言っていい、前世も含めてエリーが初めての女性だ。


「お待たせ。サッパリしたわ。」

「まだ夜は寒いからね。こっちにおいでよ。」

「ええ、ありがとう。」

 どちらからということもなく、唇を重ねる。

 たかちゃんもこの数ヶ月ですっかり大人の男が板に付いた。

 そして、濃密な時間が夜更けまで続く。



「愛してるわ、ジェームズ。」

「僕もだよ、エレン。」

「今週のお休み、お買い物に付き合ってもらえるかしら。」

「もちろんだよ、コートだっけ?」

「ええ、一緒に選んでくれると嬉しいわ。」

「清楚な君が僕好みに着飾ってくれると嬉しいね。」

 そう言って僕は彼女と唇を重ねる。とても長く・・・



 そして週末。もう何度目のデートだろう。

 今、僕は最高にリア充してる。

 やっと本来のポテンシャルを発揮できるようになった実感があるね。


「お待たせ。遅くなってゴメンね。」

「僕も今来たところだよ。やっぱりその指輪もネックレスもよく似合ってるね。」

「ありがとう。今日もっとあなた色に染まってみせるわ。」

「じゃあまずはカフェに行こう。」

「ジェームズ?また朝食抜いて来たの?」

「独身だからね。朝はなかなか摂るのが面倒でね。いつかは君が作ってくれるかな?」

「さあ。それは今後のお楽しみね。」

「意地悪だなあ。ハッハッハ!」


 これって恋の駆け引きだよね。

 以前の僕なら考えられなかったことでも、今なら分かるし自然に振る舞える。

 この余裕こそがリア充だよね。


 そして、カフェでお洒落な食事をして軽やかな会話に胸躍らせる。

 そして上流階級者御用達の店が建ち並ぶ高級街を闊歩する。

 今日は彼女も上機嫌だ。


「次はここだっけ?」

「ええ、ここで私をお姫様にしてくれると嬉しいわ。」

「ああ、世界一の姫君にしてみせるよ。」

 そして、コートを2着、ドレスを1着プレゼントした。

 給料一月分がここで吹き飛んで行ったが、ここは大人の余裕を見せる所だよね。

 もちろん一括で支払ったよ。


「さすがは魔術界期待の星ってところね。嬉しいわ。」

「そう言ってもらえると鼻が高いよ。」

「じゃあ、アタシはちょっとヤボ用があるからここでね。」

「荷物を運ぶよ。」

「そこまでしてもらっちゃ悪いわ。」

「そうかい?僕は別に構わないけど。」

「本当に優しいわね。でも大丈夫よ。」

 僕は近くに停まっていた乗合馬車を貸し切って彼女と荷物を載せた。


「本当に申し訳ないわ。」

「いいよ、このくらい当然さ。」

 馭者に駄賃を払い、馬車は出発する。


「今日もいい一日だったな。」

 正直、懐は大打撃だが、ジェームズが今まで貯めてた貯蓄を切り崩せばどうということはないし、この世界には欲しいグッズがある訳でもないからね。


 僕は軽やかなステップで帰宅の途に就く。


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